「あなたが生まれたことを恨んではいません。 あなたのしたことを恨んでいます。 中島みゆきの『誕生』という歌をいつかどこかで聴いて下さい。 以上です」 永きに渡る麻原彰晃こと松本智津夫容疑者の法廷で、未だにオウム真理教事件を追い続ける滝本太郎弁護士はこう述べたという。 一九九五年、私は当時二四歳で、京都の大学を留年中だった。 やりたいことも目指すものもなく、腐るほどの時間の中で浮遊していた。 ただ不安と劣等感だけが飽和状態で「若さ」の持つ力の使い道を知らぬまま、人と会うことを避けて生きていた。 世界から自分一人だけが取り残されているような焦燥感が絶頂だった頃に、ある朝、大地が揺れ、見慣れた神戸の街が燃え、その数ヶ月後にあの髭ヅラのどう見ても「徳」の無さそうな男を「教祖」と仰ぐ青年達の引き起こした事件が起こった。 秋葉原連続殺傷事件など、世界に疎外されたかのような被害者妄想に取り憑かれ世を呪い