サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
猫
www.tessenshortshort.com
昨日、芥川賞と直木賞の受賞者が発表された。日本の小説は大きく2つに分けられる。芥川賞の対象となる文学的な『純文学』と直木賞の対象となるエンタメ的な『大衆小説』だ。 私は純文学が好きではない。そもそも私が本を読むのが嫌いになったのは、国語の教科書で純文学を読まされたためだ。登場人物がどのように考えているかを、テストの問題にすることができるような難解な物語を、子供に読ませるなんて鬼の所業としか思えない。ましてや、純文学を書いた作家の人生については触れずに、作品だけを読ませて尊敬できる人だと思わせる手法は、胡散臭い宗教のようで、恐怖すらある。 文豪と呼ばれている人は、もれなく変人であって、男性作家には必ずと言っていいほど女性トラブルがついてくる。小説家のなかでも、文豪として成功する人が女性にモテないわけがない。彼らは言葉を操るのが得意なのだ。小説なんか嘘の塊でしかないのに、それが全て本当にあった
私には、住みたいけれど、住めない街がある。 今から二十年と少し前。私は高校を卒業すると、生まれ故郷の札幌を離れて和歌山県の高野山に移り住んだ。仏教の中でも一部の限られた者しか学ばない密教を学ぶためだ。 高野山の上には、寺院と宿坊、最低限の商業施設しかなく、都会的な娯楽の類いは小さなゲームセンターしかなかった。高野山は、札幌で育った私には物足りない町だった。 私は、週に一度、ケーブルカーと電車を乗り継いで、大阪の難波まで降りるようになっていた。難波は、札幌とは比べにならない都会で、何度訪れても楽しい場所だった。観光地として人気の京都が、電車で一時間の距離にあることを知っても、足を運ぶ気も起きないぐらい、あらゆる娯楽がそこにはあった。 それは難波に向かうのが五回目のときに起きた。朝早くにアパートを出た私は、電車の中で寝てしまったのだ。難波駅が終着駅だったため、寝過ごす心配がなく、気も緩んでしま
森博嗣さんの『すべてがFになる』を読み終えました。 すべてがFになる (講談社文庫) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/12/11 メディア: 文庫 購入: 16人 クリック: 241回 この商品を含むブログ (589件) を見る タイトルだけは前から知っていて、ドラマ化やアニメ化していたのも知っていたのですが、今まで読んだことも、見たこともありませんでした。 読書の候補として『すべてがFになる』も上がっていたのですが、理系ミステリーと紹介されていたため、難しそうで避けていました。難しい計算や言葉が出てきたら、勉強の本を読まされているようで楽しめませんからね。小説は娯楽なのですから楽しめないと意味がありません。 1ヶ月前ぐらいから、ミステリーを書きたいなと漠然に思い始めて、有名なミステリーをいくつか読んでいたのですが、どれもしっくりこない。望んでいるものとは違
前回の続きです。 www.tessenshortshort.com 建物の裏に回ると入り口を見つけました。 近づいて見ると、北海道知事公館! 約40年札幌で生活してきて初めて来ました! 北海道知事公館を後にして南東に歩くと、札幌市資料館があります。 以前、これで紹介した場所です。 www.tessenshortshort.com 今回は素通りして、大通公園12丁目を通ってさらに南へ。 到着したのが、以前と違ってビルの外見が紺色に変わった、 SALON Rです。近代美術館に行くときは、いつも寄るマッサージ屋さんです。 www.tessenshortshort.com 芸術に触れて、美味いものを食べて、自然を感じて、最後はリラックス。これぞ休日!
