サリンジャー―生涯91年の真実 [著]ケネス・スラウェンスキー J・D・サリンジャー。『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、ご存知(ぞんじ)『ライ麦畑でつかまえて』で全世界の反抗する若者たちに影響を与え続けてきた作家。斬新な口語体などを駆使し、ウィットと翳(かげ)りに彩られた作品を生んだ人。 3年前、91歳で亡くなったサリンジャーはしかし、「禁欲的な隠遁(いんとん)者」としても神話化され、事実30代半ばにニューヨークからコーニッシュという田園地帯に越すと、人目を避けるように暮(くら)し、本に自分の写真が載ることも大げさな売り文句も嫌った。 そしてついに40代後半からは著作を発表しなくなる。しかし、それでもサリンジャーが「老齢になるまで変わらない日課」として仕事場で毎日書いていた様子を本書は明かしている。沈黙の大作家は日々朝早く起き、ベンガルの聖者ラーマクリシュナの教え通り瞑想(めいそう)とヨガ