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ブックマーク / saavedra.hatenablog.com (87)

  • 飢饉・間引き・百姓一揆……木枯し紋次郎は江戸天保期の社会矛盾に翻弄された男だった - 明晰夢工房

    木枯し紋次郎(一)~赦免花は散った~ (光文社文庫) 作者:笹沢 左保 光文社 Amazon 「あっしには関わりのねぇこって」──『木枯し紋次郎』をリアルタイムで視聴していない私でも、この台詞くらいは知っている。原作小説を読んでみたところ、この有名な台詞は一巻では出てこなかった。これはドラマ版のオリジナルなのだろうか。とはいえ、小説でも渡世人の紋次郎が堅気の世界とは一線を引いて生きていることに変わりはない。いや、そもそも紋次郎はあらゆる他者と積極的にかかわろうとはしない。第一話『赦免花は散った』を読めば、この紋次郎の虚無的な性格が形成された事情が理解できる。兄弟の契りを交わした仲間に裏切られ、生きる希望を摘み取られた紋次郎は目的もなく、ただ死ぬまでの時間つぶしをしながら流れ歩く男になった。彼にとって人助けはこの世に生きた証を残す手段ではなく、ただの気まぐれでしかないのだ。 だが、裏切られる

    飢饉・間引き・百姓一揆……木枯し紋次郎は江戸天保期の社会矛盾に翻弄された男だった - 明晰夢工房
    kash06
    kash06 2022/05/27
  • ネット炎上の激化は社会比較説・沈黙の螺旋・集団的浅慮などが原因 - 明晰夢工房

    眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学 日文芸社 Amazon kndle unlimitedで『眠れなくなるほど面白い図解社会心理学』を読んでいたら、ネット炎上が激化する原因を解説している箇所があった。このの28ページでは、ネット炎上が加速する原因として「社会比較説」と「集団曲化」をあげている。 社会比較説とは、他者の多くが自分と同じ意見であることで自分の意見に自信を持ち、その考えがより強化されることです。集団曲化(48ページ)は、集団で討論する際、メンバーにリスキーな意見の人が多ければ、集団での意思決定もよりリスキーに、逆に安全志向の人が多いとより安全に偏る傾向のことです。 ネットでは自分と同じ意見をすぐに見つけられるからその考えが強化されやすく、コミュニティは同じ意見を持つ人で固まりやすいから集団曲化もしばしば起きる。攻撃的な意見がコミュニティ内で優位なら、その攻撃性がより強化

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    kash06
    kash06 2022/04/30
    「こうした社会心理学の本を読むと、人がいかに社会から排除されるのを恐れているかがよくわかる。」
  • 平維盛は本当に憶病な武将だったのか - 明晰夢工房

    平家物語 Blu-ray box(特典なし) 悠木碧 Amazon アニメ『平家物語』が6話で富士川の戦いを描いていた。この戦いで平家の大将を務めた平維盛はアニメ中では弟の資盛に「怖がり」と言われており、実際富士川の戦いでは源氏の大軍を前におびえる様子をみせている。舞を得意とする感受性の高さは、戦場においては不利な要素になる。 頼朝と義時 武家政権の誕生 (講談社現代新書) 作者:呉座勇一 講談社 Amazon 『平家物語』での平維盛は、富士川の戦いにおいて水鳥の羽音に驚き逃亡したという、あまりにも有名なエピソードがある。平家軍が水鳥に驚き逃亡したことは『山塊記』にも書かれていることで、平家物語の創作ではない。富士川の戦いの実相はどんなものだったのか。これを知るために、まず当時の戦争の常識を理解する必要がある。『頼朝と義時 武家政権の誕生』では、平家の軍隊の構成についてこのように解説してい

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  • キエフ・ルーシ公国の後継者はウクライナかロシアか──黒川祐次『物語ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』 - 明晰夢工房

