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円安とは
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「いつも“見えない世界”への疑問や好奇心が根源にあります。」 妖精の物語が紡がれてきた地で、石は HiddenWorld “見えない世界”への入口だと聞いた。ポーラ美術振興財団の助成を受けアイスランドでの研修を終えた青木美歌は、現在日本橋髙島屋にて帰国後初となる個展「前触れの石」を開催中だ。 ガラスを選んだのは、武蔵野美術大学工業工芸デザイン学科1年の時。「何より透明なところが好きです。そこに“ある”のに“ない”様に感じることを不思議に思います。」 青木がガラスに注ぐその視線は、制作モチーフにも通底する。2年前の個展「あなたに続く森」では植物のライフサイクルをモチーフに、目に映らない生命の有りようを表現した。無機物ながら有機的な造形美を湛える繊細なガラス作品、それを彩る光と影、生死をめぐる命の環の輝きは鑑賞者の心を深く捉え、青木の飛躍に大きな一翼を担った。 その後、約1年半の時を過ごしたア
あはれとおかしが身を包み シャネルの紋が白に映える、華美な甲冑に身を包む侍の像。どこか疲れた面持ちながら凄みの利いた鋭い眼差しは、まさに乱世を生き抜く強者のそれだ。キャプションによると「紗練家(しゃねるけ)というのは紗練常陸介隆昌(しゃねるひたちのすけたかまさ)を開祖とする一門で、戦での武功を認められ、紗練姓と紋の使用が認められた」という―。そう、これは全く架空の物。野口哲哉が作品から考えられる可能性の一つを文章化したセルフキャプションである。 「歴史少年がそのまま成長してしまった」と笑う野口は、合成樹脂や化学繊維、アクリルなどを素材に、現代カルチャーやSFを絶妙に織り交ぜた武人像や武者絵を制作する。「作品が過去や現在を行き来するのも、でっち上げや悪ふざけがしたいわけではなく、固定概念に囚われず、今も昔も変わらない人間の姿を追求したいから。冗談を交えても誠意を忘れなければ、きっと真面目な話
Art Annual online/アートアニュアルオンラインは美術専門出版社〈美術年鑑社〉が運営する美術情報のポータルサイトです。日本画、洋画、彫刻、工芸、書、現代アートまでの幅広いニュース、美術館・ギャラリー(画廊)の展覧会、そして美術
「表現の不自由」報告会のDM。画像はカリフォルニアにある《平和の少女》像のまわりで《忘却への抵抗》をパフォーマンスする明日少女隊 Photo © Nanyi Jiang 8月1日オープンの「あいちトリエンナーレ」に出品されていた「表現の不自由展・その後」が二日後に閉鎖された事件は、5日にはNYタイムズ紙の記事になり、CIMAM(国際美術館会議)の「美術館ウォッチ委員会」が声明を出して「甚大な関心」を表明するなど、国際的にも注目を集めている。 そもそも過去に検閲された、あるいは検閲的状況にさらされた作品を集めた展観が閉鎖されて、二重に表現の不自由が立ちあらわれた。大型国際展であること、また日韓関係が緊迫していることも注目の要因だ。 「あいトリ」HP や Art iT のニュース(ともにバイリンガル)や美術手帖オンライン版では事件の進展や声明などが刻々と報道されていて、関心の高さがうかがえる。
ナチス略奪の絵画1500点見つかる ピカソなど1千億円超 所有者のグルリット氏は「正統に相続」と返還を拒否 昨秋、ドイツ南部のミュンヘンやオーストリアでナチス・ドイツがユダヤ人らから略奪した絵画など約1400点が見つかり、20世紀絵画のピカソ、マチス、ルノワール、シャガールらの作品が含まれている、と報じられた。週刊誌フォークスが伝えるところでは総額約10億ユーロ(約1300億円)の価値ともいう。南ドイツ新聞では、その中にカタログ・レゾネから判明した「松方コレクション」の名が登場、流失したエドゥアール・マネの作品のたどった意外な経路がわかった。 共同電によると、2013年11月現地検察当局が記者会見し、ピカソやマチスらの巨匠を含む20世紀絵画計1406点がミュンヘンで見つかったと発表、保存状態は良好で専門家の鑑定により真作と判断された。当初それらは50年以上もうす暗い部屋に隠してあったが、2
