時代の風:ネット時代の危機管理=東京大教授・坂村健 ◇自己に厳しい姿勢、必要 「信用が命」という業界の不祥事が最近、本当に多いような気がする。昔はモラルが高かったから不祥事自体が少なかった――と考えるよりはむしろ情報通信技術が社会の風通しを良くしたため、問題が表に出やすく、かつ広がりやすく、記憶に残りやすくなったと考えた方が自然だろう。人間の本質というのはそうは変わらないが、科学技術は確実に時代を変えるのだ。 船場吉兆の女将(おかみ)が記者会見でのヒソヒソ話がテレビで流れた後、「マイクがあんなに性能がいい物だとは思いませんでした……」と釈明(?)していた。それがある意味象徴的な出来事だ。 昔なら耳にとまらず消えてしまっただろう情報を科学技術がピックアップし、それがテレビで全国に流れる。テレビが超えたのは空間の壁だけだが、今のインターネットは時間の壁を超え、不特定多数への情報流布を可能にした