全域が見渡せないほどに巨大化し、売り物の多様化が進んだ何でも屋。つまりは幹線道路沿いに建ったメガ・ドンキみたいになっちゃったのが現在の「日本ミステリー」というジャンルだと思います。 常連さんならいいのだけど、一見の自分には好みの作品を探すことができないよ、というあなたのために。これから毎月、6人の書評家が、自分の一押し作品をお薦めする読書ガイドをお届けします。 事前打ち合わせなし、前月に出た新刊(奥付準拠)を1人1冊ずつ挙げて書評するという方式はあの「七福神の今月の一冊」(翻訳ミステリー大賞シンジケート)と一緒。原稿の掲載が到着順というのも同じです。さあ、2021年8月はどんな作品がお薦めだったのでしょうか。(杉江松恋) 野村ななみの1冊:『影踏亭の怪談』大島清昭(東京創元社) 怪談とミステリの微妙な差異を活かしつつ、極限まで融和させた作品である。実話怪談作家の呻木叫子(本名・梅木杏子)が