研究者の実績評価がどのように行われるかは,研究者個人はもちろん,大学や研究所など研究機関の日々の活動の方向性を左右する重要な要因である。研究ポジションの数に比して研究者人口が過剰であることや,競争的資金の研究予算における比重が増す中,客観的な評価指標の重要性が認識されつつある。近年,諸外国では,研究者個人の論文の総引用数,各年の総引用数,h-indexなどのさまざまな研究実績に関する数値的指標(メトリクス)が考案され,研究者の採用・昇任などの人事や,研究提案審査時に参考資料として活用されている。しかし,わが国においてはこのような取り組みが十分に進んでいるとは言いがたい状況である。本稿では,科学技術研究において客観的評価指標が求められる背景と各種メトリクスの紹介を行う。さらにメトリクスを普及させるための方策,活用上の留意点,その波及効果について,一研究者としての視点から議論し提言を行う。