9月某日 東京 世の中には、日常生活では人の意識に触れ難い、だけどももの凄く重要で大切な役割をつかさどった仕事というのがいくつかあると思うのですが、映画などの『吹替え』というのもその中のひとつではないかと思っています。眩しい脚光を正面から浴びるスクリーンと、その中で動くインパクトのある俳優たち。映画というのはやはり大画面の中で展開されている映像に気持ちの大半を奪われてしまいますから、彼らのセリフを耳にするたびにいちいち〝実際はどんな調子で喋っていたんだろう〟とか、〝今のところは原語ではどうだったのだろう〟なんて事に意を介する人は、多分そんなに多くはないと思います。ただ、私のように日本語だけではない言語も使う人間には、なかなかそれは気になる事でもあるのです。 連載漫画『プリニウス』合作の相棒であるとり・みき氏は吹替えに詳しく、それに関する本も出版されていらっしゃいます。今回、彼のお誘いで『し