脳科学研究者にして、日府展などで活躍する洋画家・塚田稔。その11回目の個展が、6月29日より青山のGallery Concept 21で開催される。 塚田は1941年長野県生まれ、現在日府展洋画部理事、玉川大学脳科学研究所名誉教授。「芸術は人間の創造物であり、人生を如何に生きるかの表現である」という思いから、60年余り制作を続けてきた。幼い頃は父に連れられ信州の山々や自然を描き、教授となってからは、研究生活の傍ら1年毎の「心の創造の履歴」を150号の絵にして発表。日府展への出品は30年にわたり、98年には日府賞を、2003年には東京新聞賞を受賞するなど様々な活躍を見せる。 2015年には、ブルーバックス講談社より『芸術脳の科学』を刊行。脳研究の視点から「絵を見るときの思考」、そして「画家が描く時の思考」を解き明かしており、「脳は見たものの特徴を抽出する働きを持つため、絵画における輪郭線はす
ベレー帽と、胸に躍る〝シドロモドロ〟の文字――昨秋、日本橋三越本店の厳粛な空間でユーモラスな作品に劣らず異彩を放っていたのが、南青山に「シドロモドロお彫刻教室」を開く彫刻家・田島享央己だった。 田島は仏師の流れを汲む彫刻一家の五代目。初めて鑿を握ったのは0歳の時、そう言って過言ではない環境で、好奇心旺盛に育った。「プロレスラーやエッセイスト、ロックンローラーになりたかった。」と笑いながら話す田島だが、幼稚園の文集に記した将来の夢はその時既に彫刻家だった。 田島の作品はマリオネットから造形美術、シリアスなファインアートと実にさまざまだが、なかでも人気を博するのが〝ピエタシリーズ〟に代表される、動物の木彫。ピエタとは磔刑に処され息絶えたイエス・キリストと、その亡骸を抱く母マリアを主題とする聖母子像の一つ。傑作と名高いミケランジェロのピエタに魅了され自らも制作したそれは、どこか哀愁を漂わせながら
今年4月、東京都選定歴史建造物に選定された上野・旧博物館動物園駅の一般公開に合わせ、期間限定のインスタレーション作品「アナウサギを追いかけて」が公開されている。 本企画は上野文化の杜新構想実行委員会とアーツカウンシル東京が主催する、社会包摂をテーマにしたプロジェクト「UENOYES(ウエノイエス)」の一環として立ち上げられた。同駅は1933年12月京成電鉄の駅として開業。以降、東京国立博物館や恩賜上野動物園の最寄り駅として利用されたが、1997年営業休止、2004年廃止となった。 京成電鉄と東京藝術大学の協働のもと実現した今回の改修と公開。西洋風の駅舎には東京藝大美術学部長・日比野克彦氏デザインの出入口扉も新設された。 展示作品は上野のリサーチを基に書き下した物語を読み解きながら鑑賞するインスタレーションで、演出・羊屋白玉氏、美術・サカタアキコ氏による共作。また、国立科学博物館研究員・森健
銅版画の制作は、版に「傷」をつける行為だ。村上早(むらかみ・さき)はその傷に、トラウマ、つまり「心の傷」を重ねる。インクは黒色の血。それを刷り取る紙は柔らかなガーゼ。版を削り修正することは出来ても、一度ついた傷は決して完全には消えない。 幼少期にある傷を負った。生まれつきの心臓奇形で、4歳の時に生死をわける手術を経験。苦痛とともに「病室に一人だった印象」が忘れられない。夜眠ることは擬似死のようで、今も少し怖い。 絵を描くことで救われてきた。時が経ったからこそ笑って話せるが、学校では勉強も運動もぱっとせず、唯一褒められたのは絵。「美術にすがるように生きてきました」。 武蔵野美術大学への進学で銅版画と出合い、高浜利也に学ぶ。選んだ技法は、ポスターカラーで描いた線をそのまま腐蝕するリフトグランドだ。試し刷りの後に版を削って修正。消えない痕跡が、画面に透明な層をつくる。「身近な人の話からも感じるの
