気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 少し前のことだが、『散歩の達人』4月号は、20周年記念企画の第一弾で、「酒場100軒」という特集だった。 そのなかに、「ライター西澤千央がすすめる清く正しい労働酒場」というのがあった。おすすめの酒場は、横浜・新子安の「市民酒蔵 諸星」だが、西澤さんの文章が、おれの興味をひいた。 本文には「京浜工業地帯の酒場で労働賛歌を聴く」の見出しがついて、その書き出しは、「私は労働者だ」で始まるのだ。 おれはうれしくなって、「おお、おれも労働者だよ」と応えた。おれはザ大衆食のサイトに、「世間では『フリーライター』といわれる不安定自由文筆労働者」と自己紹介している。 「しかし」と西澤さんは書く。「フリーランスはなかなか『労働者』の仲間に入れてもらえない」 たしかに、そうなのだ。そこで、おれが大
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 小津映画には、食事のシーンが多いのだそうだ。『小津安二郎の食卓』(貴田庄、ちくま文庫)には、そう書いてある。 おれは、あまり小津映画を見てないが、それでも、なにしろ戦後の映画の復興期成長期に育ったのだから、何本かは映画館で見ている。それで、ことによると映画のスジも題名も思い出せなくても、登場人物が何かを食べているシーンだけが、ひょっこり頭に浮かぶことがある。 その代表格が、俳優の佐田啓二がとんかつ屋でとんかつを食べるシーンと、佐分利信がみそ汁ぶっかけめしを食べるシーンだ。 この本を読むと、佐田啓二のシーンは小津の遺作となった『秋刀魚の味』(1962年)で、佐分利信のみそ汁ぶっかけめしは『お茶漬けの味』(1952年)だ。 どちらも題名に食物の名や「味」といった言葉があるが、食事の
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 はあ、今月になって、初めての更新だ。いったい何をやっていたのだろう。出かけもしたし、とにかく原稿書きだ。 なんとまあ、おれに原稿依頼なんて、何かのまちがいじゃないかと思われる超カタイところからの依頼で、それゆえ「ですます調」で書いてほしいとの注文つき。「ですます調」の鍛錬にもよい機会だと、気軽に引き受けたはよいが、やはり苦労した。いや、まだ、苦労している最中だ。いい勉強になりますなあ、ニンゲン、いくつになっても勉強だ。 しかし、やはり気分転換もしたくなる。なので、以前からやろうと思ってやれてないことのアレコレに、バラバラ手をつけた。そのうちの一つが、ザ大衆食のサイトに、文を担当した『雲のうえ』22号うどん特集を掲載すること。 掲載してみたら、以前に5号食堂特集の文を担当した、そ
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 先月のことだけど、「味の素」が国内生産を止め、海外へ移すニュースが流れた。 たとえば、朝日新聞DIGITALでは、こんな具合。 「味の素」国内生産に幕 操業1世紀、年内に海外へ 2015年5月13日10時43分 http://www.asahi.com/articles/ASH5D62TGH5DULFA03K.html 味の素は、国内で売るうまみ調味料「味の素」の生産を、年内に海外へ移す方針を明らかにした。原料の一部が高騰するなか、海外での一貫生産で燃料費や人件費を抑える。 「味の素」は、国内では1914年に操業を始めた川崎市の工場だけでつくっている。サトウキビなどから取り出した糖蜜を発酵させたグルタミン酸ナトリウムを海外の工場から輸入し、不純物を取り除く精製をしている。 この
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 2015/05/30「豚レバ刺し問題。」と2015/06/11「豚レバ刺し問題、もう一度。」は、インターネットの「闇」と「泡」な人たちに楽しんでいただけているようだ。 たいがいは、ツイッターによる「蚤のションベン」みたいなもので、予想通り。ブログのこんな短い文章すら、マットウに読めないで、すぐさま何かしら突っ込みどころを素早く見つけては、異分子叩きに走るような「キーッ」な反応で、とるにたらないもの。 しかし、お一人だけ、誠実な方がいた。 「豚レバの生食の危険は指摘されていることで、それ自体にどうのこうのはないが、リスクと禁止の措置のあいだ、それと文化の関係は、十分論議されたようには思われない」「どうもスッキリしない成り行きだった。」という、おれの文章の趣旨に、正確に応えてくださ