本気で小説家になると決めて会社を辞める(9月から有休消化)のですが、連日の猛暑で死にそうです。暑すぎて集中力が続きません。 そこで、足下から変えてみました。 2階の部屋のチェアマットを精神的に落ち着く癒やしの色である緑色に変えました。 チェアマットって、探してみるとなかなか見つからないものですね。ネットで見つけた物は評価が悪くて心配だったので、「お、ねだん以上」のニトリで買ってきました。 ニトリの『タイルカーペット(ハーゲン DBR 50X50)』の緑色を6個買って並べました。 裏地が真っ黒のゴムなので滑りません。ついでに足下の配線まわりも少し整理しました。最近、執筆中に引っかかってイラッとしていたので、これで集中できそうです。 同じ場所での執筆は長く続かないものなので、気分転換が必要です。場所を変えるのが一番いいので、お金のかからない図書館へ行くのがいいのですが、私の家の近所に図書館はな
私、新屋鉄仙(しんや てっせん)は2019年10月を持ちまして会社を去ることになりました。これからはアマチュア作家として活動し、プロ作家を目指すことになります。 若年性パーキンソン病を発病し7年。今年の9月で40歳を迎えるにあたり、このまま会社にしがみついて、生きているのか死んでいるのか分からない人生を歩んでいていいのか、という疑問が生じました。 私は病人ですが、野心家です。10年先を考えたとき、病気を乗り越えて会社のトップに立っても、満たされないと気づきました。私が目指したいのは、小さな組織のトップではなく、この広い日本で名を残すことでした。 会社員を辞めれば、収入がなくなるため、貯金を食い潰して生活することになります。一応、今まで貯金はしてきましたが、給料が安かったので、あまり溜まっていません。切り詰めれば1年はなんとか食べていけそうな程度です。 私は長生きしたいとは思っていないので、
つい口が滑ってしまった。本当のことだから書いても、いいだろうと思ったが、冷静に考えたら、本当だからこそ書いてはダメだった。 危ない。危ない。
心が痛い。 執筆中の小説が、心をえぐってきた。 私の書く小説は、キャラが勝手に動き話し始める。だから先が読めず、いつも話の先が知りたくて楽しく書いている。 しかし、先程書いたシーンがとても嫌な展開を迎えた。 幼稚園バスが子供たちの送迎にやってきて出発する直前に、知らない男に乗り込まれてバスジャックが起きる。この展開は私自身、予定していなかったシーンだった。あらかじめ用意していた次のシーンで、子供の安否を心配しなかった夫を責める妻のシーンを盛り上げるために、急遽用意したものだ。 今、書いている小説には、ネットの匿名性の悪意がテーマの一つとして描かれている。そのテーマにそぐう内容として、幼稚園の先生がネットで非難される事件が必要だった。そこで、子供の安否に関わり、先生が責められる可能性のある事件として、バスジャックがふさわしいと思った。 設定を加えて、物語を自動再生させてみると、バスの運転手が
2012年に若年性パーキンソン病を発症しましたが、専門の薬を飲まずに事務職をしております。資格らしい資格はありません。病気の影響を考えマイカーを手放して二年になります。 もうすぐ40歳になるので、札幌で完全週休二日制、月の残業40時間以内、年収360万円以上の仕事を探しています。 事務職ですが、事務が得意とはいえません。コミュニケーション能力は高いですが、営業経験はありません。 物心つく前からモラハラ、セクハラにさらされていたので耐性があります。骨が折れない程度の暴力なら耐えながら電卓も打てます。 病人ですが、不治の病になり一日中全身が痛くても心は折れませんでしたので、肉体的にも精神的にも間違いなくタフだと思います。ただ、体力がありません。札幌の街中をぶらぶら一日中歩けるぐらいの体力しかありません。そのため、事務職なら午前9時から午後6時(昼休憩ありの8時間勤務)で、毎日残業2時間が限界で
今年の親睦会はW部長の部署が担当でした。会場は『THE SECRET』というお店で、本社勤務およそ70名が参加しました。店名はシークレット。『秘密』という意味ですが、怪しい店ではなく、デートに使えそうな雰囲気のいい健全なお店でした。 オトナな雰囲気の店で、私、落ち着きませんでした。はい、嘘をつきました。いつも通り、我が物顔でくつろいでおりました。親睦会ということもあって、席はくじ引きで決まります。私の席番号は『11』番でした。 11番の私は、上座のど真ん中に座ったので、もの凄く目立ってしまいました。両隣に座られた上席者たちの見た目が仕事のできる官僚みたいなこともあって、「首脳会議かよ!」「お前は、どこの社長だ!」みたいなことを、みなさんからツッコまれました。どさくさに紛れて、「こいつマジで文才あるから」「先生だからね」とも言われました。 褒められると気分いいですね。仕事で褒められるのはいつ
