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北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって我が国周辺の危機レベルが上がっていると見る雰囲気があります。現時点で米海軍の展開にそこまでの緊急性は見られず、今すぐに戦争が起きるという状況ではありません。北朝鮮が対米核抑止態勢を追及する限り、日米韓に対する軍事的脅威が増大し続けるのは間違いありませんが、それがすなわち"危機"を押し上げるわけでもないので、ここに来て突然戦争の兆候が高まったかのような見方にはやや違和感があります。 しかしながら、「戦争が起きるなんてありえない」とタカを括るのも危ない考えです。確かに、世界大戦規模のものを想像するなら、めったに発生するものではないでしょう。しかし、19世紀、20世紀と比べてみても、2001年以降の約10年で戦争が減っているわけではないんですよね。大規模なものだけでもアフガニスタン、イラク、ダルフール、東ティモール、イスラエルとパレスチナ・レバノン、グルジア、リ
海上自衛隊哨戒機が韓国駆逐艦から火器管制レーダー(射撃管制用レーダー)を照射された件以来、日韓関係が悪化しています。 本件について日韓どちらが事実に即し、どちらが偶発的衝突を回避しようという態度で臨んでいたのかは、防衛省の動画で答えが出ています(韓国は何も出していないに等しい)。本件に対する韓国外交部・国防部の言動はあまりに挑発的で、ならず者国家である北朝鮮とも見紛うばかりです。 韓国側は事件当初からまるで理解できない嘘や話題逸らしを続けていますが、本日にいたっては自衛隊に対して「対応行動守則に従って強力に対応する」※1と明言しました。対応行動守則とは、「海上で他国の艦艇と哨戒機の威嚇を受けた際、韓国軍が取るべき自衛レベルの“対応マニュアル”」※2のことで、自衛権的措置、すなわち武力の行使を含みます。 韓国が武力行使に言及したことで、日韓は危機のレベルをあげた、と考えて良いのでしょうか?メ
突然ですが、平面の世界地図を想像してみて下さい。 人によって違うと思いますが、「中国や北朝鮮から日本を越えて右にず〜っとまっすぐ行くと北米大陸がある」という図1のような地図を想像する方が多いのではないでしょうか。 (図1) この地図は正角円筒図法というもので、メルカトル図法として知られています。単に世界地図を想像しろと言われてこの地図が浮かんでくること自体は何ら問題ではありません。 しかし、「平壌を中心にロサンゼルスまでの弾道ミサイルの飛翔経路」について議論する場合、メルカトル図法は不適切です。メルカトル図法でみると、平壌からロサンゼルスに向けて発射された弾道ミサイルは日本の上空を通るように思われますが、実際はそうではありません(後述、参照記事)。 この点、誤解されている方が少なくないようです。メルカトル図法がとてもポピュラーで見慣れたものであることの弊害かもしれませんね。さすがに専門家の
話題の「トマホーク」について。 導入反対派からは、「型落ちで遅い」と侮られる一方で、「飽和攻撃に使うから敵が危険」という懸念も抱かれる不思議兵器と化したトマホーク。もとより政治的なポジションで様々な主張があることは当然ですが、ここで我が国が導入するトマホークについてちょっとだけまとめておこうと思います。 トマホーク導入の目的なぜ今スタンド・オフ兵器が必要なのか型落ちトマホーク?亜音速で遅い飽和攻撃専守防衛との関係トマホークを超えるスタンド・オフ兵器 1. トマホーク導入の目的我が国は、スタンド・オフ防衛能力[1]を構築中で、トマホーク巡航ミサイルもこのスタンド・オフ兵器のひとつとして米国から調達します。 トマホーク取得にあたり、防衛装備庁が次のように言及しています。 島嶼部を含む我が国に侵攻する上陸部隊等に対処するために導入します。国産のスタンド・オフ・ミサイルを所要量整備するためには一定
