ブックマーク / sakstyle.hatenadiary.jp (589)

  • 井奥陽子『近代美学入門』 - logical cypher scape2

    タイトル通り、近代の美学についての入門書なのだが、とても良いだった。 「芸術」「芸術家」「美」「崇高」「ピクチャレスク」という概念ごとに章立てした5章構成のとなっているが、これらの概念は全て近代に成立した概念である。 「崇高」と「ピクチャレスク」はあまり一般的には馴染みのない言葉だろうが、「芸術」「芸術家」「美」といった、現在の我々にとってはわりとあって当たり前の概念が、歴史的にはそれほど古くない概念であることを示している。 常識だと思っていることを相対化して捉え直すことを目指していて、おおよそどの章も、古代ではどうだったか、近代でどのように成立していったのか、そして、現代的な論点についてどのように考えられるか、という構成をしている。 なので、確かに「近代の美学」についてのではあるのだが、美学一般の入門書という位置づけで読んでしまってよいと思う。 新書レベルの読みやすさ・分かりやすさ

    井奥陽子『近代美学入門』 - logical cypher scape2
  • 文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2

    最近なんだか文学読もうという気持ちが強くなって、実際色々読み始めているところだけど、これまで何を読んできたかなというのと、これから何を読みたいかなというのを整理してみようかなという記事 それで、このブログを始めてから今までの読んだ小説を数えてみた。 ちょっとカウントの仕方が雑なので、細かい数字はアレだが、おおざっぱな傾向をとらえるにはよい。 ちなみに、ここで現代文学としたのは大体90年代以降に発表された作品で、戦後文学というのは80年代以前に発表された作品。いずれも日の作家のもの。 SFか文学か境界的な作家、作品についての判断もわりとテキトー。円城塔は文学としてカウント、宮内悠介は作品ごとにSFカウントしたり、文学カウントしたりした。 あと、文学にもSFにもカウントしていない作品(つまりこのグラフには集計されていない小説*1)ももちろんある。 2000年代後半はたくさん読んでるなー、と

    文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2
  • サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』(市田泉・訳) - logical cypher scape2

    滅法面白く装丁もかっこいい短編集 各SF雑誌で掲載された短編を収録しており、筆者初の単行である(ただし、邦訳されたとしては2冊目。長編『新しい時代への歌』が先に邦訳された)。 まず、内容ではなく装丁の話からする。ジャケ買いに近い感じだったので。 書も『新しい時代への歌』も竹書房文庫から出ている。竹書房文庫は2015年頃からSFに力を入れ始めているのだが、さらにここ最近だと、坂野公一による装丁で、書店の棚の中で存在感を放つようになっているように思う*1。*2。 で、書の装丁もご覧の通り。 自分はいくつかの書評記事で書の存在を知ったので、厳密にはジャケ買いとは言えないが、しかし、図書館で借りたり電子書籍で買ったりするのではなく、これは紙ので買おうと思ったのは、間違いなくこの装丁によるところなので、ジャケ買いしたといえないこともない。 初出はいずれもSF誌であり、どの作品も確かにS

    サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』(市田泉・訳) - logical cypher scape2
    min2-fly
    min2-fly 2022/07/26
    積読してるやつだけど@sakstyleのレビュー見てるとやはり面白そうなので読み崩そう・・・帰省中とかに
  • 橋本輝幸編『2010年代海外SF傑作選』 - logical cypher scape2

    輝幸編『2000年代海外SF傑作選』 - logical cypher scape2に引き続き、2010年代傑作選 個人的な好みでは、2000年代のより2010年代の方が好きな作品が多かった。 前半にポジティブな作品、半ばにダークな話が続き、後半は奇妙な話ないし不思議な動物の話があり、最後がテッド・チャンの中編で締められている どれも面白かったが、印象に残ったのは「火炎病」「プログラム可能物質の時代における飢餓の未来」「果てしない別れ」 好きなのは、 「ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話」や「" "」あたりか。 やっぱり「良い狩りを」や「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は普通に面白い 2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ

