半藤一利著『天皇ご自身による「天皇論」』(講談社文庫)は、タイトルの通り、昭和天皇がどのような天皇論を持っていたかについて記されている。身もフタもない話ながら、いわゆる強烈な皇国史観の中に置かれていた昭和天皇ご自身の考えを、各種の資料やメモ(既存の物から「小倉侍従日記」、「富田メモ」、「卜部侍従日記」)などから「天皇の肉声」に迫っていて興味深い。 以下、参照にして、二・二六事件に対峙した、若き日の昭和天皇の《在り方》を。 1936年(昭和11年)2月26日、帝都は未明から大雪が降っていたという。ぼた雪の降る中、国家改造論に心酔した青年将校ら率いられた決起部隊1483名が午前5時頃に行動を起こした。この決起部隊は重機関銃、軽機関銃、小銃、拳銃、更に十万発を超える爆薬を持ち、更には防毒マスクをも携行するという完全武装で、同時多発クーデターを実行した。 栗原中尉が率いる栗原部隊300名が岡田啓介
