「走る哲学者」為末大氏自身の手による初の書き下ろし、しかも編集担当が元DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐文夫氏ということで、期待値は出版前から否応なしに高まっていたが、実際に本書を読んでみると、それを遥かに上回る内容だった。 私のような昭和生まれ昭和育ちにとってのスポーツは、『巨人の星』や『あしたのジョー』に代表されるような、ただひたすら気合と根性だけで全てを乗り切ろうとする「スポ根」ものだった。それが、やっとイチローやカズの頃から科学的なスポーツに軸足を移し、令和に入って遂に大谷翔平や三笘薫にまで辿り着いたかということで、言い知れぬ感慨深さがある。 スポーツが筋力や精神力だけでないのは、もうかなり前から常識になっており、現在では科学的トレーニングやメンタルトレーニングが盛んである。しかし、それらがどのように一人の「人間」の中に統合されているのか、統合されるべきなのか