少子化対策の議論の中で、日本維新の会と国民民主党が提言したフランスのN分N乗税制は、一見、多子世帯の税負担を軽減するので、少子化を食い止める切り札のように思える。マスコミの報道もそのラインにあるように見える。しかし、冷静にこの税制を分析すると、さまざまな問題が潜んでおり、安易に飛びつく「魔法の薬」ではないことがわかってくる。 N分N乗税制は、世帯単位税制の一つだ。夫婦や子供などの扶養親族の所得を合算して世帯所得を足し上げ、それを家族除数(N)で除して、税率不適用所得(課税最低限)を控除し、残りの金額に税率を適用して税額計算する。その税額に、家族除数Nをかけて、世帯全体で納めるべき税額を算出する。家族除数は除数は、夫や妻は1(つまり夫婦は2)、第2子までの子どもは0.5(つまり夫婦子2人は3)、第3子以降は1(つまり夫婦子3人は4)となっている。 夫婦子2人の世帯を例にとると、夫婦の所得を合