みなさんがこれを読んでいるということは、みなさんの知っている私はこの世界にいないということになります。 旧年は新しい才能を開花させた一年でした。知っての通り、私は努力できない人間です。才能だけで生きているといってもいいでしょう。また自慢話かと思う方も多いと思いますが、一つ理解してもらいたいことがあります。 才能があるということが、必ずしも幸せだとは限らないということです。 世の中、仕事ができる人に仕事が集まります。一見、羨ましいことに思われますが、実際はそんなことはありません。仕事ができない人には仕事を任せれないので、簡単に終わる仕事を与えて定時で帰らせます。その横で仕事ができる人が専門的な仕事を、仕事ができない人の倍こなし、さらに残業して帰ります。能力給なら納得できますが、日本は今でも多くの企業が年功序列ベースの時給を採用しています。 上司や人事を決める人たちは普通の人です。彼らが作るル
今日、『はてしない物語』を買いました。この小説は私が小さい頃好きだった映画『ネバーエンディングストーリー』の原作です。 先日、サークルの宣伝も兼ねて他の方のアンソロジーに参加することにし、ここ数日、そのテーマにあったお話を書いていました。そして、すでに2作も没にしました(涙) アンソロジーのテーマが『本』だったのですが、『本』というテーマは解釈の幅が狭く難しいです。それでも、思いついた話を書き進めている内に、どこかで見たことのあるような出だしだなと思ってネット検索して見つかったのがネバーエンディングストーリーだったのです。 小さい頃に見た映画だったため、内容についてはほとんど覚えていないのですが、いじめられっ子が古書店に逃げ込むという出だしが同じでした。 私はネバーエンディングストーリーが大好きでした。それなのに、内容は全くというほど覚えておらず、白い犬にしか見えない龍の『ファルコン』と岩
タイトルがやや大袈裟ですが、私にとってはそのぐらい大きなことです。 私の持病である若年性パーキンソン病は、人それぞれ発症する症状が違います。また、症状の重さも違います。私は比較的に症状が軽く、今のところは人並みの生活ができています。しかし、初めて病名がついたとき、私の人生は終わったと思いました。 あれから6年。今の私は病気になる前より生き生きしております。 足を少し引きずったり、全身の痛みは消えていませんが、それでも健康なときより人生を楽しんでいます。 相変わらず記憶障害は進んでおり、最近、仕事に影響が出るようになりました。年に一回の仕事が出てきたとき、全く思い出せません。 一年という時の流れは長いです。定期的に思い出さない記憶はどんどん消えていきます。健康な人には理解できないでしょうが、記憶を失う恐怖は、体が動かないことよりも大きいです。 そんな私が、11月25日に東京流通センター第二展
11月25日11:00~17:00に東京流通センター 第二展示場で開催される『文学フリマ東京』にて、私が初めて執筆した長編を販売します。 サークル名は『堕楽堂』で、ブース番号は F-39 です。 タイトルは『かぎろい』です。ここで連載した作品(この心臓が動く限り、俺は諦めない)を手直しして、タイトルも変更しました。文庫サイズ192ページを500円で販売します。ジャンルは純文学・私小説になると思います。 ぶっちゃけると印刷代だけで470円もかかっているので、30円しか利益はでません。他の人はここに、もう少し利益を乗せると思いますが、私自身、今年の夏に開催された文学フリマ札幌で客として参加した時に、素人の本に500円以上は出せないと思いましたので500円にします。旅費を考えると赤字ですが、今回は旅行も兼ねているので気にしません。 この本を読んでもらえれば分かりますが、難病になった人が働き続ける
