平成27年2月22日、東京拘置所の中で60回目の誕生日を迎えた男がいた。 男の名は武内幹夫。武内は同年1月6日にJR上野駅構内で、釣り銭を盗む目的で乗車券券売機の釣り銭口に筒状にした粘着テープを貼った容疑で逮捕された。 これはいわゆる「ガムつけ」という行為で、武内は常習犯として以前からマークされていた。 この時は現場を目撃していた警察官が武内を現行犯逮捕したため被害金額は0円。武内は「窃盗未遂」の罪名で起訴され、初公判が開かれる3月19日まで東京拘置所に収監されていた。事件当時、武内はホームレスで所持していた現金は49円。これが全財産だった。 婚姻歴はなく、生活の援助を頼めるような親族や知人は一人もいない。裁判の中で武内はこう話していた。 「釈放されても行く場所なんてない...」 武内は中学校を卒業してすぐに土木関係の企業に就職し、何度か会社を移ったものの土木業一筋で40年以上働いてきた。
![「生きることなんてどうでもいい、ただただエコーが吸いたかった」還暦目前にホームレスになった男:特集](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/5b301c0e61839cf1ad0fdd954681a381e1b91021/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Ftablo.jp%2Fstreet%2Fimg%2Fsaibansho.jpg)