    物語 ウクライナ歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書) 作者:黒川 祐次 中央公論新社 Amazon いま注目の既刊、黒川祐次著『物語 ウクライナ歴史 ヨーロッパ最後の大国』。ロシア帝国、ソ連時代を経ても、独自の文化を守り続けたウクライナ書は、スキタイの興亡、キエフ・ルーシ公国の隆盛、コサックの活躍から1991年の新生ウクライナ誕生まで、知られざる「大国」の歴史を俯瞰します。 pic.twitter.com/4O4RsmTzuL — 中公新書 (@chukoshinsho) 2022年1月31日 ウクライナ情勢が緊迫していることもあり、『物語ウクライナ歴史』もまた注目を浴びているようだ。このはあまり他の書籍で取り上げられないキエフ・ルーシ公国に一章を割いている貴重なで、日ではあまり知られていないこの大国の歴史の入門書としても使える一冊になっている。 一言で「ウクライナの歴

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  • 【書評】桑畑がナンパスポット、市場では受刑者の悲鳴……見てきたように秦漢時代の生活を描く『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』 - 明晰夢工房

    古代中国の24時間 秦漢時代の衣住から性愛まで (中公新書) 作者:柿沼陽平 中央公論新社 Amazon こんなに秦漢時代の生活がくわしくわかるはほかにない。当時の人間になりきり、午前五時頃から時間帯ごとに古代中国の民衆の生活を追っていく内容なのだが、扱う対象が幅広く、庶民の服装や生活などから市場や盛り場の様子、果ては夜の営みにまで及ぶので読んでいて飽きることがない。画像も非常に豊富で、この時代の俑から痰壺、尿瓶、張型など下世話なものもたくさんとりあげているので、ビジュアル的にも庶民の生活がよくわかるようになっている。注記も豊富で、とりあげている話題がどの史料を根拠にしているか巻末にすべて記してあるので、この時代をさらに詳しく知りたい読者にも便利。 このでは色恋の話題が多い。古代中国における男女の出会いの場のひとつが桑畑だ。このの9章で書かれている桑畑での出会いの様子は以下のよう

    【書評】桑畑がナンパスポット、市場では受刑者の悲鳴……見てきたように秦漢時代の生活を描く『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』 - 明晰夢工房
  • 【書評】荘園を知れば日本中世史が圧倒的にわかる!伊藤俊一『荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで』 - 明晰夢工房

    荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで (中公新書) 作者:伊藤俊一 中央公論新社 Amazon 学問とは来面白いもの、ということがこのを読むとよくわかる。書『荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで』は、荘園という一見地味で硬いテーマを扱っているが、その中身はといえば古代から中世末期にいたるまでのダイナミックな社会変動、土地制度にまつわる有名無名の人々の営みである。なにしろこの時代、人口の大部分は農民であり、荘園は農民の生活と労働の場であるから、荘園を知ることは中世社会そのものを知ることにもなる。荘園という覗き窓からみえてくる中世社会は、こちらの想像以上に活力と刺激に満ちている。これが面白くないはずがない。 荘園の実態は時代によって異なるが、第二章を読むと、摂関期における荘園は、江戸時代の農村とは異世界といえるほど違っていたことがわかる。天災が頻発し、古代社会の秩序が破壊されるなか、台頭

    【書評】荘園を知れば日本中世史が圧倒的にわかる!伊藤俊一『荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで』 - 明晰夢工房
  • 【書評】山本博文『殉教~日本人は何を信仰したか~』(kindle unlimited探訪4冊目) - 明晰夢工房

    殉教~日人は何を信仰したか~ (光文社新書) 作者:山 博文 光文社 Amazon これはキリシタンの殉教の様子をくわしく記録した貴重な一冊だ。一読して驚くのは、キリシタンたちの宗教的情熱の強さだ。彼らは微塵も死を恐れない。捕まれば火刑になるとわかっているのにみずから名乗り出て殉教したがり、今まさに火刑のおこなわれている現場で殉教の様子に感激し、一緒に処刑されたがる者まで出てくる。信仰心の強い者だけが記録に残っているのかもしれないが、それにしたってこうして一冊のにまとめられる程度には、殉教したキリシタンの例は多いのだ。何が彼ら彼女らをここまで強い信仰心に駆り立てているのか、という疑問を持ちながら、読者はこのを読みすすめることになるだろう。 キリシタンたちの信仰心の強さは、武士道にも通じるものがあるように思える。実際、このでは第3章で、武士のメンタリティが信仰心と関係していたことに

