日本に到着してからも、私の心は依然として荒んでいた。 非モテの暗黒面にひたりすぎたことによって、私の精神には取りかえしのつかない溝がいくつも刻まれ、何を考えてもその結論は、よどんだ方へ、禍々しい側へと、重力に引かれるようにして導かれていくのが常だった。 そんなある日のことである。 私という非モテに向けて、なぜか、どういうわけか、一人の幼児が手を振った。 ガラスの扉越しだった。 思わず私も、手を振り返していた。 私はなぜか微笑んでいた。 その瞬間、私の心に、今上陛下のクオリアが降臨した。 赤子(せきし)に応え、微笑みながら手を振る陛下の姿。 そのクオリアを鍛えることによって、私は少しましになった。 1.憤怒が直る 見知らぬ人とすれちがう。 ただそれだけのことが、非モテにとっては大きなストレス、ひいては怒りの種になる。 こいつ…… 俺を見た? 非モテの俺を? つまり