2011/3/1610:53 リスク認知のゆがみ方 筒井淳也 福島第一原発は、記事執筆の現時点でも予断を許さない状態である。このような段階で人々のリスク認知のバイアスについて記事を書くと事後的には不適切になる可能性もあるが、それでも、救済を必要としている人々の状態が深刻である地震後5日の段階で、報道・一般の人々の会話は、あまりに原発事故に偏っていた。 ◇心の「重み付け」によってゆがむリスク評価◇ リスク認知のバイアスは、簡潔に言えばリスクについての「心理的重み付け」によって生じる。 有名なのは行動経済学の知見で、それは「人間はリスクについて、利得についてはリスク回避的(貰えるものは利得が少なくても確実にもらう)であり、損失についてはリスク追及的(損失額が大きくとも確率が低ければリスクをとる)」といったものである。 他方で、原発リスクといった事象については、心理学のリスク論の方がよく当てはま