『ドラえもん』は、安全保障問題を考える入り口としてなかなか優れた題材です。当ブログでも何度か『ドラえもん』の登場人物を国家に見立てて専門用語を説明させていただきました。 ドラえもんがいない世界でのび太は誰と組むべきかのび太は「勢力」ではなく「脅威」を均衡する ドラえもんとの同盟はのび太の成長にマイナス? さて、札幌琴似工業高の川原茂雄教諭が伊藤絢子弁護士を招いて集団的自衛権を学ぶ授業を行い、その中で『ドラえもん』をメタファーにしたことが話題になっています。 「のび太が武装しても自分を守れるかな」(2014/7/19 朝日新聞) 川原さんと伊藤さんは、「ドラえもん」を例に話を進めた。米国は「ジャイアン」、日本は「のび太」。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使容認で「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」と胸を張ったが、「のび太が武装して僕は強いといっても、本当に自分を守れるかな」と川
橋下氏、核持ち込み容認を示唆 「必要なら国民に問う」 (朝日新聞) 日本維新の会の橋下徹代表は10日、遊説先の広島市内で「日本を拠点とする(米海軍の)第7艦隊が核兵器を持っていないなんてことはありえない」と述べた。非核三原則については「基本は堅持」とする一方、非核三原則が禁じる核持ち込みには「米国の核に守られている以上、そういうこと(持ち込み)もありうるのではないかと思っている。本当に持ち込ませる必要があるなら、国民の皆さんに問うて理解を求めていきたい」と語った。 橋下氏は「理想論で言えば、核はなくなる世界の方がいいが、国際社会はそんな甘いもんじゃない。広島の市民や県民の皆さんの自治体レベルで政治をするのと、主権国家として国際政治をやるときにはステージが違う」とも述べた。報道陣の質問に答えた。 現在の世界の安全保障環境を考えれば、核兵器を廃絶することが極めて難しいことは橋下徹大阪市長のおっ
15日午前3時30分ごろ、中国海軍の東調(ドンディアオ)級情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島の沖合の日本領海に侵入し、午前5時ごろ領海を出ました。 中国海軍艦艇の動向について(2016/6/15 防衛省) 中国海軍による我が国領海への侵入は、2004年に漢級原子力潜水艦が石垣島周辺に侵入して以来2度目となります。 何をしに来たのか? 中国海軍艦艇は今月9日にも尖閣諸島の接続水域を航行して騒動を呼んだばかりです。接続水域に入った背景は、どうやら演習帰りのロシア艦に引っ張られた形の偶発的なものであったというのが大方の見方のようです※1。 今回の事案は領海です。それでなくとも中国は領土紛争の係争相手ですから、計画的なものであれば接続水域への侵入とは比べ物にならない問題となり、尖閣諸島問題のステージがひとつ上がるということさえいえるでしょう。 しかし、今回も周到に計画されたものとはほど遠いようです
核保有の筋立てを=「抑止力になる」 (時事通信) 日本維新の会の石原慎太郎代表は20日、都内の日本外国特派員協会で講演し、尖閣諸島をめぐり対立する中国への対応に関し「日本は核兵器(保有)に関するシミュレーションぐらいやったらよい。これが一つの抑止力になる」と表明した。外国人記者との質疑応答の中で発言した。 核保有の検討は石原氏の持論だが、先に非核三原則見直しの必要性に言及した維新の橋下徹代表代行(大阪市長)の発言と併せ、事実上の選挙戦が始まった衆院選で論議を呼びそうだ。中国などは「日本右傾化」の主張を強めるとみられる。 石原氏は「軍事的な抑止力を強く持たない限り外交の発言力はない。今の世界で核を保有しない国の発言力、外交力は圧倒的に弱い。北朝鮮は核を開発しているから存在感がある」と指摘。ただ「個人の考えだ」とも語り、維新の安全保障政策とは無関係であることを強調した。 石原慎太郎・日本維新の
ウクライナにおける危機の発生は、戦争なんてめったなことでは起こらない、とタカをくくっていると危ないんだな、と改めて確認させられますね。確かに、世界大戦規模のものを想像するなら、めったに発生するものではないでしょう。しかし、19世紀、20世紀と比べてみても、2001年以降の約10年で戦争が減っているわけではないんです。大規模なものだけでもアフガニスタン、イラク、ダルフール、東ティモール、イスラエルとパレスチナ・レバノン、グルジア、リビア、シリアなどで戦争が起きています。むしろこのペースで行くと、「戦争の世紀」と呼ばれた20世紀よりも戦争の数だけ見れば21世紀の方が上回るかもしれません(2度の世界大戦を経験した20世紀と単純比較はできませんが)。 数え切れないほどの戦禍を経験しておいて、なぜいまだに戦争がなくならないのでしょうか。理由のひとつは、戦争が起きる「動機」が昔からほとんど変わっていな