    【書評】山本博文『殉教~日本人は何を信仰したか~』(kindle unlimited探訪4冊目) - 明晰夢工房
    kash06
    kash06 2021/11/24
    「殉教できなかった人々は、恥や罪悪感を感じただろうか。感じたとして、その心を救える教えがこの時代にあっただろうか。」島原天草の乱で立ち返りのキリシタンが多くいた事に、一部は通じるのかもしれない。
  • 【書評】総勢31人の武人の生涯から南北朝時代を俯瞰できる『南北朝武将列伝 南朝編』 - 明晰夢工房

    南北朝武将列伝 南朝編 戎光祥出版 Amazon 楠木正成や新田義貞・北畠顕家など有名どころから、南部師行・諏訪直頼などちょっとマイナーな人物まで南朝を支えた人物を網羅した。「武将列伝」なので後醍醐天皇や後村上天皇の列伝はないが、執筆陣は全員が日史の専門家なので安心して読める。北条時行の列伝もあるので『逃げ上手の若君』のネタバレをされたくない人はここだけ飛ばしたほうがいいかもしれない。 このは東日から順番に南朝の武将を取りあげているが、「東国武将編」を読むと東北地方が南朝にとって重要な拠点だったことがわかる。後醍醐は北畠顕家を奥州に下向させ、南部師行や南部政長がその統治を支えていたが、顕家はともかくこれら南部氏の活動をよく知らなかったので、かなり楽しめた。師行が拠点とした根城は有名だが、この名称の初出は1618年であり、当時は「八戸城」と呼ばれていたらしいこともこのではじめて知っ

    【書評】総勢31人の武人の生涯から南北朝時代を俯瞰できる『南北朝武将列伝 南朝編』 - 明晰夢工房
  • 【感想】「うつヌケも運のうち」なのか?田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』 - 明晰夢工房

    うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 【電子書籍限定 フルカラーバージョン】 (角川書店単行) 作者:田中 圭一 発売日: 2017/01/19 メディア: Kindle版 サンデルの新刊『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が話題だ。一見実力で勝ちとったようにみえる社会的成功に、実は運が大きくかかわっている。このことをサンデルほどの有名人が指摘した意義は大きい。ところで、心の病が治る、快方に向かうことも一種の「成功」だ。だとすれば、「うつヌケも運のうち」なのだろうか。 『うつヌケ』のアマゾンのレビュー欄をみてみると、否定的な評価が少なくない。こので取り上げられている人たちは抜きんでた才能を持っていたり、理解あるパートナーに恵まれている幸運な人たちではないか。自分もうつを患っているがそんな幸運とは無縁だ、なんの参考にもならない……というわけである。今うつの真っただ中にある人はどうしても

    【感想】「うつヌケも運のうち」なのか?田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』 - 明晰夢工房
    kash06
    kash06 2021/05/15
    なかなか慎重に書かれた本なのだなぁ、そしてこの感想もまた配慮に目が行き届いた書評なのだろうな。
  • 【書評】殷の女性兵士から兵馬俑の髪型の秘密まで、古代中国史の最新知見を得られる『戦争の中国古代史』 - 明晰夢工房

    戦争中国古代史 (講談社現代新書) 作者:佐藤信弥 発売日: 2021/03/17 メディア: Kindle版 古代中国史の入門書として文句なしにおすすめできるが出た。書『戦争中国古代史』はタイトル通り軍事についての記述が多いものの、殷~前漢の政治史を要領よくまとめているので古代中国史の概説書としても使える一冊になっている。古代中国史の最新知見を盛り込みつつ、殷の女性兵士や武霊王の「胡服騎射」改革の真の目的、「宋襄の仁」が当時の「軍礼」に基づく行為だったことなど、興味深いトピックを数多くとりあげているので、中国史に少しでも関心のある人なら楽しく読みすすめられる内容になっている。 以下、興味を引かれた内容についていくつか紹介する。 殷に「女性兵士」は存在したか 殷の王妃・婦好は「戦う王妃」として有名だ。実際に彼女と軍事とのかかわりを示す甲骨文が出土している。だがこのによれば、殷代に

