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2022年11月30日にOpenAIからChatGPTが公開されてから、明くる2023年は生成AIが大いに話題となった1年だった。テック業界では「AIの民主化」と言祝がれる一方、ホワイトカラーの職が失われるのではないかという「AI脅威論」も大いに話題となった。本特集では、多くのデジタル・テクノロジーの重要人物と親交を結び、国内に紹介してきたジャーナリスト服部桂氏を迎え、人類とテクノロジーという幅広い視座からデジタル・テクノロジーを眺望する。 取材:2023年10月26日 トリプルアイズ本社会議室にて 服部 桂(はっとり かつら) 1951年生まれ。早稲田大学理工学部で修士取得後、1978年に朝日新聞社に入社。1984年にAT&T通信ベンチャーに出向。1987年から1989年まで、MITメディアラボ客員研究員。科学部記者や雑誌編集者を経て2016年に定年退職。関西大学客員教授。早稲田大学、女
前回は量子コンピューター、前々回はメタバースをテーマにしてきた。それぞれのテーマが行き着くところはある種の宗教性、魔術性である。おそらくAIについての議論もそうだろう。先端テクノロジーの極地へは神のごとき存在を避けて進めないようだ。 目次 ニーチェと神の死 フーコーと人間の死 ウェーバーと脱魔術化 ラプラスの悪魔が示す神 多世界解釈と人間存在 ニーチェと神の死 哲学者のフリードリヒ・ニーチェが「神は死んだ」と述べたのは『ツァラトゥストラはこう言った』上下(氷上英廣訳/岩波文庫)のなかでのことだ。19世紀の終わり、第二次産業革命が進行するなかで、いよいよ近代化、産業化が世界に広がっており、それまでの神を中心とした世界像が成り立たなくなっていた。神といっても、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教というアブラハムの宗教における唯一神を指す。神が統べるこの世界は絶対普遍の真理に貫かれていることがすべて
昨年、経済産業省から2025 年までのECサイトにおける認証厳格化がアナウンスされ、2023 年 3 月には独立行政法人情報処理推進機構(IPA)より、必要となるセキュリティ対策と実践方法をとりまとめた「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」が公布された。これを受けて、流出や紛失の可能性があるパスワード認証に代わり、業界標準になるとみられる生体認証などを軸としたFIDO(Fast IDentity Online)認証も普及に向けて新たなフェーズに入った。今回は、業界をリードしてきたFIDO Japan WG座長の森山光一氏と室蘭工業大学の岸上順一氏に、来るパスワードレス社会について展望していただいた。 2023年2月24日 オンラインにて取材 森山 光一(もりやま こういち) 株式会社NTTドコモ チーフ セキュリティ アーキテクト 経営企画部セキュリティイノベーション統括担当 コ
前回の記事で私は「言葉を得ること、文体を得ることが私たちの生き方をすこしだけ救ってくれるのではないかと考えている。」と述べた。同時にとりあげたショーペンハウアーも「文体は精神のもつ顔つきである。」と述べている。文体を得ることは思索することなのか? 目次 文体を持たないお説教について 本を読まない功罪 心は何を汚染するか? 神々を代替する意志 純粋に自ら示唆するということ 文体を持たないお説教について ショーペンハウアーの『読書について』(斎藤忍随訳/岩波文庫)をとりあげたのも前回であった。あれだけでは不十分の感が拭えないのでちょっと補っておきたい。ショーペンハウアーは同書で必ずしも読書そのものを否定しているのではない。ここはよく誤解されている点だ。 勘違いして「100冊の読書は1日の経験に如かず」というような経営者が出てきたりする。曰く「本ばっかり読んでないで行動しろ! 頭でっかちは仕事で
ジェイン・ジェイコブズが生活者の立場から著した都市論『アメリカ大都市の死と生』(山形浩生訳/鹿島出版会)刊行から約 60 年。私たちは都市を手にする糸口をつかめているだろうか。専門家の経験則や直感により工学的になされてきた都市計画やまちづくりの分野に、データサイエンスの立場からアプローチする吉村有司氏に聞いた。サイエンスとして捉えた都市の実像を明らかにし、市民由来のまちづくりを実現する、現在の都市への希望とは。 2022 年 12 月 13 日 オンラインにて 吉村 有司(よしむら ゆうじ) 東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授 愛知県生まれ、建築家。2001年よりスペインに渡る。ポンペウ・ファブラ大学情報通信工学部博士課程修了(Ph.D. in Computer Science)。バルセロナ都市生態学庁、マサチューセッツ工科大学研究員などを経て2019年より現職。ルーヴル美術館