エピローグ 部屋に入ると、俺はそのままベッドへと向かって大の字で寝そべった。 あっという間の一日だった。午前八時に会場入りして設営を初め、片づけが終わったのが午後六時半で、ホテルに着いたのが午後七時。この間、交代で何度か休憩を挟みはしたが、ほとんど休まず動いた。 頑張った甲斐あって、うちのブースは体験会の行列が途切れることなく、アナログゲームフェスティバルは大成功のまま幕を閉じることができた。 ブーブーと音を立ててスマホが震えた。 イベントに参加したメンバー専用のLINEのグループトークだった。 『お疲れ様! 打ち上げどうします? こっちでやります? それとも帰ってから?』 広報部の藤堂さんからだった。 『みんな疲れているんじゃない? 俺は飲む気まんまんだけどね!』 商品開発部の山根課長からだ。山根課長はサイクリングで鍛えているため体力に余裕があるのだろう。 『僕は参加しますよ!』 広報部
ヒヤリと頬に冷たいものが当たる。顔を向けると冷たい物はコーラだった。 「一息入れたら? リーダーが倒れたら、みんな困るでしょ?」 コーラを差し出しているのは岩井主任だった。 「ありがとうございます!」 俺は受け取って一気に飲んだ。 炭酸が鼻を抜ける痛さで涙が出た。 「あれ? もしかして、みんなが手伝ってくれて泣いているの?」 「違いますよ。炭酸がきつくて」 炭酸の抜ける痛みが引いても、俺の涙は止まらなかった。 翌日も、誰一人文句も言わず、休日だというのにみんな出社して手伝ってくれた。おかげで日曜の夕方前には全て完成した。途中、新しいアイデアなども出てきたおかげで、俺が一人で考えていた物とは比べようがないほど面白いボードゲームが完成した。みんなでわいわい雑談しながら楽しく仕事をしたのは初めてで、俺だけでなく参加した全員にとって充実した二日間だった。 西野さんが差し入れのシュークリームにかぶり
分かってしまえばなんのことはない簡単なアリバイ工作だった。 俺の会社では、出張する者が前日までに自分で宿を取り、簡単なスケジュールを上司に報告することになっている。出張が終わった翌日に簡単な報告書と宿泊などにかかった領収書を添付し、承認されれば立替た代金が支払われる。事前にかかる費用が分かっている場合は仮払申請を出して承認されれば事前にお金を出してもらえる。 後藤課長は出張予定を提出したが実際には出張しておらず、代わりに鈴原さんが宿泊先を予約して旅行代金を浮かしていたのだ。会社は出張先の宿泊施設の選定には一切関与しておらず、宿泊費が規定を超えた分は自腹となることしかチェックしていない。そのため、鈴原さんは旅行として高級旅館を予約しても、会社が出した出張旅費分だけ出費を抑えることができ、面接という名目で出した食事代や喫茶店のコーヒー代なども全て会社に負担させることができたのだ。もちろん極端に
作家と作品は別かどうかなんてどうでもいいのです。 芥川龍之介、太宰治、谷崎潤一郎、夏目漱石、三島由紀夫、森鴎外。 彼らは素晴らしい作品を書けたから、色んな問題を見て見ぬフリしてもらえたのです。 しかし、私はそんな器も資格もない男なんです。 病気で人より体力もない、残業の多いサラリーマンで時間もない、これまで本も読んでこなかったので言葉も知らない、それでも長年小説を書いてきた人と並んで結果を出しているのは、何かの間違いなのです。 たまたまスタート地点がゴールの手前から始まっているというだけで、私には才能なんてものは全くないんです。 だから努力するしかないんです。たくさん本を読んで、書いて、着実に成長するしかないんです。幸いなことに伸びしろだけはたくさんあることが、せめてものの救いです。 そんな私が過去の文豪と一緒にしてもらえたのは嬉しいのですが、それは本当に過大評価です。 それに今はそういう
休みが明けた月曜日。出社すると俺の机に懐かしいクッキーが置いてあった。口の中に入れるとホロホロと崩れ落ち、鼻腔を抜けるバターの香りと濃厚なミルクの風味が美味しい函館土産で有名なクッキーだ。小さい頃はお土産でもらうと喜んで食べたものだ。 「懐かしい!」 「ありがとう!」 「函館行ってきたんだ」 「函館と言えば、イカじゃない?」 「イカといえば、いかめしですよね」 「確か、森だっけ?」 「森? 海じゃなくて?」 「地名が『森』なのよ」 「でも、どうして森なの?」 「知らないわよ!」 朝から総務部では函館の話で盛り上がっていた。 お土産は、金曜に有休を取って函館旅行へ行っていた鈴原さんからだった。函館旅行と言っても、メインは隣の北斗市だったそうで、机の上には北海道北斗市公認のゆるキャラが他の町のゆるキャラたちと一緒に並べられていた。 朝から明るかった総務部だったが、急な打ち合わせで鈴原さんが総務
nonさん、るるせさん、ありがとう! 私を祝ってくれる人がこんなに少ないとは思わなかったよ! 来年は100人以上に祝ってもらえるよう頑張るよ! 絶対見返してやるからな、こんちくしょー!