金敷駸房「槐多の瀧(部分)」2014年 作家蔵 Kanashiki Shinbo Kaita Paperfall(detail) 2014 Collection of Artist 昨年より開始した「上野アーティストプロジェクト」の第二弾が公募展のふるさと、東京都美術館にて開催される。今回は「書の鑑賞」をテーマに、書の公募団体に所属する作家をテーマ別に紹介。初めて現代の書に触れる人間でも楽しめるよう、作家の言葉なども添えてその魅力を発信する。 出品作家6名は秋山和也(謙慎書道会)、大橋洋之(謙慎書道会)、金敷駸房(創玄書道会)、菊山武士(産経国際書会)、鈴木響泉(朝聞書会)、千葉蒼玄(書道芸術院)の面々。 「公募団体展の懐の深さ、作家ひとりひとりの世界観を楽しんでいただければ幸いです。会場と作品の相乗効果を体感してください。」 と語る担当学芸員の田村麗恵氏は、多様な書のありようを呈するこ
人形師の長男として長野県松本市に生を受けた太田南海(おおた・なんかい/1888~1959)は17歳で木彫家・米原雲海に入門。当時は日本に西洋美術の波が押し寄せる近代彫刻幕開けの時代。独立し、拠点を故郷・松本に移してからも文展・帝展への出品を続けた。岡倉天心に日本画の手ほどきを受けるなかで磨かれた感性は、卓越した技術を背景に彫刻作品として結実することとなる。大作《宿命》は、3人の女性を「過去」「現在」「未来」に見立て、キリスト教的聖母像と仏教の観音像を融合したかのような独特な優美さと静けさを湛えている。 70歳で没するまで地元松本で活動を続けた南海。同志と信州美術会を設立するなど、地方の美術活動の振興に尽力した。本展ではその足跡をたどるべく、木彫作品を中心に、陶彫や日本画も含め約70点を展観する。 【展覧会】生誕130年記念 太田南海展 【会期】2018年9月15日(土)~11月25日(日)
10月14日まで東京都美術館にて開催されている「第57回 現水展」。主催する「現代水墨画協会」は、水墨画家・根岸嘉一郎を理事長として、50年以上の歴史を持ち、古来よりの水墨画の伝統と先鋭的な時代感覚の融合を目指した水墨画の公募団体である。10月8日、同展の会場で水墨画家3人によるライブペイントパフォーマンスが行われた。 今回が初めてのお披露目となった“墨美麗組(すみれぐみ)”は、根岸理事長、そして副理事長の鈴木昇岳の導きのもと、「現代水墨画協会」の会員によって構成された。メンバーは横山円(よこやま・まどか、同会理事)、田村真夢(たむら・まゆめ、参与)、樋口鳳香(ひぐち・ほうか、参与)の3人。昨年、「全国平成水墨画協会」にて結成された“水墨ueen”が、ゲストとして同展でパフォーマンスを披露したことは記憶に新しいが、今回も「幅広い層への水墨画の普及」を主眼として、水墨画の裾野を広げる一助とな
銅版画コラージュ、ミクストメディア、油彩と、数種の技法や素材を駆使する。時に銅版画の領域を越境しながら、動物、植物、人物を色彩豊かな表現で組合わせ、新たな視点を発信し続けてきた。 この間、国内の公募展や個展のほか、海外のアートフェアなどにも参加し、グローバルな意識が醸成されてきた。「プロのアーティストであれ」といった意識の芽生えである。作品や日常への変化を求め研修先に選んだ国はフランス。パリにあるアトリエ・コントルポアンという銅版画専門の工房で一版多色刷技法を学んだ。周囲は多国籍のアーティストで、パリが人種の坩堝であることも実感させられた。 最初の2、3カ月は基礎の彫り、腐食、その後、色刷りの工程へと進み、最後に自由制作が許された。「多様な作品を目の当たりにし、価値観や生活習慣も異なるなかで、アーティストとしての感性が、同じ時間を過ごすなかで大きな刺激になった」。焦らず自らのペースで物事に
