学校に「もの申す」親の位置 柿沼昌芳 【事件の概要】 (1)論語による授業が廃止されて 昨年(二〇〇九年)一二月一〇日、「江戸川学園訴訟『論語』廃止で教育低下せず」という見出しで最高裁判決が報じられた。(『読売新聞』ほか)この事件は、「論語」の講話など独自の道徳教育で知られた茨城県取手市の江戸川学園取手中・高校の生徒の保護者三一人が、「入学後に論語教育をやめたのは不当」だとして、学校に損害賠償を求めた訴訟である。 最高裁は、論語教育を廃止しても、学校の教育理念や教育水準は大きく低下していないとし、生徒の募集の際に学校側が宣伝した教育内容を変更することが不法行為(*)にあたる場合もあるが、「不法行為が成立するのは、学校側の裁量を考慮してもなお、社会通念上、許されない場合に限られる」と判示した。 江戸川学園は論語による道徳の授業を行っていたが、原告の子どもが入学した後の二〇〇四年七月、論語教育