ブックマーク / www.city.kobe.lg.jp (67)

  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「最終回 避けた小道」

    細い路地の向こうには日が当たっていて、やわらかい光の中に黒と、ぶちの2匹のが、体をくっつけて昼寝をしている。私は自転車で先を急いでいたのだけれど、視線の先のあまりにも完成された景色に遠慮して、どのような理由があってもそれを壊してはいけないような気がするから、遠回りして別の道を走った。 あたたかい日の午後。数匹の野良が路地の真ん中で堂々と寝そべっている時間帯を私は知っている。その時はこうやって遠回りするんだ。でも、通らなかったという事によってなおさら、私の中には避けた小道の情景がありありと浮かぶ。日が当たっている。身を寄せてが寝ている。近所のおじさんもおばさんも、を避けて歩いている。 久しぶりに銭湯に行った。 今はどこにでもタブレットやスマホを持ち込む生活習慣になっていて、風呂やトイレでも何かを読んだり何かを書いたりしている。布団に入る時でさえもスマホを手放さずに、暗い部屋で電子書籍

    神戸市:ごろごろ、神戸3「最終回 避けた小道」
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    yauaa 2019/04/18
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第22回 ラーメン屋でセットメニューを注文した時の時間差到着問題」

    みなさんこんにちは。 遠くのほうに座っている方も聞こえますか? すいません、マイクの音量を少し上げる感じで、はい、もう少し。 はいはいこれでOKです。 ごめんなさい、声が小さくて。 さてあらためまして、こんにちは。 今回は「ラーメン屋でセットメニューを注文した時の時間差到着問題」についてお話させて頂きます。 みなさん、今日のお昼は何をべましたか? あるいは、これから何かべられる方もいらっしゃるかと思います。 うどん、とんかつ、寿司、カレー? はいはい、違います。 みなさんがべていいのはラーメンセットだけです。 扉をあけて、入るのは町の小さな中華料理屋。 のれんには「ラーメン」「中華料理」 神戸だったら「中華」なんて書かれているお店も多いですね。 このような個人店は調理をおやじ一人でやっている場合が多いので、カウンターに座ってセットメニューを注文した時に、私たちは必ずひとつの問題に

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第22回 ラーメン屋でセットメニューを注文した時の時間差到着問題」
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    yauaa 2019/03/21
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第21回 高菜炒めつくろう」

    妹から姉に「雪だるまをつくろうよ」と呼びかけるのは、映画『アナと雪の女王』においては「(姉さんの)魔法をつかって遊びましょ」というサインだ。姉のエルサはどんな時だってそう言われれば仕方ないなあと、指先から氷を飛ばしたりお城の中に雪を降らせたり地面を凍らせたりして相手をしてくれる。でもある時からとつぜん、大好きな姉が自分を避けるようになってしまった。アナにはその理由がわからない。 理由がわからないまま愛する人から関係を絶たれるほど、残酷なことはないだろう。 姉のエルサは、過去に氷の魔法を誤って妹にぶつけてしまい、そのせいでアナは傷つき意識を失ってしまう。エルサはうろたえ、両親からは力や感情を制御して生きることを要求される。自分のせいで重体となった妹は、妖精トロールの力によって無事に意識を取り戻す事は出来たが、代償として姉の魔法に関する記憶はすべて消去されてしまった。エルサは妹にその事を伝える

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第21回 高菜炒めつくろう」
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    yauaa 2019/03/06
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第20回 コロッケのおいしさについて」

    二十代で自炊生活を始めた時、おい、これどないなっとんねんと驚いたのは、自分で作った筑前煮がめちゃくちゃにおいしかったことだ。ダシはスーパーで買った粒状のもの。調味料も醤油、砂糖、酒、みりんくらいで、特別な材料は何も使っていない。当時はパソコンもなかったから図書館料理を借りてその通りに作っただけだと思う。しかしそうして出来たごく普通の筑前煮は、これまで家庭や学校給べたものとは別次元の味だった。なんだこの深みは。なんだこの重厚感は。などと考えてみたところで、コイツがおいしく感じられる理由はひとつしかない。自分で作ったからである。 いままでは他人が作ってくれたものをべることしか知らなかった。けれど一人で八百屋に行って材を買い、部屋に帰ってそれを切り(野菜にはそれぞれの切り方があることを学び)、炒め、味をつけ器に入れ、その後の洗い物も含めて料理の全工程を自分の責任でおこなうことで、

