前回まで「日本軍の実態」がいかなるものであったか、主に岸田秀の記述を紹介してまいりました。 今回以降は、山本七平の「私の中の日本軍(上)」から、インパール作戦を例に挙げながら日本軍の実態と、その世界を作り上げた「トッツキとイロケ」に関する記述を紹介していきたいと思います。 ■「トッツキ」と「イロケ」の世界 横井さん(註1)が興奮して、思わず「一人斬り」を口走ったときの報道と解説によると、横井さんの手元に「お前なんぞは炊事番で後方にいたくせに……」といった手紙が山積し、それを読んで思わずカッとなって、「俺だって白兵戦をやったんだ」という意味のことを口走ったのであろう、ということであった。 (註1)…元日本兵。太平洋戦争終結から28年目、グアム島で地元の猟師に発見された(wiki参照)。 もっともこの解説が正しいかどうかはわからない。 一見正しそうに見える解説ぐらい危いものはないからである。