    橋本輝幸編『2010年代海外SF傑作選』 - logical cypher scape2
  • Kathleen Stock "Fictive Utterance and Imagining" - logical cypher scape2

    フィクションの哲学の論文 フィクションを想像概念によって定義する、というのがこの分野のオーソドックスな見解だが、反論も多い。 反対派としては、マトラバースやフレンドがいる。 一方、最近の賛成派としては、このストックが挙げられることが多い この論文は、フィクションにとって、想像させるよう意図してるものだ、というのが十分条件になってるよ、というもののようだ。 わかりやすい対立だとStockとFriendのペア論文がある(Stockは想像概念でフィクションを定義できる派、Friendは無理派)https://t.co/823Pteb0j6https://t.co/cOITbJ9fVv— matsunaga (@zmzizm) 2020年9月23日 この論文はしかし、同じくフィクションを想像概念により定義するカリーの議論に対して、反駁ないし補足するようなものになっている。 「フィクティブな発話は、

    Kathleen Stock "Fictive Utterance and Imagining" - logical cypher scape2
  • imdkm『リズムから考えるJ-POP史』 - logical cypher scape2

    新年一発目は、リズムから考えていた 元々、realsoundで連載されていたものに大幅に加筆された*1 連載当時読んでいて面白かったので、も読んだ 来なら出てくる音源も聴きながら読むべきなんだが、ほとんど聞かずに読んでしまった。知らない曲の方が多いくらいなのに…… 曲を聴いてないのに、曲について書かれた文章が分かるということはないと思うが、しかし、何となくわかったような気分にはなる。 それは、分析のアプローチが多様であることも関わっている気がする。 分析のアプローチが多様であることは、著者人があとがきでも触れている。 書は、J-POPがPOPになるまで、という歴史を描こうとする。 そしてそれを、日語の歌と様々な音楽(ここでは特に広義のダンスミュージック)のリズムの関係から紐解いていくである リズムから考えるJ-POP史 作者:imdkm発売日: 2019/10/03メディア:

    imdkm『リズムから考えるJ-POP史』 - logical cypher scape2
  • 『SFマガジン2020年8月号』 - logical cypher scape2

    特集・日SF第七世代 ここでは、北野勇作、野尻抱介を第4世代、冲方丁、小川一水、上田早夕里、伊藤計劃、円城塔を第5世代、宮内悠介、酉島伝法、小川哲を第6世代とした上で、それ以降を第7世代としている。 まあ、世代分けにどれくらいの意味があるかはともかく、これに従えば自分は第5、第6世代ばっか読んでるということになる(瀬名秀明を除くと、第4世代以前はマジで全然読んでない……。あ、あと飛浩隆は4なのか5なのか) で、第7世代も多少読んだことはあるけど、ほとんど手を出してないというのが正直なところ そんなわけで読んでみようかなと SFマガジン 2020年 08 月号 発売日: 2020/06/25メディア: 雑誌 高木ケイ「親しくすれ違うための三つ目の方法」 飛さんがTwitterで、タイトルの英訳が第三者接近遭遇になることを指摘していたが、エイリアンの噂話のある田舎に取材に行く若者の話 主人公

    『SFマガジン2020年8月号』 - logical cypher scape2
  • 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史7』 - logical cypher scape2

    7巻は「近代2 自由と歴史的発展」 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史1』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史2』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史3』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史4』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史5』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史6』 - logical cypher scape2 19世紀を取り上げており、前の巻に引き続き、ザ・哲学といったビッグネームが並んでいる ドイツ観念論、ショーペンハウア

