一九四五年三月十日未明、墨田、江東区を中心に東京の下町で十万人以上が犠牲となった東京大空襲から七十六年。今も、被害の詳細は分かっていない。複数の「被災地図」を見比べ、実態に近づこうとする若き学芸員、惨状を目の当たりにした体験者、家族四人を失った戦災孤児−。あの日の記録と記憶に迫った。 地域のどこまで焼失し、どこが焼け残ったのかを示したのが「被災地図」。戦後に複数発行されたが、大なり小なり「ズレ」がある。すみだ郷土文化資料館(墨田区)の石橋星志(せいし)学芸員(38)は、どれが正確なのかを検証し、独自の地図も作成した。