→紀伊國屋書店で購入 「中世都市の自律性」 やがて『無縁・公界・楽』の考察につながる網野の中世都市論の集成だが、日本の戦後の歴史学の全体を展望するにも役立つ一冊である。網野は中世都市論について、戦後の歴史学界に主として二つの潮流があったことを指摘している。 一つは西欧の中世都市との比較において、日本の中世都市を考察しようとするものであり、マルクス主義的な歴史学を含めて、日本の発展の「遅れ」や「歪み」を指摘するという傾向が顕著なものである。もちろんこうした比較論は、単に日本の特殊性を指摘するだけではなく、日本の社会にたいする批判のまなざしを含むという「功績」をそなえていたのはたしかである。 都市論においてはとくに、鎌倉期を中心する中世前記の都市は、「自給自足的な農村を基礎とする農工商未分化な社会であり、京・鎌倉などの都市は、当時の社会経済構造のなかでは補足的・従属的な意味しかもたない。それら