サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
セキュリティ
konohanablog.hateblo.jp
トマトである。 ✳︎✳︎ ひさびさに古くからの友人と飲みに行った。彼女とは今でもちょくちょく会う間柄であるが、かつて「会う」といえばそれはイコール「酒を飲む」ということであったわたしたちも、わたしの出産を機に様子が変わってしまった。わたしたちが会う舞台は「夜の居酒屋」から「昼間の公園」に変わり、彼女はとても積極的に娘の遊び相手になってくれ、娘も彼女のことが大好きなのである。 そんな彼女とひさびさに酒を飲んだ。地元で人気の焼鳥屋に足を運び、名物のつくねを頬張りながら、話に花を咲かせた。レモンサワーを一杯、二杯と飲み進めていくうちに、周りの客たちの話し声は全く気にならなくなり、わたしたちはただひたすらとりとめもない話をした。又吉の火花はもう読んだかだとか、最近ついつい食べ過ぎてしまうのは秋が来たせいなのかとか。 互いの家族の話もした。なぜわたしたちは血のつながりや婚姻関係にある近しい人間に対し
tankanome.hateblo.jp 詠みます。 ★ 1.手帳 「いらないよ」十年過ごした君に云う 白紙の手帳に千の思い出 2.花火 初花火「二人で」契った過去遠く 空咲く光が 三人 ( みたり ) を照らす 3.虫 みんみんみん 虫らの合唱聴きいれば 四方 ( よも ) から全身夏に 抱 ( いだ ) かれ 4.白 砂浜が 真白 ( ましろ ) の裸足焼き焦がし 心は早くもラーメン食べたい*1 5.アイス アイス溶け手に滴るも知らんふり 「はんぶんこ」笑む幼き白ひげ 6.プール ‘心から好きだよ’ 飛沫 ( しぶ ) く笑い顔 チャコ*2が流れるプールサイドで 7.すず すずの音が鳴り響く夜に 衣 ( きぬ ) ほどき 月だけが 映 ( み ) る二人の逢瀬 8.アンタレス この夏も主役になれないアンタレス 大事な 紅 ( あか ) は足りているから 9. 雷 雷鳴が荒ぶ波音かき消
「ねえ、人って死んだらどうなるの?」 おやつに出されたいちご大福をうまいうまいと頬張りつつも、リサは最近ずっと気になっていたことを口にした。 「どうなるって?うーん…」 その問いがあまりにも唐突だったので、彼女と一緒にいちご大福を頬張っていた彼女の祖父、勲は答えに窮してしまった。 「死んじゃったらさあ、目も、見えなくなるんでしょ?息もしなくなるでしょ?そしたらさあ、どうなるの?」 「うーん、そうだねえ…」 「わたし、こわいよ。わたしだって、いつか死んじゃうんでしょう?そうしたら、その後はどうなるんだろうって、昨日の夜はそれで泣いてしまったの。」 すがるような目で答えを求めるリサの隣に回り込み、勲は腰を下ろして彼女を抱きよせた。 「死んでしまったらどうなるのか、実はじいちゃんにもよくわからないんだ。」 勲は眉をへの字にして答えた。 「死んだあとも魂は残って新しい命に生まれ変わるなんていう話も
「ほんで、4月からどうすんの。」 「どうすんのって、何が。」 黒い空にぽっかりと浮かぶ白い月に向かって、アカリはふうと煙を吹きかけた。 「何がって、働いたりしないの。」 「働いてるじゃん。」 手に持った缶ビールを傾けてグビリとひとくち飲む。 ヤニ臭い口の中もアルコールを流し込めば気にならなくなった。 「それはバイトでしょ。」 「バイトだって働いてることに変わりないでしょうよ。」 なんだか面倒臭いことを言うケイスケにも煙を一息吹きかけながら、アカリは投げやりに言った。 ついこの間までコートの襟に首を埋めないと外を歩けなかったのが嘘のように、今は生暖かい風がアカリの身にまとわりついて彼女の心をざわつかせた。 「まあ、いいや。アカリがそれでいいなら。」 そう言ってケイスケはアカリが手に持つ缶ビールを奪いとり、グビリとひとくち飲んだ。 男の人が飲み物を飲む姿はどうしてこうもセクシーなのだろうと、気