私、今日が誕生日でして39歳になったのですが、寂しい独身男なので、私生活では誰も祝ってくれません。 なので、お誕生日おめでとうコールプリーズ! 病気も治らないし、彼女できないし、なんかもう生きるの辛い。 今日だけは甘えさせて。
「佐伯君、悪いんだけど、今から人と会うんで帰ってくれないかな?」 どこか必死な後藤課長の様子が気にはなったものの、迷惑をかけるわけにはいかないので、俺は大人しく帰ることにした。 「あっ、すみません。気がつかなくて。じゃあ、また今度」 慌てて席を立ち、出口へと向かうと、ちょうど入ってきたばかりの灰色のスーツの女とぶつかりそうになった。お互いに避けようとして何度もぶつかりそうになり、最後は俺が立ち止まることで道を譲ってもらう形となった。女はそれが気にくわなかったのか俺の横を通るとき、「チッ!」と舌打ちした。 舌打ちの音に反応し、頭にきた俺が振り返ると、女は後藤課長の向かいに座っていた。あの女が後藤課長の待っていた女か。大事な取引先だったらまずいので俺は怒りを抑え込んで、店を出ることにした。 そのまま雑貨屋へ向かおうとしたとき、俺は気づいた。今日たまたま整理していた報告書では、後藤課長は帯広出張
住宅街にひっそりたたずむ真っ白な古民家カフェで軽い朝食を取りながら談笑し、昼は中華料理でお腹を満たすと、俺たちは札幌駅へと戻ってきた。 戻ってきたのは、家に帰るためでも、元日から遊ぶためでもない。俺の服を買うためだ。雑談の中で、俺は今年から生まれ変わると話したのだが、それに対し、村山さんから服装を変えましょうと提案を受け、彼女が色々アドバイスしてくれることになったのだ。 元日営業している店は少なかったのだが、彼女はファッションに詳しいらしく、男の俺も知らないメンズファションの店を知っており色々案内してくれた。 ネクタイはたくさん持っていたので、その他のものを買うことになり、今まで身に着けていなかったタイバーとカフリンクスを買うことになった。 最初の店はあまり気に入ったものがなく、二件目で気にいったタイバーを手に取ると、一緒に展示されていた箱についていた値段を見て驚いた。ネクタイを挟むだけの
第二章 若年性パーキンソン病という病名がついてから一年以上が経過した。三月の札幌は灰色のアスファルトが顔をのぞかせてはいるものの、まだ歩道には雪が残っている。暦は春になっているが、肌寒さはまだまだ冬だ。 俺は今、会議室にいる。全社会議でも使用する社内で一番広い会議室ということもあり、暖房をつけても冷えきった部屋が温まることはなかった。寒さで体を少しこわばらせながら小さな町内会の会館ほどはある広さの会議室の端に、俺と梶原部長、総務部の不動部長が座っていた。俺の目の前の長テーブルの上には『辞令』と書かれた紙が一枚置かれている。 「――というわけで、四月から総務部で頑張ってもらうことになった。病気のこともあるし、内勤の方が君も楽だろう?」 それまで俺のことを目の敵としてしか見ていなかった梶原部長が、先程からやたらと褒めている。心にもないことをこんなにスラスラと語れるところは、さずが営業といったと
「鈴原です。佐伯さん、今、どこにいます?」 鈴原さんからの電話だった。 「大通公園近くの喫茶店にいるよ?」 「佐伯さん、会社のセキュリティーカード持っていましたよね?」 セキュリティーカード? 前にも鈴原さんに聞かれたな。あれは付き合い始める前だったか。 俺の会社はセキュリティー会社に警備を依頼しており、会社の鍵とセキュリティ―カードがないと会社のドアを開閉できないシステムになっている。そのため、朝一番で出社する人と、最後に退社する人が鍵をかけることになっていた。 セキュリティーカードには事前に所有者が登録されており、誰がいつ開閉したのかも記録されるようになっているが、そのセキュリティーカードを所有しているのは、社内で数人しかいない。そのため、セキュリティーカードを持っていない人が、急用や残業で鍵の開閉をする必要がある場合は、誰かに鍵とセキュリティーカードを借りなくてはならない。 「持って