昨年、東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定した中国は、南シナ海でも同様の措置をとるのではないかと目されていました。しかし、東シナ海で思いの外大きな反発を国際的に受けたことを考慮しているのか、現時点で南シナ海にADIZを設定したとの発表はありません。 そんな中、中国政府は、南シナ海において外国の漁船や調査船が活動するには事前に中国の地方当局に承認を得るよう新しい規則を施行しました。南シナ海で中国と海洋主権を争う周辺国との軋轢が深まることが予想されます。 China Orders Foreign Fishing Vessels Out of Most of the South China Sea(Washington Free Beacon) 新規則は、昨年11月に海南省人民政府によって発表されたもので、今月1日に施行されたようです。海南省の行政区域を通過するすべての外国漁船は中国当局の承認
シビリアン・コントロール(文民統制)という言葉を聞いたことがあると思います。政治が軍を統制することですね。シビリアン(文民)とは、市民、官僚、政治家などを指し、我が国では内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持っています。 シビリアン・コントロールの厳密な定義はさておき、一般的には「軍の暴走を食い止めるための装置」といったふうにとらえられているのではないでしょうか。 過去に軍部が独走した体験を持つ日本では、軍事的な存在そのものに恐怖や嫌悪感を抱く人がいることは事実です。これは日本に限った話ではありません。戦争や軍拡競争といった問題は軍によって引き起こされるのだ、という考え方は世界的にも根強いものだと言えるでしょう。 私もシビリアン・コントロールは必要だと思います。しかし同時に、「軍は戦争の原因」だとか「軍人は戦争を望む」という見方は一面的です。実際のところ、日本やアメリカ、イギリスといった
東京都や国による尖閣諸島購入が賑わっていますね。都や国に強く反対する理由もないですが、国際法上疑いなく我が国の施政下にあり実効支配している領土ですから、藪を突いてわざわざ蛇を出すようなことしなくてもなぁ、とも思います。もちろん、日本国内の問題に中国が容喙してくることが問題といえば問題なのですが、相手がそういう態度に出ることが分かっていながら、実効支配している側が事態を紛糾させるきっかけをつくるのもあまり賢明だとも思えません。今回は地権者の事情もあるようですので、都知事閣下のいつもの単純な愛国的発想というわけでもないのかもしれませんが。 尖閣諸島問題は当ブログでもこれまで何度か取り上げてきましたが、私は日中が抱える諸問題のうちでもかなり日本有利な案件だと理解しています。ですので、法やシステム、設備等の整備・向上は必要ですが、とりたててこちらから騒ぎ立てることはない、と考えています。 本稿では
クリスマスまでには帰れる――。これは、第一次世界大戦が始まった1914年7月頃に戦地へ赴く兵士たちが抱いていた予測でした。各国指導者の多くも同じような見通しでした。彼らは皆、戦争を望んではおらず、ましてこの戦争が世界中に拡大するとは思ってもいませんでした。 なぜいきなり第一次世界大戦かというと、スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、安倍首相が現在の日中関係を第一次世界大戦当時の英独関係に例えたことが伝えられているからです。 Davos leaders: Shinzo Abe on WW1 parallels, economics and women at work(2014/1/22 フィナンシャル・タイムズ) Japanese PM Shinzo Abe urges Asia military restraint(2014/1/22 BBC) 第一次世界大戦(グレート・ウォー
「尖閣なんか中国に譲ってしまえ」、という意見は以前にも取り上げたことがあるのですが、今回はその記事に少し加筆したものを掲載しています。 【参考記事】 領土の割譲で戦争は回避できない 昨年、まだ塀の外におられた堀江貴文氏が、「尖閣諸島を取られてなにか問題ありますか?」、 「沖縄だって北海道だってあげちゃえばいい」、「尖閣諸島に固執していては国益を損なう」と言ったことが一時話題になりました。 ホリエモン氏が上記のような発言をしたからといっていちいち目くじらを立てることもないのですが、国際政治において、「脅威に対処するために相手の望むものを与える」ことが避けるべき戦略であるにもかかわらず、こうした考え方は根強いものがあります。 「宥和政策(アピーズメント)」は、自国に害意がないことを相手に示し、軍事バランスを相手の有利になるようにして安心させ、最終的には相手国の態度を友好的なものへ導くことを狙う
戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)が、中国軍についての報告書を発表しました。各国の防衛白書やレポートを踏まえた詳細なもので、大変信頼性の高いものです。国家航空宇宙情報センター(NASIC)が発表した弾道ミサイルに関するレポートのような直近の分析も反映されているので、網羅的に各軍の分析・評価を確認できる最新の資料となっていますね。 そんな中で興味を惹いたのは、マンパワー(人的資源)に関する人民解放軍海軍(PLAN)の変化についての部分でした。数字で見ると、1985年には35万5,000人いたPLANは、2013年には21万5千人まで人員を削減しています。数百万の民兵がいたりするので、「中国といえば人海戦術」というようなイメージがあるかもしれませんが、質より量を重んじる固陋な考えは、もはや人民解放軍には
南シナ海は、中国(台湾も)、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが領有権権を主張し合う複雑な海です(過去記事)。スプラトリー(南沙)諸島とパラセル(西沙)諸島といった小島や環礁をめぐって、各国の主張は入り乱れています。 (南シナ海の領有権を巡る各国の主張ライン) 特に、この中で大きなアクターであるのは、中国、ベトナム、フィリピンです。 ここ数日、中国がベトナムとフィリピンを相手に小競り合いを起こし、事態がエスカレーションの危険性を帯びつつあります。ベトナムとは中国が西沙諸島で始めた石油掘削を巡って、フィリピンとは南沙諸島でウミガメ漁をしていた中国漁船をフィリピンが拿捕したことを巡って衝突していますね。 中国 vs ベトナム南シナ海で中越艦船が衝突 石油掘削めぐり、6人負傷(2014/5/7 産経新聞) 【北京=川越一】中国が石油掘削を始めた南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島近くの
ミサイル防衛無効論はもううんざりアメリカはミサイル防衛(MD)を推進する国だから、その政府の発表する実験結果なんて信用性ゼロ、という人がいます。米政府の情報を信じないのは良いとして、そういう人は、ミサイル防衛の実験に信憑性がないことを科学的に分析し、客観的評価を得たアメリカ以外の研究をどのくらい読んでおられるのでしょうか? 『ミサイル防衛(MD)はポピュラーな兵器システムです(改稿)』で取り上げたように、アメリカ以外にもMDシステムを採用している国はいくつもあり、ロシア、中国、イランとアメリカと対立する国々さえもMDの配備/開発を進めています。彼らもMDの有効性をアメリカ以上に喧伝しますが、これら約30カ国の政府の情報や研究も信じられないわけですよねえ…。いったいどこの国のどの言葉で書かれた研究を読んだのやら。 MDに懐疑的な論者として代表的なのが、マサチューセッツ工科大のセオドア・ポスト
以前、プロスペクト理論について紹介しました。 (2014/11/14)プロスペクト理論:現状維持の「現状」ってどこ? 抽象的な説明で分かりにくいところもあったと思います。そこで、米海軍が南シナ海において「航行の自由作戦(Freedom Of Navigation OPeration:FONOP)」を実施したこの機会に、南シナ海問題という具体的な事例を当てはめてみると、より分かりやすいかな、ということで改稿・加筆してみました。 南シナ海の参照基準点はすでに変更されている 意思決定者は置かれた条件によって絶対的な価値に対して主観的な評価をします。この評価の基準となるのが、参照基準点です。国際政治で現状維持というときの「現状」とは、すなわち参照基準点のことです。 現状=参照基準点は刻々と変化します。意思決定者の現状に関する主観的な理解(獲得/損失どちらのドメインにいるのか)だけでなく、欲求や期待
