もう十年以上も昔、中学生だった甥っ子が読書感想文の宿題に頭を抱えていた。題材は「走れメロス」。まあ、ありきたりと言えばありきたりではある。 しかし原稿用紙は殆ど進んでいない、一ページ目の半分も。 その理由は彼はこう答えた。 何というか、作者に凄くバカにされている気がしてしまって、作品を真面目に考える事が出来なくなってしまうんだよね。 ストーリー自体はハッピーエンドなんだけど、どことなく非現実的なせいか「お前ら、どうせこんなありきたりなストーリーに感動するんだろ?そら、ちょちょいと書いてやったぞ。感動してみろよ。」と作者が読者を嗤っているような気がしてしまって、何を書けばいいのか分からなくなってしまう。 その後、俺の「その悩みをそのまま感想文に書いたら?」という身も蓋もないアドバイスなどは採用される事なく感想文は仕上げられたようで、彼は今も特に道を外すことなく元気にやっている。