人工知能学会はこれまでも学会誌に日本SF作家クラブ会員のショートショートを掲載するなどSFへの理解・関心を示してきたが、本書はさらに一歩踏みこんだ画期的な企画だ。AIをテーマとした書き下ろし小説と、それに呼応した内容のAI研究者のコラムが併載されている。俎上にあがっているのは「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」という5つの側面だ。 このうち、ぼくがもっとも身近に思えるのは「芸術」である。AI自体が創造性を持ちうるかどうかはまだわからないが、ITを創作活動に利用することはとうにおこなわれているし、技術的に考えればそこから芸術の自動生成まではほんの数ステップである。AIが内的な状態として創造性を備えているか否かにかかわらず、AIが出力した「作品」に接した鑑賞者が「創造性」を感じとってしまうのはじゅうぶんにあり得る。チューリングテストと同様だ。 本書に収められた倉田タカシ「再突入」は、そんな