  • デイヴィッド・ライク『交雑する人類』(日向やよい訳) - logical cypher scape2

    サブタイトルは「古代DNAが解き明かす新サピエンス史」てまあり、遺伝学による人類史研究の 筆者は一時期ペーポの研究所にいた人で(今は独立した研究室を持っている)、こののタイトル的にも、ネアンデルタール人やデニソワ人と現生人類との交雑の話かなと思って手に取ったのだけど、まあ、それらについての話題も結構ページ数割いてちゃんと書かれているが、メインとなる話題は、それよりももう少し後の時代(1,2万年前〜数千年前)で、現生人類内での集団間の交雑が扱われている。 河合信和『ヒトの進化七〇〇万年史』 - logical cypher scape2を読んだのは、このの予習(「ゲノム革命」以前の定説の確認)の意味もあったのだが、扱われている時代について重複があまりなかった。まあ、700万年のうち、DNA使って遡れる期間のこと考えてみると当たり前っちゃ当たり前の話なのだが……。 旧石器時代あたりをまと

    デイヴィッド・ライク『交雑する人類』(日向やよい訳) - logical cypher scape2
  • スティーブン・ミルハウザー『私たち異者は』 - logical cypher scape2

    日常の中に紛れ込んだ奇妙なものを描くミルハウザーの短編集 原著は2011年 標題作をはじめ「私たち」という一人称複数形を使う語りによる作品が多く(7作中5作)印象的だった 帯にも引用されている訳者あとがきに「ミルハウザーといえば「驚異」がトレードマークとなってきたが、この短編集では驚異性はむしろ抑制され」とあるように、大掛かりな仕掛けのようなものはないが、「ミルハウザーってこんな作品も書くのか」というよりは「ミルハウザーっぽい作品だなあ」と思わせるものばかりだった。 ミルハウザーっぽいとは何か、というと難しいが…… スティーヴン・ミルハウザー『バーナム博物館』 - logical cypher scape2 スティーブン・ミルハウザー『魔法の夜』 - logical cypher scape2 スティーブン・ミルハウザー『三つの小さな王国』 - logical cypher scape2

    スティーブン・ミルハウザー『私たち異者は』 - logical cypher scape2
  • 河合信和『ヒトの進化七〇〇万年史』 - logical cypher scape2

    ちくま新書のkindleセールで購入 そのタイトル通り、700万年のヒト(ホミニン)の進化史についてのだが、記述の主軸はむしろ発見・研究の方にある 誰がどこでどのように発見したのかという観点から進んでいく感じ そのため、若干構成の難しさがある。 章わけ自体は、人類史の年代順に進む。ただ、章の中では、発見場所や研究グループごとの記述になっていることが多く、そして同じ場所から別の年代の種が発見されている場合、それもまとめて記載されている(なので、例えば「ホモ属については後の章で詳しく述べるが、ここではホモ属の化石も発見されており〜」みたいなところが時々ある)。 あと、これは化石標扱っている学問だと致しかたない話だが、標番号がもうとにかくやたらと出てくる。 と、慣れないと若干の読みにくさはあるが、面白く読めた。 古人類学(に限らず古生物学ではよくある話かもしれないが)、属名がなかなか安定し

  • Derek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(美的古生物学と古生物学の実践)" - logical cypher scape2

    古生物学の科学哲学ので、その美的側面を強調している。 タイトルのPaleoaestheticsは、直訳するなら「古美学」になるだろうが、ここでPaleo-としているのは古生物学Paleontologyとかけているからであり、また、古生物学の美学、というよりは、古生物学の美的な側面を指す際に用いられているので、ここでは「美的古生物学」と訳してみた。 書では、Paleoepistemologyという語も出てくるのだが、これも、古生物学の認識論という意味ではなく、古生物学の認識論的側面という意味で使われている。 科学というのは認識論的epistemicなもの(新しい知識を得るためのもの)と考えられがちだが、それ以外の面、つまり美的な面も持ち合わせているのだという。 さらに、単に美的な面もあるよねというだけでなく、認識論的な面と美的な面は相互依存の関係にあり、区別できないほど混ざり合っていると

    Derek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(美的古生物学と古生物学の実践)" - logical cypher scape2
  • リチャード・ウォルハイム『芸術とその対象』(松尾大・訳) - logical cypher scape2

