東京23区で不動産価格の高騰が続くなか、相場より割安な都営住宅に注目が集まっている。早稲田大学の橋本健二教授は「現在の傾向が続けば、都心は富裕層しか住めない場所になってしまう。都心にこそ公営住宅を増やし、幅広い所得階層の相互理解を進めるべきだ」という――。 港区と足立区の間には3.83倍もの所得差 ここ30年ほどの間に、東京の空間構造は激変した。ひとことでいえば、都心に近いほど富裕層、職業でいえば経営者や管理職、専門職などが多く集まり、周辺部へいけばいくほど、貧困層やそれに近い人々、職業でいえば生産現場や工事現場、流通場面などで働く労働者が多いという構造が、格段に強化されてきた。こうして都心がもっとも豊かで、周辺で行くにしたがって貧しくなるという、都心を頂点とする単峰型、つまり富士山のような空間構造が確立したのである。 【図表1】は、1975年から2020年まで5年ごとに、東京23区の1人