穴の町 作者: ショーン・プレスコット,北田絵里子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『穴の町』はオーストラリアの作家ショーン・プレスコットの長篇小説のデビュー作である。「世界文学」としか言いようがない本作なのだが、僕はそうした前情報を一切知らずに「なんとなくおもしろそうだな」ぐらいで買って読み始めた。 そしたらどうだ! あまりにも巧みな筆致──カフカやら村上春樹やらいろいろな作家の要素を思い起こさせるのだが、同時にその組み合わせや全体のトーン、突拍子もない話の展開、会話のリズムなどは完全にオリジナルな自分の言葉であり、まずその語り口にぞっこん惚れ込んでしまった。不条理小説であり、あるいは終末SF的であり、ファンタジィというか幻想小説的であり、理屈が通ったと思ったら通らず、異常に人々が気づいたと思ったら気づいてくれず、と