岸田内閣が先端テクノロジー分野を明確に国家戦略に位置づけると発表したのは3月のことである。「新しい資本主義実現会議」で策定されまとめられた実行計画には先端テクノロジーとして5つの分野を重点化している。そのなかで私の目を引いたのはAIと量子技術だった。 目次 量子力学の成立に潜む思想的な対立 「神」か「なんでもあり」か 歴史は「神」のものではない 知的な対立がもたらす多様な可能性 AIが意識をもつとき、合理性が人を支配する 量子力学の成立に潜む思想的な対立 前回の記事の最後で、ペンローズの量子脳について触れた。イギリスの数理物理学者であり科学哲学者でもあるロジャー・ペンローズは人間の意識、脳の働きとは量子力学の知見によっていずれ解き明かされる。物理学のロジックで人間の心を論じることができるようになると言う。人の脳の仕組み、意識や感情も未来には数式化できるということだ。 これに対し、ロジャー・
将来、人とAIはどのような共存関係を築いていけばいいのだろうか。AIが人間のトップ棋士を凌駕して数年が経つが、むしろ将棋という競技は以前にも増してファン層を増やしている。そこにAIと人間のあるべき関係の先行例を見出すことは可能だろう。 2021年11月18日 株式会社トリプルアイズ本社ビルにて 谷合 廣紀(たにあい ひろき) 1994年生まれ。棋士(四段)。東京都出身。東京大学工学部電気電子工学科を卒業、同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程に在籍中。自動運転ベンチャー「ティアフォー」のエンジニアとしても勤務している。2006年に新進棋士奨励会に6級で入会。2011年9月に三段に昇段し、2020年4月1日付で四段昇段・棋士となる。 著書に『Pythonで理解する統計解析の基礎』(技術評論社)がある。 【目次】 日本は計算資源の多寡が影響しない分野で戦えば勝算がある 棋士はAIソフ
量子コンピューターをはじめとする量子情報技術において、これまでの回で詳しく解説してきた「重ね合わせ状態」と並ぶ重要な概念がある。それが「量子もつれ」である。量子もつれは、量子絡み合い、量子エンタングルメント、EPR相関などとも呼ばれている。量子もつれは、2つ以上のミクロな粒子の間に生じる、ある種の結びつきのことで、かのアインシュタインが「あり得ない」と考えた、非常に奇妙な現象である。さらに近年では、量子もつれがこの世界の成り立ちにも深く関わっている可能性が、理論物理学者の間で真剣に議論されるようになっている。私たちが住んでいるこの3次元空間は、量子もつれが生み出した幻かもしれないというのだ。 執筆者プロフィール 科学ライター・編集者。大学では応用物理学を専攻。20年以上にわたり、科学全般について取材してきた。特に興味のある分野は物理学、宇宙、生命の起源、意識など。 目次 量子もつれは、左右
個人中心型IDでデジタル空間のユーザー体験はどのように向上するのか。デジタルIDは個人と企業の二つのレベルで課題をどのように解決していくのか。また自身の描く将来像についても伺った。アイデンティティに対する考え方を変えることで見えてくるのは、人々の幸福だった。 取材:2021年11月19日 オンラインにて 安田クリスチーナ パリ政治学院首席卒業。在学中の2016年に米NGO「InternetBar.org Institute」で電子身分証明書事業を立ち上げる。2019年にバングラデシュで米NGOとパイロットプロジェクトを実施し、2020年はザンビアでデジタル技術で途上国の支援活動をするNGOを創業。2017年にアクセンチュアに入社。2019年にマイクロソフト・コーポレーションに転職。アイデンティティ規格アーキテクトとして主に分散型IDと既存IDのシステムをつなぐための規格を担当。2021年6
三浦一紀 映画、テレビドラマを原作物やリメイクが占めるようになったのはいつからか。ネタ探しの触手は当然のようにインターネットにも伸びる。そこに小さなほころびが見えているようだ。 脚本家北川悦吏子がT w i t t e r で炎上 2010年4月から、木曜夜10時にフジテレビで放送されているテレビドラマ「素直になれなくて」。このドラマは、日本初のTwitter をテーマにしたドラマということで、放送前からTwitter ユーザーの間で話題になっていた。原作と脚本を担当したのは、ヒットメーカーの北川悦吏子。出演は瑛太や上野樹里、玉山鉄二などが揃っている。 筆者はドラマに疎く(というかテレビ全般あまり見ない)、瑛太や玉山鉄二がどれほどの俳優なのかはあまりピンとこない。上野樹里は「のだめカンタービレ」で人気が出た女優であるということはわかる。その程度の知識しか持ち合わせていないのだが、Twitt
