「熱海」と聞いて、首都圏に暮らす人が真っ先に連想する温泉地は静岡県熱海市だろう。どっこい、東北地方の福島県郡山市にも「磐梯熱海温泉」があるではないか。 「郷土史に詳しい方を」と熱海行政センター(市役所熱海支所)に頼み、紹介されたのは大内文一さん(69)。地元で遺跡周辺の環境美化運動などに取り組む「熱海史談会」の会長を務める。英語講師として東京都内の大手予備校に勤め、退職後に熱海町に戻って古文書や漢文解きを独学。古老の口述文である「里老伝」など資料を読み込み、約6年をかけて「熱海」の由来の推論に至ったという。 「まずは八幡太郎義家から始めましょう」。大内さんが切り出した。八幡太郎義家とは、源義家だ。父・頼義と手を携え、朝廷に逆らった奥州の豪族を討った「前九年の役」(1051~1062年)などで活躍し、後の武家政治の礎を築いた名将だ。