3月の題詠短歌10首および投稿作品ご紹介です - はてな題詠「短歌の目」 詠みます。 ☆☆ 1.雛 「ヒナです。」と隣に座ったEカップ 口を開いて餌を待ってる 2.苺 ねえ甘い?それともすっぱい?教えてよ キミが溺れるイチゴの果汁 3.夕 縁台でビール片手に夕涼み 火花消えても夏よ終わるな 4.ひとり言 「5分煮る。」独りコトコトひとり言 心のアクを取り去る儀式 5.揺らぎ 肌重ね唇重ね瞳(め)は閉じる 揺らぎ隠して秘密守って 6.羊 「大丈夫、ほんとに何もしないから。」ひつじくんはそう言いました。 7.線 どこまでも続く白線踏みしめて「落ちたら負けよ。」 知るかそんなん 8.バク バクに夢喰われる前に目が覚めた 白でも黒でもないのさ人生 9.年度末 「さようなら。年度末だし別れましょ。」 彼女の決算 僕の損失 10.信号 信号があたしの中で騒いでる 赤だぞ止まれ 赤だぞ止まれ ☆☆ 短歌
7時。健司のいつもの起床時間だ。 もう何年も前から目覚まし時計がなくてもほとんどぴったりこの時間に起きるようになっている。 腰に負担がかからないよう、横を向いて手をつきながらゆっくりと起き上がると、隣で寝ている雪子を起こさぬようそろりと布団から出た。 台所で一人分のコーヒーを淹れ、椅子に座ってテレビを見る。朝食は食べない。 以前は雪子が健司よりも早く起きて焼魚やら味噌汁やらを作ってくれていたのでありがたく頂いていたが、最近の雪子は午前中いっぱい眠りこけているので、健司もわざわざ一人分の朝食を用意するのが面倒くさく、朝はコーヒーだけという生活が続いている。 テレビ画面の中では、昨日起こったという殺人事件のことや、人気芸能人カップルの破局、梅の花の開花状況に至るまで様々な情報が目まぐるしく流れ、そのたびに表情をころころと百面相のように変えて原稿を読みあげるアナウンサーを、健司は半ば感心する思い
「お邪魔しまーす…」 一歩中に入った途端、そこはまるで別世界だった。 その家の中は、一度だけひやかしで入ったことのあるモデルルームのような匂いがしたし、綺麗に掃除された玄関の先には、真っ白な壁にかこまれた廊下が続いていた。 煙草のヤニで茶色く染まった壁ばかり毎日見ている璃子にとってはそれだけで驚きだった。 ぎこちなく靴を脱いでそこに並べると、泥で汚れたままのスニーカーを履いてきた自分が急に嫌になる。 「ママ〜、璃子ちゃんが来たよ〜!」 そう言いながら家の中に入って行く美香のあとについて廊下を進み、扉を開けた先のリビングへと案内される。 璃子はそこでいったん振り返り、廊下の床を確認した。 自分の足跡だけが黒く汚れて浮かび上がってしまったのではないかと不安になったのだ。 しかしさすがにそんなわけはなく、そこにはしっかりと磨かれた床がピカピカと光っているだけだった。 「璃子ちゃん、いらっしゃい。
「こういうことがあってわたしはこう思いました。」みたいなこと書くのが苦手だなーって思うんですよ。 書くことに限らず、「あなたはこれどう思う?」って人に聞かれたときにもまあ何も答えられない。 自分の考えを言語化することが苦手なんですね。 それでも特別な不便は感じずに生きてきたんですけどねそれなりに。 はてなブログをやってると「俺はこう思う」「いや私はこうやねん」て言及言及していくスタイルの記事が毎日飛び交ってていやーすごいなーって思って遠まきに見たりしながらも、自分はそういうとことは全然関係ない場所でぽちぽちブログ更新してのほほんとやっていけばいいやって思ってるんですけど、たまーにムラムラーっとしてしまうときがあって、「あーこれ言いたいわー言いたいことあるわー」って感じるんですけど、いざそれについて書こうと思うと何も書けないんですよね。 いや違う、言いたいことはこれじゃーない、と書いて消して