米マイクロソフト社で分散型IDの開発に携わる傍ら、デジタル技術で周辺国支援を行うNGO「Internet Bar Organization Zambia」を設立した安田クリスチーナ氏に、よりセキュアでスムーズな個人認証が実現するパラダムシフトについて伺った。 グローバルIT企業だからできること、NGOでしかできないこと。2つがリンクするパラレルワーカーの視点で未来を語ってもらった。 取材:2021年11月19日 オンラインにて 安田クリスチーナ パリ政治学院首席卒業。在学中の2016年に米NGO「InternetBar.org Institute」で電子身分証明書事業を立ち上げる。2019年にバングラデシュで米NGOとパイロットプロジェクトを実施し、2020年はザンビアでデジタル技術で途上国の支援活動をするNGOを創業。2017年にアクセンチュアに入社。2019年にマイクロソフト・コーポレ
前回は、JR東日本の監視カメラ問題から、失敗を総括できない日本社会の問題点やインフラ視点を欠いた日本社会のあり方について論じてもらった。後半は、否応なくサイバー社会に移行していくなかで、GAFAMに依存しない信頼性のあるデータ流通インフラの重要性や、キャピタル(資本)としてのデジタルアイデンティティーの重要性、ことに産業への影響力について語り合ってもらった。 2021年9月21日 オンラインにて 崎村 夏彦/Natsuhiko Sakimura NATコンサルティング代表、東京デジタルアイディアーズ主席研究員。米国OpenID Foundation理事長を2011年より、MyData Japan理事長を2019年より務める。Digital Identityおよびプライバシー関連技術の国際標準化を専門としており、現在世界で30億人以上に使われている、JWT, JWS, OAuth PKCE,
JR東日本の監視カメラ問題で露呈した「総括しない日本」 ーー崎村夏彦×クロサカタツヤ デジタルアイデンティティー対談(1) これまで「IT批評」では、デジタルアイデンティティーをサイバービジネスの本質と捉え、アイデンティティー・マネジメントやデジタル庁の動きなどについてレポートしてきた。本稿では、デジタルアイデンティティー及びプライバシー関連技術の国際標準化を専門としデジタルアイデンティティーの第一人者である崎村夏彦氏と、総務省、経済産業省、OECD(経済協力開発機構)などの委員を務めるクロサカタツヤ氏を迎え、デジタルアイデンティティーをめぐる日本の行政、企業の課題について語ってもらった。 2021年9月21日 オンラインにて 崎村 夏彦/Natsuhiko Sakimura NATコンサルティング代表、東京デジタルアイディアーズ主席研究員。米国OpenID Foundation理事長を2
目次 本当は脆弱な日本のアイデンティティー・ドキュメント 日本社会はアイデンティティー証明に関する歴史が浅い ID管理における脱GAFAが次のデジタルテクノロジーのパラダイム 日本でも始まった新しいアイデンティティー・マネジメントの議論 本人確認を制度化することの難しさ 日本でアイデンティティー・マネジメントを担っていく主体とは サービス開発とアイデンティティー・マネジメントを紐づけて考える 本当は脆弱な日本のアイデンティティー・ドキュメント アイデンティティー・マネジメントに明るいセキュリティの専門家の間では割と知られているのですが、日本のアイデンティティー・ドキュメントは、運転免許証も含めて実在しない人間でもつくることが可能であると言われています。 役所の人は私のことをクロサカであるとは知りようがないので、私がクロサカであることを何によって証明するかというと、運転免許証のようなフォトI
GAFAに代表されるインターネット企業が隆盛を迎えた2010年代、次のビジネスの資源として注目を浴びたのはビッグデータであった。膨大なアカウント数とそれにともなう巨大なデータによってITサービスの利便性が向上し、市場支配の原動力になると目されたからだ。当然、日本のITサービスもこぞってビッグデータ獲得に躍起になった。ところが、GAFAとの差は広がるばかり。その決定的な違いはなにか? ヒントとなるのが「アイデンティティー・マネジメント」だ。彼我の差は、アイデンティティー・マネジメントに対する思想的ともいえる認識の違いにある。 今後、IT批評でもこの問題について深めていくことになるだろう。 今回は入門編としてクロサカ タツヤ氏にアイデンティティー・マネジメントをめぐる世界の状況と日本の課題について解説してもらった。 目次 IDの重要度に関して理解が進んでいない日本の社会 デジタルサービスが普及