呼応する木々 / Resonating Trees teamLab, 2014, Interactive Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi 8月1日から9月2日まで、チームラボの《呼応する木々》が「GINZA SIX ガーデン」で展示され、GINZA SIXの屋上庭園が光と音のデジタルアート空間に変わる。 チームラボは、非物質的なデジタルテクノロジーによって、自然を破壊することなく「生きたまま自然をアートにする」アートプロジェクト「Digitized Nature」を行っており、今回の《呼応する木々》もその一つ。屋上庭園の木々の光は、それぞれ自律しており、ゆっくりと呼吸するかのように強く輝いたり消えたりする。鑑賞者が近くを通ると、光の色は変化し色特有の音色を響かせ、その光と音が両隣の木に次々と伝播されていく。屋上庭園の向こうの方から光が押
全国美術館会議(会長・建畠晢)は6月19日、声明「美術館と美術市場との関係について」を、臨時理事会の承認を経て発表。「美術館は自ら市場への関与を目的とした活動を行うべきではない」と表明した。 日本の美術館がともに考え行動することを目指し1952年に設立された全国美術館会議には、現在389館(国立9館、公立246館、私立134館)が参加。総会や講演会などの定期的な開催を通し、連携協力を図っている。 今回の異例の声明は、4月17日の未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」(中小企業・観光・スポーツ・文化等)第4回会合に、文化庁より「アート市場の活性化に向けて」と題した資料が提出されたことに起因する。その主旨は、国内の美術館や博物館の一部を「リーディング・ミュージアム(先進美術館)」として指定し、国から補助金を交付して体制を強化するというもの。この内容は5月19日、読売新聞によって
「現代美術に魅せられて-原俊夫による原美術館コレクション展」が、東京・品川の原美術館で6月3日まで開催されている。今展は、同館の創立者で現館長の原俊夫が初めてキュレーションを担当した展覧会。展示作品を通し、同館のコレクションの独自性が感じられる内容となっている。 同館は1979年、日本における現代美術館の先がけとして開館。1977年設立の現・公益財団法人アルカンシエール美術財団を母体に、1950年代以降の絵画、立体、写真、映像、インスタレーション等を丹念に収集しつづけ、現在のコレクションは約1000点となる。 原俊夫が日本に現代美術館をつくろうと決意したのは、40歳の頃だった。デンマークでルイジアナ美術館を訪れた際、個人の邸宅が心地よい美術館へと変貌を遂げた様に感銘を受け、当時空き家となっていた祖父(実業家・原邦造)の屋敷を利用することを決める。1988年には群馬県渋川市に、磯崎新設計の別
「ミュシャ」「国宝」「深海」「レアンドロ・エルリッヒ」「運慶」が60万人超え ― 行列が行列を呼ぶ超大型展 TwitterやInstagram積極活用へ ― 2017(平成29)年度は都内の大型館を中心に、新聞やテレビ等のマス広告による大規模な宣伝を行ういわゆる“ブロックバスター”型展覧会が好調であったが、近年は特にSNSの口コミ効果による、行列が行列を生む現象が過熱の一途を辿っている。こうした流れを受けて国立新美術館「ミュシャ展」「草間彌生」などでは一部展示が、森美術館「レアンドロ・エルリッヒ展」では全作品が撮影可能となるといった従来とは異なる動きが見られた。なお年度を通じて60万人以上が5件、上位20件が25万人以上となったのは、2000年度以降で初めてのことである。 2017(平成29)年度 展覧会入場者数BEST30 展覧会名 会期 会場 主催 入場者数 1日平均 入場者数
