1 怪獣大戦争 いつのことだったか、谷口功一さんから『法学教室』誌で 安藤さんと大屋さんの「怪獣大戦争」が連載されるという噂を聞いて、少なからず驚いた。というのも、お二人の議論はどちらも法哲学者にとってさえ難解をもって知られており、両者の論争を学修者を対象とする『法学教室』誌に連載することなど無理筋な話のように思われたからである。 ただし、安藤対大屋という法哲学の世界における大怪獣が対決する様子を観てみたいと思うのは人情であり、私自身も2度ばかりそのような対決を企画した。すなわち、『法哲学年報2011――功利主義ルネッサンス』(有斐閣)という法哲学の学会誌と、若松良樹編『功利主義の逆襲』(2017年、ナカニシヤ出版)という論文集である。 それらは、いわば玄人向けであり、映画にたとえるならば、ミニシアターや自主上映会でしかお目にかかれない代物である。これに対して、今回の企画は『法学教室』誌と