一 はじめに 1.法解釈論争 皆さんは、例えば「法学入門」のような授業において、法解釈とは何か、という話を聞いたことがあるだろう。そこでは例えば、法解釈には法創造的な側面が含まれていること、しかしそれは全くの自由であるわけではなく一定の限界を有することなどが講義されるであろう。実は、現在では当然のようにも思われるこのような解釈観が我が国の法学界に受け入れられるようになったきっかけは、「法解釈論争」と呼ばれる1950年代から60年代にかけての論争であった。そしてその先鞭を付けたのが、民法学者の来栖三郎であり、彼の一連の業績の中でもひときわ歴史に燦然と輝いているのが、昭和28(1953)年の私法学会における報告・「法の解釈と法律家」であろう。こうして法学界では、数年間にわたり、法解釈論争が戦われることとなったのである*1。 憲法学界もまた、この法解釈論争と無縁ではなかった。試みに――本連載で何