掛川駅を過ぎ、天竜川を渡った東海道新幹線は、右手に浜松アクトタワーを見て浜松駅に差しかかる。「のぞみ」に乗ると、列車は少しだけ減速して左にカーブし、ホームを過ぎたところで今度は右にカーブする。車体がグーンと傾き、思わず足に力が入る瞬間だ。 東海道新幹線の曲線は、首都圏などの例外を除き、原則半径2500m以上と決められている。これは、線路の曲線部分を円周に見立てた場合の半径で、昭和30年代の建設時に、将来の時速250km運転を想定して決められた。技術が進歩した今は、最新車両のN700Aなら時速285kmで通過できる。 さて、浜松駅手前の左カーブは半径2200m。日本坂トンネル付近から断続的に最高速度で運転してきた「のぞみ」は、ここで時速220km前後に減速する。続く右カーブは半径2500m。このS字カーブには、東海道新幹線建設時の苦労が詰まっている。 浜松駅は通らない予定だった