ネットでこういうのを見つけました。 www.osawa-office.co.jp 私が小説家をイメージしたとき、最初に思い浮かべるのが京極夏彦さんだったりします。どうしてなのかは、昔のことなので全く思い出せず分かりませんが、小説家といえば、京極さんです。作品は一度も読んだことないのですが、京極さんが一流だということは、なぜだか分かります。憧れなのか、最近真似して着物も買いました。私は形から入るタチなのです。 先程紹介した対談を読んで、こういう関係いいなと思いました。今現在交流がある人たちがそれぞれ作家になったとき、昔、こういうことあったよね。とか話すの楽しそうです。たぶん、私はそれに対して「ああ、そうなの? ごめん、覚えていない」と言って、対談相手も「昔から、そうだよね。あの頃もそれでトラブルに遭っていたよね」とか笑われそう。 もしかしたら、私はこのやりとりをやりたいがために、作家になりそ
以前、書きました電子書籍ですが、ついに発売されました! 収録作品は全14作となります。以下にタイトルと作家名を挙げておきます。 スナック虹へようこそ 貫洞沙織(id:keisolutions) 初恋の結末 ハナヅキアキ 星くずの夜 腹痛 特急列車 undoodnu ぴよぴよ 新屋鉄仙 仕立て屋 野村真理 完璧な幸福 ハナヅキアキ 偏愛ルームシェア 新屋鉄仙 さよならブルーハワイゼリー みどりの小野(id:yutoma233) 夢中・夢遊 腹痛 影絵芝居 野村真理 四千五百円の夜祭り 新屋鉄仙 ブドウ undoodnu その光をたよりに 貫洞沙織(id:keisolutions) 下記のリンク先で購入できますが、こちらは見た目を考えアフィリエイトリンクになっておりますので、アフィリエイトが嫌いな方は『なないろ ショートショート』で検索してください。 キンドル専用端
今日は札幌で自作の本を売るイベント『文学フリマ』がありました。 今回、私は売る側ではなく、買う側として参加しました。 第一印象は、熱い! です。気温がではなく、熱意です。 売る側が熱いのは当たり前かもしれませんが、買う側も気合が入っていました。お目手当の作家がいるらしく、お気に入りのブースで作家さんと楽しそうに話している方もいて、ちょっとした有名人みたいでした。 売られている本もコピー用紙をホチキス止めしたものから、しっかりと製本されていて、本屋で売られているものと変わらないものもありました。その分、お値段の方も高く、コピー用紙の本は一冊100~300円でも、しっかりと製本されたものは500円~1,500円と中々のお値段でした。例のごとく、私は即決即買なので、作家さんも「えっ? お値段見ました? 1,000円超えですよ?」と言う顔をされておりました。 いやいや、その価格、妥当なんでしょ?
小説サークル『堕楽堂(だらくどう)』を作りました。現在、私しかメンバーがいないので、自動的に私が代表となります(笑) 由来は、「人間の本性は堕落である」と主張した坂口安吾の『堕落論』から取りました。ただ、似たような団体がいくつかあったので、『落』の一文字を『楽』に変えました。落選の『落』は小説書きとして縁起も悪いですし、何事も楽しむべきであるという私の考え方から『楽』にしました。 活動内容は公募で入賞し商業出版デビューを目指すことです。メンバーは世界中に募集しますので基本的にネット経由でのやりとりとなります。活動におけるお互いの束縛はゆるゆるですが、作品に対しては辛辣な意見をぶつけ合うガチなサークルを目指します。 小説のジャンルは問いません。長編、短編、ショートショートなどの長さも、作風も気にしません。文学について熱く語ることもしません。サークルという形は取りますが、仲間というよりライバル
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『www.tessenshortshort.com』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く