「学歴社会 新しい文明病」(R.P.ドーア) いささか古い本だが、著者はまだ健在だ。 ドーアは「学歴インフレ」という病が世界中で蔓延していると書く。 最初は初等学校卒だけで十分に威信の高い職業に就けたのに、教育が整備されるにしたがって、初等学校卒だけでは差別化できなくなる。このため、社会上層部への移動を目指す人々は、中等学校に進学するようになる。同じことが、高等学校、大学でも繰り返される。 学校定員を増やさないことは政治的に困難であるが、財政的な制約がある。また、野放図に高等教育を整備すれば、教育の効率低下を招く。農夫に細菌学はいらない。何らかの方法で、「高等教育が必要な人」を選抜しなくてはならない。 学力試験、知能テスト、くじ引きなど、さまざまな方法を比較検討した上で、ドーアは、どれも一長一短があるという。 ドーアの提案する選抜方法は、「職場における選抜」だ。義務教育終了時点で、全員をい