16世紀末、イエズス会は中国への宣教師の派遣を開始し、これらの在華イエズス会士が適応政策のもと精力的に進めた中国研究の成果は、17~18世紀ヨーロッパで続々と出版され、知識人の関心を引きつけた。そして19世紀前半には、ヨーロッパで正式な学科としての中国学が創始される。従来の研究は、この17~19世紀ヨーロッパにおける中国研究を、もっぱら萌芽状態から完成へと至る直線的な過程として捉え、この間一貫して中国研究を牽引した在華イエズス会士における多元性や世代ごとの独自性については、ほとんど議論が見られない。そこで本論文では、特に研究の乏しい18世紀後半の在華イエズス会士に光をあて、彼らと同時代中国ならびにヨーロッパの各思潮との関わりが、いかにその中国研究に従来との連続と断続の両面をもたらしたのか、明らかにする。主な研究対象として、18世紀後半の在華イエズス会士のうち、最も盛んに中国について報告した