イアン・ハッキング『確率の出現』(広田すみれほか訳、慶應義塾大学出版会)をとりあえず通読。うーん、個人的にはちょっとノレない感じの訳文で結構苦労したが(続いて読み始めた『知の歴史学』(出口康夫ほか訳、岩波書店)がとてもこなれていることを考えると、なにやら複雑な気分……)、中身はなかなか興味深い。確率の概念がいかに登場したかという問題を扱うだけに、その前史として消えていった別概念とか、競合するパラレルな議論のようなものがふんだんに取り上げられるのだろう……かなと予想していたのだけれど、個人的には確率概念の成立そのものにまつわる部分(同書の後半)よりも、その前史に関係する部分(前半)がいっそう興味深かった(笑)。キータームの一つをなす「蓋然性」(probable)という言葉はもともと、先行する書物の権威による学説を指す言葉だったという。これが転換していくのがルネサンス以降とされるわけだけれど、