人は何故、「悪」に惹きつけられるのか。昨今、ドラマや映画、小説などで、悪役は時に主人公を凌ぐほどの魅力をはなつことが少なくない。そして江戸を生きた人々も、すでにこの「悪」の持つ底知れぬ魅力に気付いていたようである。 例えば、世間を騒がせた大盗賊が市中引き回しになると、その姿を一目見ようと街道は群衆で埋め尽くされた。また、「元禄赤穂事件」などの大事件はすぐに芝居にも移され、吉良上野介は稀代の悪人としてのイメージを定着させていく。幕末には、盗賊が登場する「白浪物」の芝居が流行し、盗賊や小悪党が人気を呼んだ。当時の人たちは現実、虚構を問わず、「悪」の持つ魅力に好奇心を抱き、時に酔いしれたのだ。 さまざまな悪人たちのイメージを描かれた浮世絵から探る本展覧会は、2015年に開催して好評を博した同名の展覧会のパワーアップ版。盗賊や侠客、浪人に悪の権力者、悪女、悪の妖術使いなど、実在した悪人から物語に登
2016年のオーストラリアを皮切りにニュージーランド、そして2017年8月には韓国で開催が予定され、センセーショナルなテーマと多様な作品が各国で話題をよんでいる「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」が、2018年3月24日(土)から6月24日(日)まで横浜美術館に巡回することとなった。 今展は、世界屈指の西洋近現代美術コレクションを誇る英国国立美術館 テートの所蔵品を通し、19世紀後半のヴィクトリア朝の神話画から現代の身体表現まで、西洋美術の200年にわたる裸体表現の歴史を紐とくもの。2016年には新館をオープンし話題のテートから、ターナー、ヘンリー・ムーア、マティス、ピカソの傑作や、ロダンの日本初公開の大理石像《接吻》が集結する。そのほかボナールらが描いた室内の親密なヌード、シュルレアリスムの裸体表現、人間の真実に肉迫するフランシス・ベーコン、そしてバークレー・L・ヘンドリ
1948年創刊の美術専門誌『美術手帖』が、2018年6月号(5月7日発売)より隔月刊化し、誌面リニューアルすることを正式発表した。 同誌は今年で創刊70周年。さらなる発展を目指し、リニューアル後はボリューム、コンテンツともに強化し、より専門性の高い内容にフォーカスしていくとのこと。発売日は奇数月の7日で、価格は変更なしの1600円+税。今後は特集に特化した増刊号の刊行もさらに充実させる。 また、今年7月頃には「ウェブ版美術手帖」をリニューアルし、10月頃にはアートに特化したECサイト「OIL」を開設することも発表された。「OIL」はアート作品を中心に、アート関連商品を扱うEコマースサイトとして開設。名称は、アートの歴史を語るうえで最も重要な素材のひとつである油彩(OIL on canvas)に由来する。なお2つのウェブサイトはグループ会社の株式会社BTCompanyが運営。誌面にとどまらず
昨年、フランス・ジヴェルニー印象派美術館で開催された「平松礼二・睡蓮の庭 モネへのオマージュ」展が、会期中約7万4千人という同館始まって以来最高の入場者数を記録するなど大反響を巻き起こした日本画家・平松礼二。その巡回展にあたる展覧会がドイツのベルリン国立アジア美術館で開催されている。近年、文化面でも世界の注目を集めるこの都市で平松の日本画はどのような評価を得るのだろうか。フランスで経験したこと、ドイツにむけて思うこと―開幕前の5月の末、アトリエに作家を訪ねた。 ―フランスでの展覧会はとても大きな反響を呼びました。 平松礼二(以下 平松) あの展覧会は「第2回ノルマンディー印象派フェスティバル」というイベントの特別展としてジヴェルニー印象派美術館が開催したもので、同館のD・カンディール館長のもと、オルセー美術館やロダン美術館を巻き込んでかなり大掛かりな広報活動をしてくれました。大きなポスター
