片岡剛士『円のゆくえを問いなおす:実証的・歴史的にみた日本経済』ちくま新書, 筑摩書房, 2012. 為替レートや物価が日本経済に与えてきた影響と、それに対する日銀の対応策を検証するものである。内容は高度。マクロ経済学の専門用語が説明なしにバンバン出てくるので、基礎知識が要求される。気軽に読むわけにはいかないレベルの新書である。著者は『日本の失われた20年:デフレを超える経済政策に向けて』(藤原書店, 2010)で注目されたシンクタンク研究員である。 その主張を大胆にまとめてしまうと次の二つである。第一に、為替レートが実態経済に影響を与えるのであって、実態経済が為替レートに影響しているのではない(ただし、著者はそう言い切ってはおらず、いくつか留保条件をつけているのみだが、単純化すると上のようなものになる)。すなわち、日本経済が強いから円高なのではなく、円高のせいで日本経済は弱くなっていると
![新書ながらマクロ経済学の基礎知識が必要 - 29Lib 分館](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/df3a50c14b465108d37d0f484920317dd74971fb/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fu.xgoo.jp%2Fimg%2Fsns%2Fblog.png)