    芸術作品とは一体どのようなものなのかというテーマを取り上げながら、美学の様々な論点を論じていく。 原著は1968年刊行だが、1980年の第二版より6つの補足論文が追加されている。 論文は、65の節からなるが章わけなどはされていない。ただ、目次代わりにつけられている梗概と、訳者解説に載っているアウトラインにより、大雑把な構成は掴める。 大きく分けて2つの部分からなり、前半は芸術作品は物的対象であるという仮説をめぐるもの 後半は、芸術概念について、ウィトゲンシュタインがいうところの生活形式であるということや、その歴史性などについて論じている。 その前半において、再現(representation)や表現(expression)についてや、タイプとトークンについてなどが論じられている。 なお、ウォルハイムというと〈の内に見ること(seeing-in)〉が有名だが、これは補足論文で出てくる。 ウ

    リチャード・ウォルハイム『芸術とその対象』(松尾大・訳) - logical cypher scape2
  • 冲方丁『マルドゥック・アノニマス5』 - logical cypher scape2

    バロットが過去と和解し、ハンターが過去を隠されていたことに気付くまでの話 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス4』 - logical cypher scape2 マルドゥック・アノニマス 5 (ハヤカワ文庫JA) 作者:冲方 丁発売日: 2020/05/26メディア: Kindle版 4巻に引き続か2つの時間が交互に進む構成 つまり、バロットとウフコックが再会した直後の話と、バロットがウフコックを探している時期の話 バロットたちはウフコックを助け出すために、ガンズ・オブ・オウスと戦うことで、クィンテットのバジルに貸しを作る。 何故クィンテ

    冲方丁『マルドゥック・アノニマス5』 - logical cypher scape2
  • 『フィルカルvol.5 no.1』 - logical cypher scape2

    全部は読んでなくて、一部読んだので、読んだとこだけメモ フィルカル Vol. 5, No. 1―分析哲学と文化をつなぐ― 作者:柳川太希,鈴木亘,青田麻未,Jean Lin,佐藤暁,吉川孝,小野さやか,玉田龍太朗,稲岡大志,矢田部俊介,大畑浩志,谷川嘉浩,一方井祐子,酒井麻依子,朱喜哲,大谷卓史,長門裕介,大戸雄真,イシュトバン・ゾルタン・ザルダイ,木下頌子,松永伸司,銭清弘,難波優輝,村山正碩,菅崎香乃株式会社ミューAmazon 2019フィルカルリーディングズ 気になるが増えますね 特集1 いけばなの美学 座談会だけ読んだ 全然知らない世界なので、へーっと ポピュラー哲学の現在 前回も読んだので今回も 特別連載 ウソツキ論理学 哲学的論理学入門第1回 矢田部俊介 今度出る予定のの導入部分の抜粋、らしいです 特集2 学問と勉強のジェンダー・ギャップ 谷川さんと酒井さんのを読んだ 酒井

    『フィルカルvol.5 no.1』 - logical cypher scape2
  • Paul Dawson "Ten Theses against Fictionality" - logical cypher scape2

    muse.jhu.edu フィクショナリティの修辞的アプローチについて 以前、下記の記事を読んだ際にこの考えに興味を持ったのでちょっと調べてみよう第二弾 euskeoiwa.com 第一弾として読んだHenrik Skov Nielsen, James Phelan and Richard Warsh "Ten Theses about Fictitonality" - logical cypher scape2と同じ号のNarrative誌に掲載されているが、about論文への言及も多くなされている。 そして、やはり同じ号に、about論文の著者の1人であるSkovによる、Dawsonへの返答も掲載されていたようだ。 なお、この論文の存在は大岩さんに教えてもらった。 twitter.com この論文は、フィクショナリティの修辞的アプローチを相対化するもので、修辞的アプローチで何かいいこと