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第20回 コロッケのおいしさについて」
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    yauaa 2019/02/20
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第19回 思い出すのは神戸のことばかり(神戸名所案内)」

    おととし「一時間で神戸案内」を書いて湊川エリアの商店街や市場を軽く紹介してみたら、思いのほか多くのリアクションを頂いた。「ごろごろ、神戸2」で書いていた場所に行ってみたよ、などと言われるといくら性格がねじくれた私でもうれしいものだ。それも他府県から旅行でやって来た人が貴重な時間を割いてまでそんな事をしてくれるなんて格別である。もしかしたら、このような変な広報ブログを読んでいる人は、私が案内する決してアッパーとは言えない、ちょっとくたびれたおっさんの若干フケの落ちた背中みたいな神戸を歩きたがっているのではないか。なに? 書いたらその通りに行ってくれるって? だったら調子に乗って他の場所の事も書いてみるかと、そんな気になったのである。というわけで今回は、年始の寿司屋巡りで金を使い過ぎたので金がかからない神戸案内をしたい。途中でおなかがすいたら大きく息を吸い込んで、空気をべる。 まず最初は、昨

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第19回 思い出すのは神戸のことばかり(神戸名所案内)」
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    yauaa 2019/02/06
    最高
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第17回 神戸鉄火巡礼」

    私には、この世に生まれて来た瞬間の記憶がある。 産声を上げる事も忘れ、外界の眩しさに耐え、 この問題を解決しないと自分は先へ進めないぞと、 出てきたばかりの体をタオルで拭かれながら黙考していたのだ。 それは「ビールに一番合うつまみは何か」という問題である。 あれから四十数年。結局私はどこへも行けないまま、ある日新開地にある老舗酒場『丸萬』のカウンターで大将の包丁さばきをぼんやり眺めていた時に突然体を電流が駆け抜け、答えがわかってしまったのだ。 ビールに一番合うつまみ。それは鉄火巻である。 「大将、てっ鉄火巻ください!」 私は急いでそのように注文し、追加でビールもたのむ。 ここは大将の動きが見える特等席。漬け物をアテに、注いだビールをちびちび飲みながら、海苔にシャリを敷きマグロを隙間なく並べ、巻いた後包丁が音立ててサクッサクッと入る様子を見ながら、 私は知らず知らずのうちに涙を流していた。

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第17回 神戸鉄火巡礼」
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    yauaa 2019/01/10
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第16回 ふれあい荘のナイトくん」

    小津安二郎監督『東京暮色』は物語に救いがなさすぎるのでもう二度と見たくない、そう思いながらもつい繰り返し見てしまう作品で、それにしても恋人にだまされ深夜喫茶で補導され身も心もぼろぼろで家に帰って来た明子に対し父の周吉が「そんなやつはお父さんの子じゃないぞ」とまで厳しく叱ってしまったのがつらい。もちろん「そんなやつはお父さんの子じゃないぞ」などと周吉は断じて思っていない。母が家を出てからは父親ひとりで誰よりも明子を可愛がって来た、そんな自負があるからこそ出た愛情の裏返しだとわかるけれど、傷ついた明子にはその愛情の部分は通じなくて、あくまでも「そんなやつはお父さんの子じゃないぞ」という言葉の表層だけが届き、心をえぐってしまう。やがて二階の寝室で姉の孝子と肩を並べて座り「あたし、余計な子ね」「あたし、生まれて来ない方が良かった」と吐き出す言葉は先ほどの周吉の叱責と反響し合って、劇中いつまでも明子

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第16回 ふれあい荘のナイトくん」
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    yauaa 2018/12/19
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第15回 ミナイチ・エレジー」

    雨の降る日はあまり外出したくないけれど、どうしても外に出かけると言われては仕方がない。 子供用と大人用、傘を2用意して外に出て、雨の日にはいつもするように、傘を差している時に頭の上で間近に響くビニールにあたる雨の音と、その傘をさっと地面に下げた時に周囲のアスファルトから響いてくる雨の音が、同じ雨の音なのにまったく違っていてそれがとてもおもしろいのだ、という事を教えようとするけれど、今の彼女はそのような話にはまったく興味がなくて、反響する雨の音などはつまらないとでも言うように、私の言葉や大げさな身ぶりから逃げ出して駆ける。それでもすぐ、自分の足で歩くのに飽きた、傘を差すのにも飽きたと言うから、結局はほとんどの道中を肩車しながら手を伸ばして傘を差し、えっちらおっちらと歩く。湊川商店街まで来ればアーケードがあるからもう傘は必要ない。以前は毎日のようにしていた肩車も最近は回数が激減して、終わりが

