人気作家、米澤穂信さんの青春ミステリー「小市民」シリーズの四部作が「冬期限定ボンボンショコラ事件」(創元推理文庫)で完結した。2004年の第1作「春期限定いちごタルト事件」から20年。思春期の始まりと終わりを描いた成長小説と、巧緻(こうち)な謎解き小説が見事なまでに融合した逸品だ。 米澤さんの青春ミステリーといえば、デビュー作「氷菓」(01年)に始まる「古典部」シリーズがある。「小市民」シリーズもまた高校生が主人公だが、「ミステリーの濃度」がかなり異なるという。 「謎解きの趣向をより凝らした名探偵ものです。ただし、学園生活で探偵然として振る舞うと摩擦を引き起こしてしまう。ならば周囲との摩擦で探偵をやめてしまった元・名探偵にしてみようとの発想で書き始めました」 何かと推理をしたがるせいで中学時代に苦い経験をした小鳩常悟朗は高校入学を機に、同じような境遇にあった小佐内ゆきと、目立たずつつましい