今日は「籠城(ろうじょう)」を題材に話をしてみたいと思います。 現在放送中の大河ドラマ『軍師官兵衛』では、上月城、有岡城、三木城、さらには備中高松城などを舞台に数々の籠城戦が展開します。戦国時代だけでなく、建武の新政の頃には楠木正成の名を知らしめた千早城の戦いがあり、西南戦争では熊本城に籠った新政府の鎮台が鹿児島士族と戦いました。時代を経ても籠城戦のケースは無くなるどころか、あさま山荘事件で脚光を浴びたり、いまだに強盗が銀行に立て籠もって新聞に籠城の文字が踊ったりしますね。古今東西を問わず、籠城という手法自体は珍しいものではないんです。 籠城して勝てるのか? 戦争であれ外交であれ、戦いの究極目的は「こちらの意志を敵に強要する」ことです*1。敵兵を殺したり、敵部隊を全滅させたりするのは、あくまでも勝利を得るための手段でしかありません。敵兵を1人も傷つけることなく勝つこともあれば、戦場の敵を全
今話題の集団安全保障と集団防衛と集団的自衛権をそれぞれ短く説明してみます。この3つの用語は細かすぎてなかなか違いが分かりにくいものですが、入門編的にできるだけ平たく書いてみます。ちなみに、日本における内閣法制局の解釈や国内議論については本稿ではとりあげません。 はじめに、集団安全保障と集団防衛/集団的自衛権のざっくりとしたイメージを視覚化してみました。 <集団安全保障イメージ> <集団防衛/集団的自衛権イメージ> このイメージをもとに、細かすぎない程度に見ていきたいと思います。 集団安全保障とは、グループ内の不特定の構成国に向けられた内向きの協力体制のことです。グループを形成する際に敵を想定するものではありません。そして、グループとは具体的には国際連合のことを指します。 では、国際連合では集団安全保障をどのように位置づけているのでしょうか? まず、武力行使の濫用(らんよう)は国連憲章でも厳
鳩山由紀夫元首相が相変わらず友愛精神を振りまいておられますね。 中国政府は、同諸島が日清戦争末期に日本に奪われたとの立場から、「日本が清国人から盗取した一切の地域を中華民国に返還する」とのカイロ宣言を領有権主張の根拠としている。鳩山氏は、「カイロ宣言の中に尖閣が入るという解釈は、中国から見れば当然成り立つ話だ」と述べ、中国政府の言い分に理解を示した。 カイロ宣言の該当部を読むと、 It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the first World War in 1914, and that all the territories Japan has s
尖閣問題のエントリに対して、「日本は核武装が必要」というご意見を頂くことがあります。核武装すれば日本の国際的な発言力が高まる、という主張は、政治家や元自衛官幹部などのお歴々を始め、有識者、ジャーナリストの中にも少なくありません。この考え方はアメリカのリアリストの中にもあって、ケネス・ウォルツ以来、ジョン・J・ミアシャイマーやクリストファー・レインといったリアリズム政治学者も日本の自主核武装は合理的だという見方です。もっとも、尖閣や竹島といった離島問題を引き合いに核武装を唱える人となると、さすがにその数はぐっと減りますけどね。 核開発の技術論は詳細になると私の手に余るものであることや、核抑止理論はざっくりまとめられるようなものではないことなどから、これまで「日本の核武装」は敬遠してきたテーマでした。離島防衛で核ミサイルがどーのこーのというのは馬鹿馬鹿しいので「あっははー」と放っておいてもいい
「正しい」はひとつじゃない国際政治では、常識や正義が国の数だけある、などと言われたりもしますが、極論すれば人の数だけあるのかもしれません。 これが正しい、あたりまえだと決めつけることほど国際政治で危険なことはない。(中略)国際政治では、答えがひとつに定まらないのがむしろ普通のことだ。それぞれの正義を争うその空間の中で「正しい答え」に飛びついてしまえば、自分が正しいと思う考え方、価値観、あるいは偏見によって現実に裁断を下してしまう可能性がある。 自分や自分のコミュニティ内だけでしか通用しない正義や論理で、他人や他のコミュニティを否定してしまうことってありませんか?私も日頃から気を付けていますが、ついついそういう思考が顔を出します。しかも、その手の正義や常識は、他人を否定するだけでなく、自分の選択肢をも無意識に縛ってしまうことがあります。 かといって、選択肢は無限である、というのも非現実的な話