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第15回 ミナイチ・エレジー」
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    yauaa 2018/12/05
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第14回 「お手伝いをしましょうか」」

    阪神電車の元町駅西口。改札を入って、ホームへ降りる階段の手前あたりに「お手伝いをしましょうか」というメッセージとどこか懐かしいタッチの絵が壁に架けられている。架けられているというよりも、外すのを忘れてそのまま残っていると言ったほうがよさそうな風情のそれには、車椅子に乗った人を駅員さんも含めて通りがかった乗客が4人でかついで階段を上がる、そんな光景が描かれている。いま同じ場所にはエレベーターがあって必要な乗客はそちらを利用するので、絵はそれ以前の、ここに階段しかなかった時代の名残りだろう。 25年から30年ほど前か。私が毎日電車を使っていた十代の頃は、このような場面は特に珍しいものではなかった。ホームの階段の手前に車椅子の人がいる。するといつの間にか乗客が3人4人と集まって、かついで移動する。私自身そこでは何か特別な親切をしているつもりはなく、自然な風景としてそんな行為がある感じで、車椅子だ

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第14回 「お手伝いをしましょうか」」
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    yauaa 2018/11/22
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」

    前々から受講したかった灘大学に今季ようやく申し込む事が出来た。さっそく初回の講義では、当地で創業90年になる萩原珈琲さんの歴史を学ぶ。今まで知らなかったのだが、会場である原田資料館の近くには大正13年からの歴史ある和田市場がかつて存在して、萩原珈琲はそこから始まったのだという。会社沿革を見ると当時の所在地は武庫郡西灘村字原田620。質疑応答の時間になるとかつて和田市場に暮らしていたという年輩の方が挙手をされて、先代先々代がいた頃の市場の様子をありありと語っておられた。 なくなった市場について話す。もしかすると、神戸に暮らしている限り、いつか自分もそのような立場になるのかもしれない。そんな事を考えながらの帰り道、駅近くの交差点のあたりで突然、女性の悲鳴が聞こえたのだった。 これは何事かと思い周りを見渡すと、視界に入ったのは犬のリードを持って呆然とする女性と、少し離れた場所にはリードが外れた状

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」
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    yauaa 2018/11/07
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第12回 ビッグ赤ちゃんイカリ山」

    朝から晩まで赤ちゃんのオムツ換えに追われていた時期、私は毎日のように大丸百貨店前の「元町通1丁目」と書かれた交差点に立っていた。当時はすぐ近くのファッションビルの地下に、なぜか小さな子供たちの遊び場である「キドキド」がテナントで入っていたので、私たちは元町駅を出てまず大丸百貨店で弁当を買ったり屋上で豚まんをべたりして遊び場へ向かう。帰り道はまた大丸をのぞいて元町駅へ、そんな小さな三角形を行ったり来たりする生活を送っていたのだ。だから今でもこの交差点に立つと、過ぎた日々を思い出してせつない気持ちになる。 キドキドが閉まるのが夜の7時。ビルを出るとすっかり日は落ちていて、私たちのような子連れは繁華街にはあまりいない。ここからは仕事が終わったサラリーマンや、連れ立って飲みに出かける若い人たちの時間だ。いつものように大丸の地下料品コーナーで惣菜が割引になっていないかをチェックしに行く。そして百

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第12回 ビッグ赤ちゃんイカリ山」
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    yauaa 2018/10/17
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第11回 なつかしさと、都合良さと」

    どういった会話の流れだったのか、酒場で「いま旅行するならどこがよい?」というような話題になって、私は「キューバだと思う」と即答した。親米政権から一転、1959年の革命からアメリカと国交断絶する流れがあって、アメリカ文化の受容という意味では半世紀以上、時間が止まっている部分がある。建物はコロニアル建築の昔のものがそのまま残っていて、1950年代の米国車が今も現役で街を走っている。年齢を重ねた人間の顔に皺(しわ)が刻まれるように、道路や建物や乗り物にも皺があって、首都ハバナに漂う「街の皺」は特別なものだと思った。 ……なんていう話を酔いも手伝って、滔々(とうとう)としゃべり続けた。 古くからある街なみが好きだ。高倉健が主演する『ならず者』(1964)には半世紀以上前の香港がこれでもかと写されていて、ストーリーとは全く関係のない外の風景ばかり見てしまう。主人公が最初の任務を遂行し、車で走り去る時