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 取材で北九州市を訪ねたのは、昨年10月末だった。『雲のうえ』の文を担当するのは、2007年の5号「はたらく食堂」特集以来。 今回は、『あんこの本』『京都の中華』などの著者である姜尚美(かん・さんみ)さんとおれが文を担当した。 おれは、特集前半を、うどんから見た北九州という感じの紀行文にしてほしいという注文だったので、そのように書いた。タイトルは「うどんと煙突」。 姜さんは、特集後半を「北九州うどん七不思議」のタイトルで書いている。北九うどんと店の独特の個性を丹念に追いかけ、姜さんらしいゆきとどいた筆致で掘り下げている。 ほかに、コラムを、編集委員のつるやももこさんが。巻頭コラムは「製麺所の母」、本文中コラムは、小倉には「焼きうどん発祥の店」というのがあるのだけど、「ああ、思い出
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 先日、ツイッターで「銀座三州屋。旬のカキフライの幸福感。ソースさらりと掛けて頬張ると、その食感はサクサクぶりん。カキから旨味がジュッと滲み出て口の中にたっぷり広がり、最後にふわりと磯の香が残る。美味い。」というツイートを見つけ、思わず笑った。 とにかく、面白いのだ。 これだけの文章のなかに、擬音語や擬態語など、いわゆるオノマトペといわれれる語彙が、「さらり」「サクサク」「ぷりん」「ジュッ」「ふわり」。「たっぷり」は一般語との中間ともいわれるが、この場合は擬態語に近い使い方だろう。 これらの語彙を省いてしまうと、「その食感は」通じなくなり、「ソース掛けて頬張ると、カキから旨味が滲み出て口の中に広がり、最後に磯の香が残る」というぐあいになる。 オノマトペには、ひとを気持よくさせ酔わ
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 最近のニュースにあったが、イオンの完全子会社になったダイエーは、ついに上場を廃止、店名も消えることになった。 中内功が「主婦の店ダイエー薬局」(ダイエー1号店)を立ち上げたのは、1957年のことで、それからダイエーと中内功は、当時の「流通革命」の先駆、旗手として注目をあびた。 この流通革命を担った店舗は、一般に「スーパーマーケット」として認識されているけど、その中核となるノウハウは、「チェーンオペレーション」と「セルフ・サービス」だった。 そして、セルフ・サービスということなら、青山の「紀ノ国屋」がダイエーより早く、1953年に導入していた。 紀ノ国屋のサイトの「紀ノ国屋の歴史」によると、「紀ノ国屋は1910年(明治43年)、青山の地で、果物商としてスタート」、1953年には「
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 まとまりのない考え事のメモ。 最近のゼンショー「すき家」第三者委員会の報告と話題は、直接的には「ブラック」といわれたりする「過酷労働」の問題だけど、理想主義的ともいえる品質追求についても一部では問題にされていて、これまであまり批判されることなく正しいとされてきた「品質主義」を考え直すよい機会のような気がしている。 飲食サービスやスーパーの経営者は、儲け主義の強欲者が多いように見られがちだけど、よりよい生活のために真摯に品質を追求している経営者も少なくない。おれが仕事で付き合ってきた経営者などは「真摯な商売」なんかアタリマエという感じがほとんどだった。A商品を置けばもっと儲かるのに、地域のためにはよくないとやめたり、惣菜の開発で、この値段ならこの味で妥当というセンにいっているのに
気どるな、力強くめしをくえ!「大衆食堂の詩人」といわれた、後期高齢ステージ4癌男、エンテツこと遠藤哲夫のブログ。 2014/07/10「「東京風」の味って、どんなものか。」の関連になるが、「東京で売れる味」という評価の仕方はある。 おれが文を担当した、北九州市の『雲のうえ』5号「食堂特集」には、あるうどん屋について、こういう記述がある。 「うどんだけでも「名物」といえる存在だ。すでに「有名店」になりそうな気配もある。だけどあるじは「うちのポリシーは崩したくない」と言う」 これは少々もったいぶった表現で、これでは「「有名店」になりそうな気配」については、読者にはよくわからないだろうと思いながら書き、凄腕の編集さんのチェックもパスして生き残った。 どういうことかというと、このときは、ロケハンで50店ほど訪ね、最終的にその半分ぐらいを取材し掲載したのだが、ロケハンで初めてそのうどん屋で食べたとき
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