私は仕事のできる人間だった。少なくとも自分ではそう思っていたし、周囲もそのように言ってくれていた。 新卒で入ったその会社は、いわゆる頭のいい人間がたくさん入ってきていた。自分の頭の良さに自信のあった私は、なんとかしてこの大量の同期のなかで活躍してやろうと鼻息荒く社会人として働きはじめた。 とにかく量をこなし、元気よく、礼儀正しい態度を心がける。 結果はすぐについてきた。一月もすると直属の上司から、半年でその上の人から、名指しで褒められるようになった。書類の量が増えた。上司が企画した仕事に参加させてもらえるようになった。 直属の上司はやたら部下に厳しくて、やたら仕事ができた。男女問わず、上司の机の前で直立不動で叱られている同期を何度も見かけた。いつもピリピリしていて、ミスを指摘して声を荒げることも多かった。部下からの評判は当然よくなかったが、指導の正確さと仕事ぶりで悪評を打ち消しているような