先日、尖閣諸島問題に関して記事を書いたところ、様々な反響をいただきました。 (2012/7/16) 尖閣諸島はどのように防衛されるのか 本稿では上記過去記事を読んでいただいたことを前提に話を進めていきます。 尖閣諸島問題は領土という絶対性をもつものが議論の対象であるためか、勇ましい意見をお持ちの方が多いようです。過去記事では、魚釣島へ人員を配備する軍事的効果の薄さや海上保安庁という安全装置の意味、実効支配していることの重要性について説明した上で、「相手の挑発に乗るべきではない」という論旨を述べたところ、勇ましい系の方々にはあまり賛同いただけなかったようです。もちろん、何においても異論があるのが当然ですからそれは良しとして、本稿では「日本からエスカレーションを仕掛ける愚かさ」について説明し、愛国心あふれる諸氏からの支持を張り切って失ってみたいと思います。 こちらの有利な立場を理解するケネス・
「尖閣棚上げが賢明」…中国副総参謀長が見解(読売新聞) 中国人民解放軍の戚建国副総参謀長は2日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)で、沖縄県・尖閣諸島問題について「我々より知恵のある次世代の人に解決してもらうべきだ」と述べ、中国側が1970年代に日中の合意があったと主張する「棚上げ」状態に戻るべきだとの見解を示した。 尖閣諸島問題において、案の定「領有権棚上げ論」が出てきましたね。本稿では、棚上げ論について書いた2010年10月30日の記事を少し手を加えた上で再掲いたします。 中国が「棚上げ論」を言い出すタイミングとは尖閣の領有権棚上げ論とは、訒小平が言い始めたものです。1978年10月23日、訒が日中平和友好条約の批准書交換のため訪日し、「尖閣諸島の領有問題については中日間双方に食い違いがある。国交正常化の際、両国はこれに触れないと約束した。今回、平和友好条
ロシアのプーチン大統領が、クリミア自治共和国のロシア併合を表明する演説を行いました。 冷戦〜ソ連崩壊〜ポスト冷戦を経たプーチン大統領の心情、というよりもロシアという国家の感情のようなものがうかがえる演説だと思います。国際社会の多数を納得させられるかどうか、という点についての評価は受け取る側の立場によって異なるでしょうが、切々とクリミア併合に至ったロシアの「正義」が語られており、彼らの世界観を知るうえで非常に参考になりますね。 さて、演説の中でプーチン大統領はクリミア併合が国際法に違反しない点を高らかに宣言しています。そしてやはりと言いましょうか、コソボの事例を引き合いに出してきました。クリミアを舞台にしたロシアと米欧の対立は、三戦(世論戦・心理戦・法律戦)の様相を呈しています。 コソボについての経緯は本稿では割愛しますが、「コソボとクリミアは同じケースであり、コソボでNATOに認められた行
安全保障関連法案(安保法案)をめぐる国会審議が始まりました。焦点のひとつが日米同盟ですね。 日本はこれまで日英同盟、日独伊三国同盟、日米同盟と3つの同盟に入ってきました。いずれの同盟においても、同盟国が敵の正面を受け持ち、我が国が敵の背後を脅かすことで同盟に寄与する形をとっていました。日露戦争、日米戦争はありましたが、それ以外は直接的に勢力均衡を維持する努力は求められず、とりわけ日米同盟における日本の負担は軽いものだったと言えます。 近年、中国の台頭によって、我が国は久しぶりに敵の正面に立たされています。地理的にきわめて近い中国の軍事力増強が日本国内での議論を惹起するのは当然で、S. ウォルトの「脅威均衡論」によると、脅威の度合いは「パワー」・「近さ」・「攻撃力」・「攻撃的意図」の4つの要因によって上下します。「近い」ということは、人の移動や軍事行動といった物理的な影響も大きいですが、なに
北朝鮮で発射の兆候を見せていたミサイルはKN-08ではなく、中距離弾道ミサイル「ムスダン」でした。アメリカの軍事衛星が北朝鮮東部・元山(ウォンサン)付近でムスダンが積み下ろされたことを確認したようです。 北朝鮮は北と西に向けては発射しませんし、現状、韓国上空を通過するルートも政治的に危険過ぎます。不幸なことに、残った東向きの日本上空ルートで試射するものとみられます。 ノドンやテポドンに比べて、ムスダンという名前は聞き慣れない人も多いと思います。これからニュースなどでも取り上げられると思いますので、その時の理解のとっかかりになる程度にムスダン情報をまとめてみます。 中距離弾道ミサイル「ムスダン」1990年代半ば以降、北朝鮮は旧ソ連の技術者を招いて潜水艦発射型弾道ミサイル・R-27をベースにミサイル開発を進めました。R-27は潜水艦から発射するためにサイズを小さくする複雑な技術を採用していたた
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