    【書評】殷の女性兵士から兵馬俑の髪型の秘密まで、古代中国史の最新知見を得られる『戦争の中国古代史』 - 明晰夢工房
  • マギレコのPAPA先生が描く武田信虎のマンガが面白い - 明晰夢工房

    なんと平山優先生監修の武田信虎のマンガがツイッターに投稿されていた。描いているのはマギレコでお馴染みのPAPA先生。信玄のパパだからPAPA先生という人選?かわいい絵柄なのに内容は格派だ。 こちらのマンガ「信玄のパパ 武田信虎のほんとの話」は、信虎公の功績を今に伝えるべく、令和元年7月より当所HP・会報誌で連載中です。(3月10日号で最終回😲❗️) 武田氏研究の第一人者である平山優先生の(@HIRAYAMAYUUKAIN)協力、漫画はマギレコでお馴染みPAPA先生(@papa0123)の最強タッグです。 pic.twitter.com/2YuhNKfzxa — 甲府商工会議所 (@kofu_cci) 2021年3月5日 弱冠14歳で武田家当主になり、翌年に坊ヶ峰の戦いで反乱軍を撃破する信虎。天才かな?実際に指揮していたのは家臣の誰かかもしれないけどすごい。 こちらのマンガ、とても当所の

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    kash06
    kash06 2021/03/07
    まとめて読んだら面白かった! 平山優氏監修とは、流石……PAPA氏は南アルプス市在住だそうですね。 https://kofucci.or.jp/event/20191125/
  • 【感想】佐藤巖太郎『会津執権の栄誉』 - 明晰夢工房

    会津執権の栄誉 (文春文庫) 作者:巖太郎, 佐藤 発売日: 2019/07/10 メディア: 文庫 渋い。この一言につきる。作は会津芦名家の興亡を描いた連作短編だが、それぞれの作品の主人公は皆あまりなじみのない人物で、大河ドラマの主人公になるような華々しい活躍をした人物ではない。しかしそれだけに、北に東北の雄・伊達政宗という強敵を抱える芦名家の苦悩を、読者はリアルに体験できる。芦名家は佐竹家から当主をむかえているため、佐竹家から家老も一緒に乗り込んできているのだが、この家老と芦名家の古くからの家臣との対立に芦名家は揺らいでいる。加えて、血族の猪苗代盛国には伊達家から調略の手が伸びてきている。六人の主人公の目を通じて描かれる、内憂外患に悩む芦名家の姿には、多くの読者が共感を覚えるだろう。これらの主人公は、皆それぞれ懸命に生きているのに、ままならない運命の波に呑まれていくからだ。胸のすく英

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    kash06 2020/06/01
  • 【感想】ケン・リュウ選『現代中国SFアンソロジー 月の光』 - 明晰夢工房

    月の光 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:劉 慈欣 発売日: 2020/03/18 メディア: ハードカバー 一言で中国SFといっても多様だ。とはいえ、中国ならではのSF作品というものもやはり存在する。当人もすぐれたSF作家であるケン・リュウが「わたしがその作品を楽しみ、注目に値すると考えた」作品を集めたこのアンソロジー作品集にも、中国史を題材とした作品がいくつか載っている。これらの作品は、SFファンだけでなく中国史に興味を持つ人も楽しめるものではないかと思う。 冒頭から2番目に収録されている『晋陽の雪』は、五代十国時代の北漢を舞台にした作品だ。もちろんSFなのでただの歴史小説ではなく、この作品にはさまざまな未来のテクノロジーが登場する。かなり遊び心のある作品で、ライトセイバーやレイバンのサングラスまで登場している。「網洛」という古代中国版インターネットのよ

