New Eng J Med誌最新号に,臨床倫理のオーソリティBernard Lo教授(UCSF)が重要な標題の課題について解説しています.私もLo教授の教科書で臨床倫理を勉強しました(当科では患者さんの自己決定能力の判定もこの教科書の基準により決めています). 解説の前半では治療の自己決定をめぐる考え方の変遷について紹介しています.重要な出来事は,延命治療の中止をめぐる「ナンシー・クルーザン事件」判決(1990)で,これを契機に代理意思決定のための厳格な要件が定められました.これは自動車事故後,植物状態になったナンシー・クルーザン(Nancy Cruzan 当時25歳)をめぐる事件で,両親は娘が植物状態で延命されることを望んでいなかったため,胃ろうによる治療を止めるよう裁判所に訴えたものの,患者による明確かつ説得力のある証拠がある場合に限り,家族が患者のために決定できるという判断が下された