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    yauaa 2018/10/04
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第10回 いつまでもそのままで」

    先週、神戸新聞に3つの気になる記事が出ていた。三宮の駅前再開発と須磨海浜水族園および周辺再開発、神戸最大の個人商店密集エリアにあるミナイチ営業終了とビルの建て替え。どれも初めて知った話ではないのだが、こうも大きな再開発にまつわる記事を立て続けに読んでしまうと、さすがにこれからの数年で神戸の景色はずいぶん変わるだろうなと、考えこんでしまった。 三宮は書いた事はないが、他の2つは何度も『ごろごろ、神戸』で取り上げているなじみ深い場所だ。 神戸三宮の高層ツインタワー 屋上庭園に「世界一美しい図書館」(9月12日) 須磨水族園と周辺を再整備 ホテル、カフェ集客狙う(9月13日) 前身から100年 庶民の台所ミナイチ営業終了へ(9月13日) これらのニュースに合わせて、元町高架通商店街(モトコー)の再開発や、旧中央卸売市場跡地に昨年巨大なイオンモールが出来た事、あとは近年各地で老朽化した市場が取り壊

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第10回 いつまでもそのままで」
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    yauaa 2018/09/19
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第9回 海の家、20号、21号」

    メリケンパークとハーバーランドの中間地点、遊覧船が発着する中突堤中央ターミナルに行くと、何をどうすればこんなになるのかというくらいに、岸壁のフェンスが折れ曲がっている。被害を受けているのは一部の箇所だけで、遊覧船乗り場やフェンスの他の部分は通常通りなので、おそらくこれは被害を受けたフェンスの下に係留されていた屋形船が台風20号の暴風で舞い上がり、なんども衝突した跡ではないだろうか。屋形船は大破していた。 買い物に行く先の肉屋さんは店を守るシャッターが丸ごと吹き飛ばされてしまい、8月末で営業を終える事が決まっていた50年以上の歴史がある老舗喫茶店は、閉店1週間前にして外壁が大きく崩れ落ちた。 神戸にいると海や山が近いからか台風の被害をずいぶんと身近に、目に見える形で感じるようになった気がする。 10年ほど前のこと、東京で引っ越し作業員のアルバイトをしていた時に、ゴミとして出されていたスケート

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第9回 海の家、20号、21号」
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    yauaa 2018/09/05
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第8回 保久良山」

    ビールでも飲もうかと、海の家を横目で見ながら砂浜を歩く。 しかしこれだけ暑いと注文したところですぐにヌルくなりそうやと、そのまま通り過ぎた。 8月の海水浴シーズンの浜辺で見られる光景に対して、あんなん身体がベタベタするだけやとか、着替えがめんどくさいとか、うしろ向きな気持ちばかりが前面に出てくるようになったのはいつの頃からか。 妄想たくましく出会いを求め、アルバイト情報誌で海の家の仕事を探していた高校生の頃がなつかしい。 (探していただけだが) あの頃は恋の予感だけで白米を5杯はべる事が出来たのだ。 しかし今、あれほど憧れた海が身近なものとなったのに、私はすっかり枯れた人間になっている。 海で遊ぶ水着姿の若い男女。海の家で働く若者の笑顔。 何もかも紗がかかったように非現実的で、私はただ、早く家に帰って涼しい部屋でゲームがしたいと思っている。 ビールを飲んでも身体がだるくなるだけだ。 夕方

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第8回 保久良山」
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    yauaa 2018/08/16
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第7回 中華冷や汁研究」

    酷暑が続くため「冷や汁」を家の定番メニューにしようと思い作り方を調べていたら、どうやら余った味噌汁を冷蔵庫で冷やしてご飯にぶっかければそれでOK、といった単純な話ではないらしい。 非常に手間がかかるのである。 何せいきなり「まず、味噌に焼き目を作る」なんて書いてある。 そして「皮と骨を取り除いたアジの干物をすりこぎで細かくして」なんて書いてある。 これは「簡単!チャーシューの作り方」みたいなレシピを見ていたら、最初に「お肉をタコ糸で縛る」と書いてあるような、目にした瞬間にズコーッとなるハードルの高さ。 まさに、作ってくれるなと言わんばかりのややこしさだ。 家庭料理は手間を省いてナンボ。時間との勝負である。 私はめんどくさくなって、味噌を使った冷や汁を2秒であきらめ、方針を転換し中華風冷や汁を作製する事に決めた。 というわけで、まずは最近新開地の路上でおじさんが手作りしている謎の紙粘土人形

