中田考先生の『イスラームのロジック―アッラーフから原理主義まで』について続けます。 第二章「イスラームと現代社会」から、イスラームと世俗国家について。 存在する社会集団と個人の多様性を暴力的に抹消し、無理やりに均質化することによって成立した「国民国家」は、「国民主権」、「一般意思」等のフィクションの下に、「国民」の集合体、総意の化身として、人格化、神格化される。 アメリカの宗教社会学者ユルゲンスマイヤーが指摘する通り、世俗的ナショナリズムは「信仰の表現」であり、教義、神話、倫理、儀礼を持つ「部族宗教」の一種である。 地上における不死の神「リヴァイアサン」たる西欧国民国家概念ほど、イスラームの世界観から遠いものはないが、それは範疇をまったく異にする、という意味ではなく、むしろ範疇を同じくして対極にあるものなのである。 西欧近代主権国家概念における主権は、そもそも国内的に最高権力を、対外的に独