    Paul Dawson "Ten Theses against Fictionality" - logical cypher scape2
  • Henrik Skov Nielsen, James Phelan and Richard Warsh "Ten Theses about Fictitonality" - logical cypher scape2

    muse.jhu.edu フィクショナリティの修辞的アプローチについて 以前、下記の記事を読んだ際にこの考えに興味を持ったのでちょっと調べてみよう第一弾 euskeoiwa.com どうも、文学研究ないしナラトロジーの分野で、近年、「フィクショナリティ」「修辞的アプローチ」というのが出てきているらしい。 フィクショナリティを、フィクション作品の性質と考えずに、修辞の一種のように捉える、というものらしい。 この論文では、オバマが選挙戦で相手を批判する際に用いたジョークが主な例として出てくる。 オバマのジョークは無論小説などのフィクション作品ではなく、選挙戦の相手を批判する政治的主張の一環である。が、そういった、ノンフィクショナルな言説の中にもフィクショナリティは現れるのだ、と。 タイトルにある通り、10のテーゼからなる論文だが、ここでは10のテーゼを一つ一つ紹介するのではなく、ざっくりと要約

    Henrik Skov Nielsen, James Phelan and Richard Warsh "Ten Theses about Fictitonality" - logical cypher scape2
  • 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史5』 - logical cypher scape2

    5巻は「中世3 バロックの哲学」 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史1』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史2』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史3』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史4』 - logical cypher scape2 シリーズが始まった頃は、勝手に、古代、中世、近代、現代が2冊ずつだと思い込んでいたので、中世3の表記に最初驚いてしまった。 実際は、古代2、中世3、近代2、現代1の8巻構成である。 ただし、書が扱う時代は14〜17世紀であり、一般的に中世とされる時代ではない。 シリーズでは、特に16〜18世紀半ばを近世と呼ぶことにしており、

  • 飛浩隆『自生の夢』 - logical cypher scape2

    飛浩隆の2006年から2015年に発表された作品を集めた短編集 7中4がアリス・ウォンシリーズとでもいうか、世界観や登場人物が同じ作品となっている。 半分くらいは、初出時に読んでいたが、単発で読むよりこうしてまとめられたものとして読む方が分かりやすかった気がする。 自生の夢 (河出文庫) 作者:飛浩隆河出書房新社Amazon 海の指 以前も読んでいたが、だいぶ忘れていた メロドラマだったのか 情報の海に演奏される、様々な文化の建物がごちゃごちゃに具現化しているなど雰囲気はやはり、廃園の天使とか零號琴とかと通底するものはある 星窓 remixed version 収録作の中で最も古い remixedというのは、過去の短編の要素を混ぜているかららしい。 夏休みに友人たちと星間旅行をする予定だった少年が、突然それをキャンセルし、なにも見えない「星窓」を買う。その星窓には何かが封じ込められてお

    飛浩隆『自生の夢』 - logical cypher scape2
  • ジョナサン・ロソス『生命の歴史は繰り返すのか?』(的場知之・訳) - logical cypher scape2

    サブタイトルにある通り「進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む」 進化は、何百年何千年あるいはそれよりさらに長いスパンかけて起きるものであり、人間には直接観察できない、とダーウィン以来思われてきたわけだが、実際にはもっと短いスパンでも進化は起きる。 そもそもダーウィンの自然淘汰は、人間が行なっている品種改良=人為淘汰から発想されたわけで、適切な淘汰圧がかかれば、人間の観察可能な期間に進化はもちろん起きるのである。 しかし、人為淘汰はあくまでも人為であって、それか自然の中でも同じ速度では起きないだろうと思われていたのが、実はそうでもないというのが20世紀後半になり分かってきた、と。 また、科学研究において、ちゃんと条件を統制した上で実験しないと解明されたことにはならないという考えがある一方で、きれいなラボてできたからといってそれが自然の中でも起きてるとは限らないだろう、という考えもある。 じゃ

    ジョナサン・ロソス『生命の歴史は繰り返すのか?』(的場知之・訳) - logical cypher scape2