昨年開催された「没後40年 幻の画家 不染鉄展」(東京ステーションギャラリー・奈良県立美術館)によって、その謎めいた画業と作品の魅力が広く知られるようになった日本画家・不染鉄(1891~1976)。このたび、東京・銀座の永井画廊で、東京のギャラリーでは初となる個展が開催される。 不染鉄は京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)にて学ぶ以前に、漁師をするなど珍しい経歴をもつ。戦前には帝展などで発表し、戦後は画壇を離れ奈良に暮らし制作した。緻密ながら豊かなスケール感を有し、海や山など一般的なモチーフでも、極めて独創的な世界をつくりあげた作家であった。 今展では、掲出作の「海1」のほか、「奈良風景1」(昭和20年代後半~昭和30年代前半)、「海2」(昭和30年代)など未発表の大作3点が大きな見どころである。また、40年ぶりに発見されたオリジナルリトグラフ版画「落葉浄土」「いちょう」の2種類は
詩情あふれるその作風から、今も多くの人々に愛される清宮質文(せいみや・なおぶみ 1917~91)。水戸市内の墓地に眠る茨城県ゆかりの版画家の生誕100年を記念して、その全体像を紹介する大回顧展が茨城県近代美術館で開催される。 清宮は東京生まれ、本籍は茨城県。東京美術学校(現・東京藝術大学)で油絵を学び、教員生活を経て53年から制作に専念した。それから本格的に木版画へ取り組み、54年から77年まで春陽展に出品、以後は個展を中心に発表を続けた。 清宮が追い求めたものは、版による複製性よりも、「彫り」の線や「摺り」による色の重なりである。油性インクではなく透明水彩を用い、摺りごとに色調を微妙に変化させ、版画ならではの表現を目指した。また、版画であっても1枚、あるいは数枚しか摺られなかった作品が多く、摺りの少ない作例に触れる好機ともなるだろう。 今展では、年代順に制作テーマの変遷を追いながら、木版
2018年夏、森ビル株式会社とチームラボが共同で、お台場・パレットタウンにデジタルアートミュージアム「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: teamLab Borderless」を開業することが分かった。 施設面積は10,000平方メートル。圧倒的なスケール感と多様な空間構成が特徴で、チームラボによる東京初の常設展示となる。名称にも採用した“Borderless”という言葉には、「作品と作品」「作品と鑑賞者」「自己と他者」の境界をなくし、鑑賞者も作品の一部となって溶け込んでいくという想いが込められている。同施設を通じて、既存の価値観や社会的枠組みを考え直すきっかけを提供していく。 森ビルは、世界の人々を惹きつける磁力ある都市を実現するためには「文化・芸術」が不可欠であると考え、六本木の森美術館をはじめとする文化施設を都市の中に組み込み、様々な文化・交流活動を促
平面作品における”若手作家の登竜門”として、今年で25周年を迎える「VOCA展2018」(The Vision of Contemporary Art/主催:「VOCA展」実行委員会/公益財団法人日本美術協会 上野の森美術館、特別協賛:第一生命保険株式会社)。その各賞が発表され、大賞であるVOCA賞は碓井ゆいの《our crazy red dots》に決定した。 碓井ゆいは1980年東京都生まれ、埼玉県在住。受賞作《our crazy red dots》はクレイジーキルトの技法を用いて「日の丸」のイメージを解体、再構成した作品で、歴史から現代までの政治的寓意にも冨み、その鋭い批評性が高い評価を受けた。 今回は新進気鋭の作家34名が出品。この中からVOCA賞のほか、VOCA奨励賞、佳作賞が選考会によって決まり、また大原美術館賞が同美術館独自の選考を経て決定した。今回新たに選考委員長を島 敦彦