松原仁氏は、1970年代からAI(人工知能)を研究してきた日本のトップランナーである。高度経済成長期にさしかかる日本で、AI 研究者はどういうポジションにあったのか。長い冬の時代の間、いったいどういった思いがAI 研究の道を導いてきたのだろうか。生い立ちから一貫してみえてくるのは、人の心への関心だった。鉄腕アトムの天馬博士に憧れた少年は、いつAIに出会い研究を始めたのか。その歩みはそのまま日本のAIの歴史となっている。 松原 仁(まつばら ひとし) 1959年、東京生まれ。86年、東京大学大学院情報工学博士課程修了。同年、通産省工業技術院電子技術総合研究所(電総研、現在の産業技術総合研究所)入所。現在、東京大学次世代知能科学研究センター(AIセンター)教授、はこだて未来大学特任教授。ロボカップ日本委員会会長、観光情報学会長、人工知能学会長などを歴任。将棋はアマ5段。著書に『AIに心は宿るの
目次 EU(欧州連合)のAI利用規制案をどう読むのか 言葉は同じでも中身が違っていた「人権」 コロナが露わにした各国の人権意識の差 コロナ対応では公益志向が発現しなかった日本 ザル法にならざるを得なかったEUのAI規制案 AI利用とプライバシーについて正面から議論するべき時期に来ている 社会課題を解決できないテクノロジーは消えていく EU(欧州連合)のAI利用規制案をどう読むのか EU(欧州連合)がAIの利用に関する規制案を公表したというニュースは日本でも大きく取り上げられました。監視社会につながる懸念から世界で議論になっている、公共空間で顔認証システムを使った捜査を制限する案です。この規制案によって、市民の権利侵害を防ぎ、企業のAI研究と利用に関するルールづくりで先鞭をつけるという狙いがあります。 EU行政府の欧州委員会はこの規制案の中で、AI利用がもたらすリスクを4段階に分類しており、
目次 AI時代に求められるSTEAM人材とはーーアートで養われる「問う力」 コロナ禍、AIが英論文やプログラムを書く時代が到来 STEMの学びは、テクノロジー社会到来が招いた必然 半歩先のAI時代に備えるのであれば、Aを加えたSTEAMこそが重要 AIの広がりで、人にはより人間らしさが求められる時代に コロナ禍、AIが英論文やプログラムを書く時代が到来 COVID-19の感染が世界に広がりつつあった2020年の夏、GPT-3(Generative Pre-trained Transformer 3)と呼ばれる英文を正確に理解するAI技術(正確には機械学習モデル)が大きな注目を集めていた。 「ユニコーンの群れを発見した」という荒唐無稽の文を読ませ、続きを書かせるテストでも、そのユニコーンは別の次元からやってきたであるとか、インカ族がこのユニコーンを自らの祖先と信じているといった荒唐無稽ながら
清家竜介 あたかも第2次世界大戦前夜を想起されるかのような、時代のうねりが見え隠れする2014年――。 果たして、高度に発達した資本主義社会が世界を歪ませているのか? そして、この情報通信技術の発達は、古い社会を排除しようとしているのだろうか? それともまったく新しい社会を準備している途上なのだろうか? その途上ゆえに、さまざま軋みが世界各地の生じているのか? ヴァルター・ベンヤミンのメディア論から、消費社会の変容を論じる。 本稿は、資本主義経済の構造転換とメディアとの関わりを歴史的に辿りつつ、現代における消費社会の機能不全と〈共(コモン)〉の復権を論じるものである。その際、ヴァルター・ベンヤミンのメディア論を基礎にする。 貨幣と美の交わり 1933年の1月、ヒトラーが、ワイマール共和国の首相に就任した。同年の3月にナチスから逃れパリへと脱出したヴァルター・ベンヤミンは、パリの国立図書館を
清家竜介 あたかも第2次世界大戦前夜を想起されるかのような、時代のうねりが見え隠れする2014年――。 果たして、高度に発達した資本主義社会が世界を歪ませているのか? そして、この情報通信技術の発達は、古い社会を排除しようとしているのだろうか? それともまったく新しい社会を準備している途上なのだろうか? その途上ゆえに、さまざま軋みが世界各地の生じているのか? ヴァルター・ベンヤミンのメディア論から、消費社会の変容を論じる。 第1回はこちら。 知覚の学としてのメディア論と複製技術 ベンヤミンは、パリの亡命生活の中で、未完の著書『パサージュ論』を準備する傍に「複製技術時代の芸術作品」という重要なメディア論の古典を執筆している。ベンヤミンは、その中で以下のように述べている。 「人間の集団の存在様式が総体的に変化するにつれて、人間の知覚の在り方も変わる。人間の知覚が組織されている在り方│知覚を生