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    kash06 2020/05/18
  • 【麒麟がくる17話感想】そして、道三は伝説になった - 明晰夢工房

    www.nhk.or.jp 『麒麟がくる』17回「長良川の対決」は大河ドラマ史上、長く語り継がれるであろう回になった。第1回からていねいに積み上げられた斎藤道三・高政父子の相克の物語は、ついにここに決着を見た。長良川河畔に鳴り響く陣太鼓のリズムが悲壮感を盛り上げ、一騎で高政の陣へ突進する道三の姿も鮮やかに目に焼き付く。脚音楽・映像のすべてが見事に決まっていた。 戦国の合戦で一騎打ちなど、まずありえない。それでも高政に一騎打ちを挑む道三に違和感を感じないのは、道三が高政に父殺しの汚名を着せる、という捨て身の策に出たことが描かれていたからだ。もともと、高政は道三を生け捕りにせよと命じていた。稲葉良通が指摘していたとおり、この戦いで父を死なせては外聞が悪い。信長にも弔い合戦の口実を与えかねない。それをわかっているからこそ、道三はなんとしても高政を挑発し、自分を討つよう仕向けなくてはならない。

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  • 日本史リブレット『蝦夷の地と古代国家』に見る蝦夷アイヌ説と蝦夷非アイヌ説 - 明晰夢工房

    蝦夷の地と古代国家 (日史リブレット) 作者:熊谷 公男 発売日: 2004/04/01 メディア: 単行 古代蝦夷とは何者かを考えるとき、蝦夷はアイヌなのかそうでないのか、が古くから考察の的となってきた。だが、この問いははっきり二者択一で答えを出せるものではなさそうだ。では、蝦夷をどうとらえればいいのか。日史リブレット『蝦夷の地と古代国家』を読めば、この問題を考えるうえで有力な手がかりを得られる。 書では、蝦夷アイヌ説と蝦夷非アイヌ説について、それぞれの問題点を簡潔に指摘している。まず前者については、蝦夷が稲作や馬飼など、アイヌとは異なる文化を和人から受け入れている点、蝦夷に関する文献資料が蝦夷を「化外の野蛮人」とみる偏見にとらわれている点などをあげている。 そして後者については、東北地方北部には「ナイ」「ペツ」などのアイヌ語系地名が多数存在すること、蝦夷の居住地域では続縄文土器

    日本史リブレット『蝦夷の地と古代国家』に見る蝦夷アイヌ説と蝦夷非アイヌ説 - 明晰夢工房
    kash06
    kash06 2020/05/11
    古代蝦夷(えみし?えぞ?)という特定の時代・地域において活動した人々が、どこに連なるかを考える時、北海道アイヌという固有パターンとの相違だけで計るものではない、という話にもなろうか。
  • 【感想】中村光博『「駅の子」の闘い 戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史』 - 明晰夢工房

    「駅の子」の闘い 戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史 (幻冬舎新書) 作者:中村 光博 発売日: 2020/01/30 メディア: 新書 2010年、「伊達直人」を名乗る人物から児童福祉施設に寄付が行われる「タイガーマスク現象」が起きた。「伊達直人」からプレゼントが届けられた児童養護施設「鐘の鳴る丘 少年の家」の事務室には、磨きをしている少年たちの写真が飾られている。この少年たちは戦争孤児だ。伊達直人ことタイガーマスクは孤児院の出身という設定だが、「伊達直人」が寄付をしたこの施設にも、かつては戦争孤児が存在していた。書『「駅の子」の闘い 戦争孤児たちの埋もれてきた戦後史』では、この施設に飾られている写真に写っている元戦争孤児へのインタビューも掲載されている。 写真の中で磨きをしていた戦争孤児のひとりが伊藤幸男さんだ。伊藤さんは大阪で空襲に遭い、後に母も過労で逝ったため10歳で放浪生活に

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  • 太古の昔、ブログは「文学」だった。 - 明晰夢工房

    p-shirokuma.hatenadiary.com amamako.hateblo.jp 今日はこちらのエントリを読んで思ったことなどを。 ブログに商業化の波がやってくる前、この世界はただリアルには出せない、自分の思いのたけをぶつけるだけの場所だったように記憶している。もちろん観測範囲の問題はあるし、以前から商売のためにブログを書いていた人も、ブログを書籍化した人がいることも知っている。だが総じてブログ空間は、ただ書きたいこと、訴えたいことがあるから書く、という人が多くを占めていたように思う。 はっきり空気が変わり始めたと感じたのは、「ブログで自分語りなどしてはいけない」と主張する人たちが出てきた頃からだ。需要のないエントリなど書いてはいけないということだ。自分が書きたいかどうかではなく需要があるか、要はお金になるかが一番の関心事、という人たちが増えてきた。ブログをどう書こうと自由なの

