著者: 伊佐知美 高校生のころ、私たちはいつだって「俺はまだ本気出してない」みたいな気持ちだった気がする。だってまだ、10代だった。何者でもなかったし、これから何者にだってなれる可能性を持っていた。 私が住んでいた街は、田舎だったからなおさらだと思う。新潟県長岡市。 隣接する他の県、富山県や長野県、福島県や山形県とか。 みんな、北陸や甲信越、東北に入れてもらえるのに、新潟だけはいつも「仲間はずれ」。天気予報のエリアは、チャンネルによってまちまちだ。甲信越だったり、関東だったり、東北だったりする。 「中途半端な場所だ」と思っていた。 新潟が中途半端な場所だから、私も中途半端なままなんじゃないかって思うくらい。とにかく私がイケてないのは、田舎に住んでいるからだと思っていた。 「都会で暮らせば」 「東京に行きさえすれば」 自分の可能性を信じたかった、恥ずかしいくらい青い高校生のころの、思い出。