アパレル系ECサイトが示すユーザーコミュニケーションの意味〜ヤングレディース向けブランド、サルースの取り組み 編集部 加速度的なコモディティ化と、それにともなう価格競争が激化するファストファッションの世界で、ECサイトはどのような意味を持ちうるのか、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーズに輝いたサルースの例から探る。 コミュニケーションの重要性 ただでさえ商品のコモディティ化のスピードの早いアパレル業界、そしてサービスの差別化の見せにくいECサイトにおいて、現在では、おびただしいほどの数のブランドがしのぎを削っている。 アパレルECサイトの戦略の根本にあるのも、他業種と同様、消費者とどのようなコミュニケーションを確立させるかである。しかし、ブランドのストーリーが重視されるファッション、アパレル業界でならではのコミュニケーションスタイルがあり、その確立は他業種以上に困難であることもまた事実である。
荒川祐二 音楽ビジネスを取り巻く状況が大きな変化を迎えている。象徴的なのが数々のソーシャルメディアが舞台となった衝突や行き違い、そしてソーシャルに適応したビジネスを模索するアーティストたちの動きだ。 音楽ビジネスが大きな変動を迎えている 90年代の後半に、かつてないほどのメガヒットが多発して、音楽ビジネスはその規模を拡大し続けるかのような錯覚を覚えた。しかし、21世紀を迎える頃には音楽ソフトの売上げ下落が目に見えて明らかになった。その原因についての分析は本稿の対象ではないが、ユーザーによるコピーや無許可のダウンロードサイト、P2Pによるファイル交換など、多くのイリーガルな要因が業界によってやり玉に上げられた。違法なダウンロードサイト運営者の逮捕や、P2Pサービスの事業者が損害賠償で訴えられるなど、業界と当局による積極的な対策が続いている。 しかし一方では、そもそも人々が音楽を聴かなくなって
池田紀行・池田勇人 独自ともいえる進化を遂げてきた日本のSNS。人間関係の文化性を乗り越えてFacebook は日本でもソーシャルメディアを制すのか。「ソーシャルグラフ・プラットフォーム」の視点で、SNSの将来を読み解く。 ソーシャルメディアが変えた人々の人間関係 「ソーシャルメディア」という単語が世間をにぎわせています。これをお読みになっている読者も、書籍や人づてに聞いたことがあると思います。ご自身で積極的に利用されている方もいるかも知れません。 ツイッター、ブログ、Facebook……そもそも「ソーシャルメディア」とは何なのでしょうか。この問いは「マーケティングとは何か」「ウェブとは何か」といった問いと同じように、明確な答えのないものです。 様々な視点から答えを出すことができますが、一人のユーザーとして「ソーシャルメディア」を見た時には、ソーシャルメディアは「人々の人間関係の維持・構築
深川孝行 IT分野における覇権を賭したアメリカと中国との「水面下での戦い」が激しさを増している。「米中IT冷戦」とも呼ぶべきせめぎ合いは、もちろんアメリカの同盟国・日本にとっても無縁ではない。「米中IT冷戦」の最前線を追う。 両国の確執が露呈した「グーグル問題」 2010年1月に勃発した「グーグルと中国との対立問題」。グーグルは自社を含め、20社以上のアメリカ企業が中国当局のサイバー攻撃を受けていると猛烈に批判、これまで甘んじてきた検索結果に対する検閲を拒否したため、中国はグーグルの国内アクセスを遮断、外交問題にまで発展した。当時のクリントン米国務長官は中国側の行為を人権侵害と強い口調で非難、両国に横たわる「IT冷戦」の構図が一気に表面化した格好となった。 グーグルはその後中国本土での検索サービスから撤退、根拠を香港に移して本土向けの中国語サービスを維持する戦術に出る。また2012年に入る
林 信行 プラットフォームを制した者だけが時代の覇者となる。主戦場を次々にかえながら、覇者がめまぐるしく交代し続けるデジタルプラットフォームの世界。しかし、覇者の座を常に狙える企業はいくつかしかない。 激戦のデジタルプラットフォーム アップル社は、1984年に発表した初代MacintoshのOS(Mac OS)で、今日のパソコンの原型をつくった。マウスを使ってアイコンやメニューをクリックするスタイルをビジネス用ではない一般向けパソコンで真っ先に採用したのだ。しかし、その革命を、より多くの人々に広げたのは11年後に登場したマイクロソフト社のWindows95だった。 アップルは一度、潰れかかるが、その後、共同創業者、スティーブ・ジョブズが舞い戻り指揮を執り始めるとすぐにヒット作、iMacを発表し、そこから快進撃を始める。 2007年には新時代のスマートフォン、iPhoneを発表し、マイクロソ
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