明治の初めから昭和の終わりまで小田急の100年を描いた年代記。 とても面白かった。 小田急の100年とは書いたが、磯崎憲一郎のことなので、鉄道史が展開される小説では決してないし、そもそも虚実入り交じるというか、話そのものはほぼ「虚」だと思う。同じ磯崎作品であれば『肝心の子供』みたいな感じか。 一方で、こちらの作品はいくつかの地名(新宿とか伊豆とか)をのぞくと、固有名詞は一切出てこない。登場人物もそこそこの人数いるが、みんな、「男」とか「彼女」とかしか呼ばれない。というか、主人公が2人いて、どちらも基本的に「男」なんだけど、それでいて読んでいて混乱しないのがなかなかすごい。 固有名詞が出てこないので、もちろん小田急という名前も出てこない。というか、小田急というより、小田急をモデルにした架空の鉄道会社といった方が正しい。 小田急だけでなく成城学園の話でもあり*1、主人公が2人いるけれど、それぞ