ロシアがウクライナに侵攻した2月24日、金融を担当する私(記者)は慌てて円相場をチェックした。円は「比較的安全な資産」とされ、リーマン・ショックや東日本大震災など、有事のたびに買われて円高・ドル安が進むのが常だからだ。ところが今回、円相場は1ドル=115円程度でほぼ動かず、今のところ「有事の円買い」は起きていない。外国為替市場で何が起きているのか、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストに聞くと、日本経済の「残念な事情」が見えてきた。 過去の危機でも円高 まずは「有事の円買い」についておさらいしよう。世界的な金融危機の2008年のリーマン・ショック直後は、投資家が株式などリスクの高い資産から、円など比較的安全とされる資産に資金を移す動きが加速し、1ドル=110円台だった円相場が90円台まで急騰した。 11年の東日本大震災の発生後も急激に円高が進み、82円台だった円相場は数日間で7