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第7回 中華冷や汁研究」
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    yauaa 2018/08/01
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第6回 反響」

    「イルカの頭にあるコブは、ある果物の名前で呼ばれています。それはスイカでしょうか? メロンでしょうか?」 「スイカだと思う人!!!」 (メロンもあり得ないが、スイカはさらにあり得ない気がする……) 「メロンだと思う人!!!」 そんな消極的な理由から、私はメロンの方に手を挙げた。 「正解は、メロンです!!! イルカは脂肪で出来た頭部のメロンから音波を飛ばし、その反響によって周辺を認知するエコーロケーションと呼ばれる能力を使って生活しています」 須磨海浜水族園で行われるイルカライブ(ショー)では、いつもオープニングのパフォーマンスの後に、観客に向けてイルカにまつわるクイズが出される。正解して何かがもらえるわけでもないのだが、ライブが終わるごとにイルカに関する豆知識が増えて行くという楽しい時間だ。 「イルカの妊娠期間は人間よりも長いでしょうか? 短いでしょうか?」 「赤ちゃんイルカに生えているの

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第6回 反響」
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    yauaa 2018/07/19
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」

    ショッピングモールや駅や公園などの公共空間で、人目をはばかる事なく大きな声で子供を怒っているお母さんを見かける事がある。そんな時、子供がかわいそうだと非難する気持ちよりも先に、感情が決壊してしまった母親への同情が先に立ってしまい、彼女に対して、今がふんばりどころやからなんとかおだやかに、深呼吸してがんばろうや、などと心の中で声をかけずにはいられない。 理屈だけで言うならば、意のままにならない自分よりも小さな存在に対し声を荒げても仕方がない。しかしそんな事は当人が誰よりもわかっているはずで、ひとりの弱い人間でしかない私たちは時として、自分の感情すらコントロール出来なくなる事がある。育児はどっぷりつかればつかるほど闇と隣り合わせだ。余裕を失ったあのお母さんの追い詰められ方は、我が事のようにきついなと胸が痛む。 十代の頃、東京の山手線に乗っていた時、女装している男性が突然目の前に座っている女性の

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第5回 視線」
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    yauaa 2018/07/04
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第4回 日々」

    散歩道の地面に、見慣れない迷彩柄の蛾がとまっている。一人なら気にする事もなく通り過ぎるが、子供が横にいたので立ち止まり、「大きいチョウチョがおるでえ」と一緒にしゃがみこんだ。子供は初めて出会う昆虫を前にとまどったような態度を見せ、何を思ったのか手に持っていた人形を前に並べ出し、対戦(?)の準備でも始めているようだ。 何をしたところで蛾はめったな事では動かない。やがてこちらの手をとって「(蛾を)つんつんして」と要求され、お前がやれよと思いながら仕方なく指を出してみたものの、びびってすぐに引っ込めてしまい、思えば自分にもカマキリやバッタやコオロギ、トカゲやカエルといった小さな生き物たちを見て、頭で考えるよりも先に手をだして触っていた子供時代があったと考えた。だんだんとそんな接触もなくなり、大人になった今では小さな虫をさわる事にすら抵抗を感じるようになってしまって、そんな我が身の不甲斐なさを反省

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第4回 日々」
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    yauaa 2018/06/20
  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第2回 生活の柄」

    「ガサキングだよー、ガサキングだよー」と言って、両手をひろげて爪を立てるように指を曲げ、すべり台の上から先日見たばかりの怪獣の真似をする。滑走面の下でしゃがみ込んで大げさにおびえると、子供が上からすべってきて体ごとぶつかり、わたしが地面に倒されるまでがひと続きの流れとなって、それが何度も何度も繰り返される。 ガサキング(正式名:ガサキングα)とは尼崎の三和市場で、シャッターを降ろす店が増えた市場に気合いを入れるために(?)地底深くから目覚めた怪獣だ。以前から一度実物を見てみたいと願っていたところ、先日「ガサキング市場」というイベントがあってご人(ご獣)が来られるというではないか。せっかくだからと子供も連れていったら、初めて見るナマの怪獣は相当な衝撃を与えたのか、私以上にとりこになってしまった。 現場ではおびえた様子でずっと怪獣から目を背けていたものの、それでも帰り道では肩車する私の首の

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第2回 生活の柄」
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    yauaa 2018/05/16