真っ黒な12月の空から冷たい雨がしとしとと降り出した。 恭介はポケットに手をつっこみ、顔をコートの襟に埋めながら、「うーさみい。」と白い息を吐いて呻いた。 頭の中には先ほど訪れた飲み屋で流れていたクリスマスソングがぐるぐると回っている。 男性客ばかりが集まるあんなくたびれた場所でクリスマスソングを流す意味もよく分からなかったが、こんな日に雨の中一人きりでプラプラと歩く今の自分には、あの悲しげな曲がピッタリと当てはまるような気がして、半分自虐的な気持ちでその曲を口ずさんだ。 この雨ももうじき雪に変わるのだろうか。 「いい歌ですよねぇ。」 突然後ろから声がしたので振り返ってみると、そこには4足歩行の角の生えた動物が恭介の後を追うようにして歩いていた。 恭介はギョッとして立ち止まったが、そんなことはお構いなしといった様子でそれは喋り続ける。 「この雨も雪に変わるんですかねぇ。」 果たしてこれはど
星になったはずの父が帰ってきたのは、英恵が中学二年生のときだった。 「どうも、あなたの父です。」 屈託のない笑顔で自己紹介をしたその男は、どうやらこの家に居座ろうとしているらしかった。 英恵の母も、突然訪ねてきたその男に最初こそ戸惑っていたものの、少しすると何かの魔法をかけられたようにすぐに打ち解けてしまった。 英恵が物心ついたとき、父はすでに居なかった。 まだ英恵が幼い頃、母に父のことを訪ねてみたことがある。そのとき母は一言「星になった。」と言うだけだった。 その言葉の裏には、「それ以上聞くな」という母からの暗号が隠されているように感じられたので、それ以降、英恵が父について尋ねることはなかった。 それから実に10年近い月日が流れたが、大人にとっての10年というのは英恵にとってのそれとは質が違うものらしく、ケラケラと笑いながら昔話に花を咲かせる父と母を見て英恵はただ呆然としていた。 「他に
そのとき千鶴は思わず、これはもしかして母が喋っているのではないかと錯覚した。 しかしながらそこにいるのは千鶴と、友人である洋介だけであった。 当たり前だ、ここに母がいるわけがない。 そう考えながら右手に持ったジョッキをぐいと傾けた。 ぬるくなった液体が、少しの刺激とともにサラサラと喉を通過していく。 「あ、生でいい?」 「うん。」 千鶴のジョッキが空くのを見ると洋介はすぐに店員を呼び、自分の分と千鶴の分の生ビールを追加で注文した。 2人ともかれこれもう6杯ほどのジョッキを空にしているが、洋介がまだまだ帰る気ではない様子を見て千鶴は安堵した。 アルコールによる作用と洋介の心地よい相槌のおかけで、千鶴はいつになく饒舌だった。 今は自分の好きな小説家のことを熱く語っているところだ。 しかしながら、先ほどから自分の声に被さって聞こえてくる母の声がいちいち鬱陶しい。 酔ってぼやっとした頭の中には、ベ
5 「ああ、そうだ。リンゴ、リンゴがあるのよ。直、持って行かない?」 母はそう言って冷蔵庫にぱたぱたと駆けていき、扉を開けると早くもいくつかのリンゴを取り出して袋に詰めはじめている。 「まだいるって言ってないじゃん。」 直子は母に聞こえぬよう小声でそう呟いたあと、それでも「ありがとう」と言って渡された袋を受け取った。 「悟さんと一緒に食べてね。結構いいやつなのよ、それ。」 母にそう言われ、直子は曖昧に頷いた。 そして手早く帰り支度をすると、「じゃあ、私行くね。」と言って玄関に向かった。 「うん、悟さんによろしくね。」 母がまたもや悟の名前を出したので、直子は「はいはい」と言って手をひらひらと雑に振りながら逃げるように家を出た。 帰り道、直子の表情は暗かった。右手に持った袋がずっしりと重く、思わず「はあ」とため息をついた。 自宅に着いてからも、袋に入ったリンゴを見ては陰鬱な気持ちになり、やは
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『konohanablog.hateblo.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く