  • ブログで自分語りをしてもいいという話と、感想コンテンツの特殊性について - 明晰夢工房

    ブログで自分語りをしてはいけないのか問題 ついさっき、ちょっと思うところがあって、「ブログ 自分語り」でぐぐってみました。 すると案の定というか、出てくるブログに書いてあることはほぼほぼ「ブログで自分語りなんてするな」の一色でした。 いわく、芸能人でもない人の個人的な話なんて誰も興味ない、ブログは読者に価値ある情報を提供するものだからそんなこと書いたらダメ、それより読者の興味に寄り添うべき云々。 いや、お説はいちいちごもっとも。 たぶんこんな感じのことが書かれているんだろうなあ、と予想はしていましたが、だいたい思った通りのことが書かれていました。 自分語り、嫌われたものですね。そりゃそうです。貴方のことなんて誰も興味ないよ、と言ってるその人たちの大部分は、ブログで集客し、お金を稼ごうとしてる人達でしょう。その立場からすれば、それこそ自分語りなんてなんの役にも立たない。いやむしろ有害なんだ、

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    kash06
    kash06 2020/01/27
    ネットの流行も確かにわかっていて「商業化」と言われる流れも知っているのだけど、でも私は「はてなダイアリー」と呼ばれたサイトで日記を書いていたのだから、私の書けるweblogをし続ける事になると思うのです。
  • 蝦夷の領域に築かれた最北端の古代城柵・秋田城を訪ねる - 明晰夢工房

    秋田市の秋田城跡と資料館を訪ねてきた。写真は昨年10月に撮ったもの。 秋田城の歴史は古く、733年に出羽柵が建設され、760年に秋田城と改称されている。 ここには復元された秋田城の城壁含め、当時の政庁そのものが公園の中に含まれている。 秋田城は軍事施設であり、行政機関でもあったといわれるが、この城壁は役所の外壁といった印象が強い。秋田城は蝦夷の饗応の場であったともいわれるが、蝦夷もこの門をくぐっただろうか 壁の向こうの高清水公園は市民の憩いの場となっている 資料館と城壁との間には、政庁のミニチュアが飾られている この場所には秋田場内を東西につらぬく大路があった。小規模であっても大路というあたり、京文化をこの地に持ち込んだという意識があったということだろうか 秋田城に用いられた瓦。瓦はこの時代、ごく限られた施設にしか使われていない。律令国家の威厳を示すために瓦が用いられたようだが、当時秋田城

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  • 【感想】金成隆一『ルポトランプ王国2 ラストベルト再訪』と南部白人の「ディープ・ストーリー」 - 明晰夢工房

    ルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書) 作者:金成 隆一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/09/21 メディア: 新書 前作に引き続き、大変読みごたえのあるルポだった。著者はラストベルトと郊外、バイブルベルトの3カ所を訪ね歩き多くのトランプ支持者へのインタビューを行っているが、できるだけ著者の主観を交えずに支持者の生の声を拾っているので、そこから「トランプ王国」の姿が立ちあがってくる。 どのインタビューも興味深いものだが、書の中では2のロング・インタビューが特に内容が濃い。これはアメリカの「今」を知るうえでは必読ではないかと思う。特に二人目のアーリー・ホックシールドのインタビューは、アメリカ南部の保守的な人々の心性をよく説明してくれている。 ホックシールドによれば、これらの保守派の人々の心の奥底に流れる「ディープ・ストーリー」が存在するという。これは、

    kash06
    kash06 2019/12/15
    誰かが声を上げる・拾い上げる事をしない限り、なかなか前進することのない属性による差別の問題がありつつ、属性によらず直面して支援が必要な経済的な問題も無視できない(…後者に宗教的で普遍的な救済を想起した