2015年8月30日、ある全国紙に「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査」という記事が出ました。生まれて初めての冬を迎える乳児がいる世帯や、高校受験を控えた中学生がいる世帯は、これを読んで「それならインフルエンザの予防接種はしなくていいや」と思ったかもしれません。 そこで、報道の元になった調査結果をまとめた論文(著者は慶應大学医学部の新庄正宜氏ら、PLOS ONE誌電子版2015年8月28日付掲載)を読んでみました。すると、正確には、この調査においては様々な要因がかかわっているために、生後6カ月~1歳未満の乳児と13~15歳の小児に対するワクチンの効果は「ない」とは言い切れず、「明確に示されなかった」というのが正しい解釈といえるのではないかと考えました。以下、少し長くなりますが調査の概要を紹介します。 A型のH3N2に対するワクチンは予想通りに作製できず