2017年1月から12月に会期のあたる大型企画展入場者数は、国立新美術館「ミュシャ展」(3月8日~6月5日)の657,350人が最も多く入場者を集め、第1位となる見通しだ。 それに続くのが、この秋に東京・京都の国立博物館で開催された「運慶」展と「国宝」展。主催者発表では、京都国立博物館「国宝」展が約624,500人。同館の過去最高入場者数になる。そして、東京国立博物館「運慶」展が、主催者発表で600,439人。これにより、2017年の1年間に開催された大型企画展の入場者数は、1位「ミュシャ展」、2位「国宝」展、3位「運慶」展となることがほぼ確実になった。 なお、「ミュシャ展」とともに国立新美術館開館10周年記念展として開催された「草間彌生 わが永遠の魂」(2月22日~5月22日)は、518,893人で第4位。また、自然・科学系では、国立科学博物館「深海2017」(7月11日~10月1日)が
日本では過去最大規模の「フェルメール展」が、2018年10月5日から19年2月3日まで東京・上野の森美術館で、19年2月16日から5月12日まで大阪市立美術館で開催されることが決定した。11月20日、記者発表会が開かれ、今展の出品作品などが公表された。 17世紀オランダ黄金時代を代表するヨハネス・フェルメール(1632-75)は、寡作の画家としても知られており、現存する作品はわずか35点と言われている。そのうち今回の東京展では、日本初公開を含む8点を展示予定。これは2008年に東京都美術館で開催され93万人の来場者を記録した「フェルメール展」の7点を超す、国内過去最多の数となる。 今回の記者発表では、東京展への出品が確定したフェルメール作品4点を先行発表。代表作《牛乳を注ぐ女》をはじめ、聖書の場面を描いた初期作《マルタとマリアの家のキリスト》、日常の場面にスポットを当てた《手紙を書く婦人と
刀剣をテーマとした展覧会は近年増えてきているが、今度は刀ではなく「刀装具」にスポットを当てた展覧会が11月3日より東京・青山の根津美術館で開催される。 刀剣外装のための金具は、江戸時代以降に装飾性が増し、金属とは思えないほどのきらびやかで細密な作品が残された。明治時代の実業家・光村利藻(みつむら・としも/1877~1955)はそんな刀装具を中心に一大コレクションを築き、名著『鏨廼花』を刊行。断絶の危機にあった装剣金工の技術継承にも心を配り、多くの作り手を護ったことでも知られている。 上:《波葦蒔絵合口拵》加納夏雄・柴田是真合作 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵 (光村利藻旧蔵) 下:《刀》月山貞一(初代)作 日本・明治38年(1905) 根津美術館蔵 (光村利藻旧蔵) 現在根津美術館には利藻のコレクション約1,200件が伝わっている。今展では館蔵の光村コレクションを中心に、約130件
奥谷 博氏は1934年高知県宿毛市生まれ。東京藝術大学油画科在学中の58年に独立展に初入選。洋画家の林武に師事し、66年独立美術協会会員となる。67年第1回の文部省芸術家在外研修員として渡仏し、帰国後、愛知県立芸術大学助教授となるが、再渡仏のため退職。2度の渡欧を通じて、「日本人が描く油絵」を模索し薄塗りで鮮やかな色彩の対比を主調とする作風を確立した。96年日本藝術院賞を受賞し、同年、日本藝術院会員となる。2007年には世界各地の世界遺産を描いた作品による「世界遺産条約採択35周年記念 奥谷博展―訪ねた世界遺産」をパリのユネスコ本部で開催。同年、文化功労者として顕彰された。母校の東京藝術大学で客員教授を務めた経歴や日本美術家連盟では役員を歴任。現在、所属する独立美術協会の第85回記念独立展が六本木の国立新美術館(~10月30日)で、監修を務めた文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展―美
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