5月の末日、知り合いが亡くなったという。その2日後に知った。死の状況とか何時ごろ息を引き取ったかといった詳しいことはわからない。聞いて回る努力もしていない。だが、彼の死の数時間前、31日午前一時半か二時ごろに、おそらくは彼の最後になったであろう電話を、ぼくは受けた。 「もう…死にたい…」「え?電話でそんなこと言われてもどうしようもないやん」「薬も効かへんし…」「いったい、どないしたん?」「……(プツン)」――いつになく、短い電話だった。この電話と彼の死とが、どこでどうつながっているのか、つながっていないのか、それはわからない。わからないながらも、もう少し長く話を続ける努力はできたのではなかったかという想いは残る。まさか、こんなことになろうとは思ってもみなかった。前日の29日(から30日にかけて)には、いつものように二時間ばかりの長電話がかかってきていたのだから。 彼の名をここでは「Hくん