むかし「言論は日本を動かす」という書籍のシリーズがあったが、最近は、権力者が言論を無視することを覚え、無視しても平気であることを知ってしまったので、動かさない。町村合併による新地名の創出など、言論人のほとんどすべてが批判していたのに、蛙の面に水である。 先日、いま書いている15,6世紀イングランドに関する本のために、地図を作ってくれと編集者に頼んだら、参考文献を教えてくださいと言ってきたから、イングランドの地図くらいすぐ見つかるでしょう、と叱言を言った。すると、「ああ、昔の地図なので」と言われて、ああ、と思ったのだが、確かに日本で15、6世紀の地図を作ろうと思ったら、今の地図ではまるで役に立たない。国名と県名は全然違うし、東京はおろか江戸さえ江戸城がかろうじてできた頃だし、大阪も名古屋も福岡も横浜もない。中世から変わっていないのは、鎌倉くらいか。それに対して、ロンドンやパリ、ローマはその当