戸山図書館には、「西岡文庫」と印の押された書物が、それぞれの図書番号の位置に配架されて、閲覧者に活用されている。荘園史研究・民衆史研究の開拓者、ある意味では大成者として、揺るぎない足跡を遺された西岡虎之助先生(1895~1970)の旧蔵書である。先生の逝去後、御遺族の御厚意で本学に寄贈された。 先生は、1954年、本学文学部教授として、おもに文学研究科での授業を担当なさるために赴任された。東京大学史料編纂所史料研究部第三近世史料部部長を、御定年1年前に辞任されての御就任であったから、本学のがわによほど切迫した事情があったのであろう。 史料編纂所という、日本史研究にとってアカデミズムの本山を職場としながら、先生は、その枠から大きくはみでた、あるいはそんな枠などものともせぬ、野人的な学風でつとに知られていた。政治の興亡や制度の変遷の跡づけを主流としていた歴史学界にあって、先生は終始一貫、「百姓