光を当てて有機化合物の分子構造を変化させ、結晶をガラス板の上で移動させることに産業技術総合研究所が成功した。1分間に1千分の2ミリほどの速度で動き、垂直なガラス板も上ったという。英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに論文が掲載された。 光のエネルギーにより分子構造が変わる「アゾベンゼン」の結晶(大きさ100分の数ミリ程度)に、紫外線と青色の光を、反対方向から斜め45度の角度で同時にあてると、紫外線から遠ざかる方向に動いた。結晶が紫外線側で溶け、青色側で成長することで移動現象が起こると考えられるという。 則包恭央(のりかね・やすお)・主任研究員は「先行研究に比べ、特殊な表面処理をした基板やレーザー光の精密な制御などが不要で、将来は微細な世界での有用物質の運搬などに応用が期待できる」としている。(吉田晋)