塩沢由典(大阪市立大学・理論経済学) 「社会・経済システム」第19号、2000年11月10日、pp.55-67 目次 1.経済学におけるシステム研究 2.経済学の隠されたシステム理論 3.システム理論の革新に必要なこと 4.自律的エージェントのシステム理論 1.経済学におけるシステム研究 社会・経済システム学会は、「社会的・経済的事象に関するシステム研究」(同創立趣意書)を目指して1982年に設立された。わたしは創立当時からの会員ではなく、なぜここで、単に「社会・経済システムの研究」でなく、「社会的・経済的事象に関するシステム研究」という表現をもちいたのか、その経緯を知らない。経済学の分野にあるものとして推測するに、経済システムないし社会システムというとき、市場経済や計画経済といったシステムないし体制の研究と混同される恐れがあったということであろう。それを退けるわけではないが(現に、比較経